重量や寸法など、一定の基準を超える車両が道路を通行するには、「特殊車両通行許可申請」(特車申請)が必要だ。2022年4月1日から、従来の特車申請に加えて、「限度超過車両の新たな通行確認制度」がスタートする。
新制度ではオンラインで経路の確認を行ない、通知を受けた道路は通行可能となる。結果は電子データで即時通知され、従来のような申請手続きや紙の許可証は不要だ。
大型トレーラなど許可が必要な車両を運行するにはメリットが大きい新制度だが、従来の特車申請が必要なケースもある。トラックマガジン「フルロード」第44号より、新たな通行確認制度について解説する
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部、図表/一般財団法人 道路新産業開発機構 特車登録センター
「早い・簡単・便利」な新制度
車両制限令等の法令により道路を通行する車両には「全長12m」「総重量20t」など、寸法・重量の限度が設けられている。これを超える車両を通行させるには特殊車両通行許可申請(特車申請)が必要だ。
日本で大型トレーラを運行する場合は「特例5車種」や「追加3車種」などの一部例外はあるが、基本的に許可が必要となる。
従来の特車申請は手続きが煩雑で許可が下りるまで約1か月かかるなど、事業者と道路管理者双方の負担になっていた。そこで2020年に道路法が改正され、2022年4月1日から新制度が開始する。
新たにスタートする限度超過車両(従来の「特殊な車両」)の通行確認制度では、事業者は車両に関する情報やETC2.0搭載、車両重量の把握方法など、事前に車両の登録をオンラインで行なう(1回のみ)。
走行時は、経路の検索(確認の求め)をオンラインで行なうことで通行可能な道路が即時通知される仕組み。従来のように1経路のみではなく、回答を受けた経路はすべて通行可能となる。
車両の登録料、および更新料は1件当たり5000円で5年間有効。連結車の場合トラクタ単位で、トレーラの登録手数料は不要。手数料の支払い(キャッシュレス決済)、車両情報の変更、廃止手続きもオンラインで行なうことができる。
経路確認の方法
経路の確認には2つの方法があり、「2地点双方向2経路検索」は出発地と目的地までの主経路と代替経路(あれば)の2ルートと、その2ルートをつなぐ渡り線について双方向の経路を確認する。手数料は確認1件につき600円だ。
「都道府県検索」は都道府県単位で重要物流道路・大型車誘導区間全線を確認するもので、通過する際に必要な都道府県を選択する。利用料は1都道府県あたり200円~400円(確認する都道府県数によって異なる)。
一度確認した経路に新しい目的地を追加する場合など、経路を追加することも可能だ。延長10kmまでは1件につき100円、延長が10kmを超える場合は、10kmごとに 100円となる。いずれの場合も、確認した経路は1年間有効。ちなみに従来の特車申請の手数料は1経路(片道)当たり200円だ。
また、確認した経路については電子データで「回答書」が発行される。走行時は印刷した回答書またはスマートフォンやタブレットなどで電子データを携行することになる。電子データならスマホなどでいつでも経路や通行条件を確認することができるので便利だ。
従来の特車申請が必要なケースも
新制度の「手続き不要」「即時」というのは、ドライバーや運送事業者にとっても大きなメリットとなりそうだが、新制度で確認した経路以外の道路を通行する場合などは、従来の特殊車両通行許可制度で手続きを行なう必要がある。
また、システムで経路を判断しているので、道路がデータベース(道路情報便覧)に収録されている必要がある。収録率は高速道路、国道、主要地方道では100%としているが、一般都道府県道は6割強、市町村道では4割以下と見られる。
走行したい経路に未収録道路がある場合も新制度による自動算定は困難で、従来の特車申請を行なうことになる。
従って当面は、「コスト」「審査時間」「手続きの煩雑さ」「未収録道路」「電子データ化」などの要素から、新・旧どちらの制度のメリットが大きいかを総合的に判断することになりそうだ。
なお、国土交通省では、実際の運用開始を前に2月7日から機能を制限したシステムの試行を行なっているが、試行期間中に登録した車両情報は運用開始時に引き継がれる予定。試行期間中の手数料は運用開始後に支払う。
投稿 審査不要・即時許可・電子化! 2022年4月から「限度超過車両」の通行に関する新制度がスタート は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。