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 2022年F1第1戦バーレーンGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った点などについて解説する。今回は、優勝候補筆頭と考えられながら全滅したレッドブルRB18のトラブルについて考察する。

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2022年F1第1戦バーレーンGP レッドブルRB18
2022年F1第1戦バーレーンGP レッドブルRB18

■E10燃料への移行がトラブルに関係か

 冬のテストで最速タイムを記録したレッドブルは、開幕戦の優勝候補筆頭と考えられていた。しかしレース前に示唆されたように、レッドブルマシンの信頼性は完璧でないことが、決勝レースで証明されてしまった。

 端的に言えば、昨年最終戦まで総動員体制でタイトルを追ったレッドブルのタイトすぎるスケジュールが、今回の全滅の伏線なのは間違いないだろう。

 バーレーンGP決勝終盤、立て続けにマックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスのマシンがトラブルに見舞われた。燃料ポンプにキャビテーションが起きたものと考えられている。

 この現象は、タンク内の燃料が最後の一滴まで送り出された際に発生する。燃料が残り少なくなると、隔壁があるにもかかわらず、タンク内はぐらぐらと揺れ動く(これを専門用語で「燃料スロッシュ」と呼ぶ)。

2022年F1第1戦バーレーンGP レッドブルRB18
2022年F1第1戦バーレーンGP レッドブルRB18

 その結果、燃料の温度は徐々に上がっていき、ある時点で気化し始める。するとポンプ内にベーパーロックが発生し、短時間に空気を吸い込む。システムの加圧・減圧に伴う負荷の急激な変化やポンプ内部の余分な熱が、やがてポンプを破損させる。

 レッドブルはなぜ、これを予想できなかったのだろう。今年から導入されたE10燃料(植物由来のエタノールを10%含むバイオ燃料)は、従来の純化石燃料よりも高温で作動するため、キャビテーションが起こりやすくなっている。大部分のチームは冬のテスト中にレースシミュレーションを行い、空タンクに近い状態でも走行確認した結果、この現象は広く認識された。

 しかしレッドブルは、そうではなかった。例年どおりエイドリアン・ニューウェイが設計時間をぎりぎりまで延ばしたために、テストプログラムは可能な限りタイトに組まれていたからだ。それでも開幕戦の予選終了後にプライマリーポンプを交換したことから、チームは異変をある程度察知していたのだろう。

 プライマリーポンプとは燃料を加圧し、実際の燃料ポンプに供給する2番目のポンプで、今シーズンから標準パーツとして各チームに供給されている。

 現時点では、このポンプに問題があったのか、レッドブル社製マニホールドなど近隣の部品に問題があったのかは不明だ(ちなみに2014年のオーストラリアGPで、レッドブルには流量計に問題が発生している)。

 FIAは予選終了後、マニエティマレリ製の全車のプライマリーポンプの状態を点検し、正常に作動することを確認した。いずれにせよフェルスタッペンとペレスが、セーフティカーが導入され、システム冷却が不十分な期間を経た直後にリタイアしたことは、E10ガソリンの高い作動温度とトラブルが関係していることを示唆している。

■ブレーキとステアリングにも不具合

2022年F1第1戦バーレーンGP レッドブルRB18
2022年F1第1戦バーレーンGP レッドブルRB18

 レッドブルの想定外だったもうひとつの問題が、ブレーキディスクの冷却だった。
 バーレーンはブレーキ冷却の点で、特にターン1、4、8、10が非常に厳しい。制動性能の劣化を防ぐためには、ディスクの温度を厳密に管理する必要がある。46kg重くなった2022年型シャシーでは、より多くの制動力が要求される。ディスクが冷えすぎないよう、ホイールカバーも装備されている。

 レース序盤の3周目以降、エンジニアはフェルスタッペンにブレーキの扱いについて指示を出し続けた。しかしシャルル・ルクレールの背後についていったことでブレーキ温度が上がり、問題を大きくしてしまった。

 フェルスタッペンは終盤には、ステアリングのトラブルに見舞われた。こちらは最後のピットストップの際、ロッドの1本が破損したようだ。つまり前日のFP3で角田裕毅が見舞われたような、油圧の問題ではない。