アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラワン・チームは、2021年型マシン『AMR21』の研究開発用シャシーをベースにした、最先端のシミュレーターをセバスチャン・ベッテルの自宅に納品した。
F1のような世界規模の選手権では、ロジスティクスや時間の制約のためにシミュレーターの時間を確保することが難しい。しかし、ホームシミュレーターの導入によって、ベッテルはグランプリの週末を前に“ゾーン”に入れるようになる。
2021年に初開催されたサウジアラビアGPはチームやドライバーたちにとって新たなチャレンジだったが、ベッテルはレース前にシミュレーターでの作業を完了させることができなかった。新しいシミュレーターを使用すれば、今後登場する新たなサーキットに慣れる機会を得ることもできる。
チームとベッテルは、2021年シーズンの終盤に向けてシミュレーターの開発を始めることを決め、その構成は3つのスクリーンとAMR21の実車パーツを含むものへと発展した。
このデザインによって、ベッテルはステアリングの裏にある『ハニーライダー(ベッテルがAMR21につけた愛称)』のデカールから、AMR21のウイングミラーとヘッドレストに至るまで、運転席からリアルなドライバービューを得ることができるようになった。
また、このシミュレーターには2021年シーズンで使用したベッテルのレース用シートやヘッドレスト、シートベルトも装備されている。
さらに、チームの専門知識はコックピットだけにとどまらず、シミュレーターが設置される金属のフレームワークの製作や、2画面では限界があることが発覚してからは、3画面構成の実装にも活かされた。
シニア・ガレージ・エクイップメント・デザイナーのマット・トマリン監修のもと、プロジェクトに関する議論と研究は2021年の4月に始まった。そして続く2カ月間は、CADツールを用いてデザインを磨き上げることに費やされた。
7月には組み立てが始まり、8月にはドライバーからのフィードバックと不具合のチェックが行われ、そして9月にはベッテルの自宅に届けられる準備が整った。
シミュレーターの設計、製造のリーディングカンパニーであるプロシム社もステアリングのフィードバックシステムの提供や、F1マシンのセットアップを模倣したブレーキシステムのキャリブレーションにおいてチームをサポートした。
このようなアストンマーティンF1とプロシム社の協力によりユニークなシミュレーターが誕生した。どのドライバーも自らのシミュレーターを使うことはできるが、ベッテルのものはドライバーのコックピットでの体験を再現するという、史上初の試みを行った。
これは、4度のワールドチャンピオンであるベッテルが、2022年の各グランプリの準備として自身のシミュレーターでのセッションを組み込めるようになることを意味するとともに、自らのパフォーマンスを最大限に引き出そうという彼の決意も示している。