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電力供給に不安の払しょくは必至!! 自動車メーカーだけでは解決できない電気自動車普及への道程

 2021年12月に行われた日本自動車工業会のオンライン懇談会で、豊田章男会長は「国内の乗用車がすべてEV化したら、夏の電力使用のピーク時に電力不足になる。解消には発電能力を10~15%増強しないといけない」と語った。

 この10~15%というのは、現在と比較して原子力発電で10基、火力発電なら20基に相当する発電能力となる。

 火力発電の割合が約7割と多い日本でこのままEVが増えることは、結果的にクリーンではないという根本的な問題が発生する可能性がある。では、発電時にはCO2を排出しない原子力発電の稼働を増やそうとすれば、使用済み核燃料の処理や、そもそもの安全性を問題視する反対の声が一部国民から上がる状態だ。

 さて、政府がこの問題に対してしっかりした考えてを持っているのかと言えば、発電や送電、クルマ側の対策まで対象企業に丸投げ……といったように見えてしまう。

 これで2035年からの電動化に間に合うのだろうか? たとえ自動車メーカーが奮闘し電動車を発売しても、インフラが整っていない状況では正常な状態とは言えないだろう。

 今回は日本の発電事情の問題点、トヨタなどメーカー頼りで足りない急速充電器の設置を加速させる方策、EVの普及の課題となる問題について、国沢光宏氏が斬っていく。

文/国沢光宏
写真/NISSAN、MITSUBISHI、HONDA、MAZDA、SUBARU、TOYOTA、Tesla、BMW、メルセデスベンツ、ボルボ、AdobeStock(トップ画像=chartphoto@AdobeStock)

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■EV増加は厳しい日本の電力事情 いかに電動化時代に対応すべきなのか?

公約の達成はいまや難しい状況になってきている(Fokussiert@AdobeStock)

 今や2050年のカーボンニュートラルはもちろん「2030年の二酸化炭素排出量を2013年比46%減」という公約すら非常に厳しい状況になっている。2030年まで7年9カ月しかないですから。

 自動車についていえば、走っているすべてのクルマの燃費を半分にする、ということ。トラックやバス含め新車全部ハイブリッドにした上、電気自動車を20%くらいにしないと達成出来ない数字だ。

 それ以上に厳しいのはエネルギー源となる電力事情。日本の電力を見ると、2020年時点で73.3%が天然ガス、石炭、石油という二酸化炭素を出すエネルギー源となっている。

 大雑把に言えば、これを半分にしなければならない。政府は原子力を今の6%から3倍以上の22%に増やし、主力電源化しようとしているらしい。そんなことできるかと言えば、非常に難しいと思う。

 そもそも原発はアメリカの強い意思で始まった「国を挙げてのエネルギー戦略」である。原発のための何でもやった。お金だって際限なく投じてます。

 しかし2011年の東日本大地震で起きた福島第一の事故を受け、アメリカは日本の原発を諦めたと言われている。実際、2011年以前のような「原発絶対推進!」という動きはなくなったように思う。既存の原発の再稼働すら厳しい状況。

 日本の電力の22%をカバーしようとしたら、休止している原発すべてを稼働させないと間に合わない。さまざまな取材ルートから得た私の感覚だと、現在の6%を維持することすら難しいと思う。

公約に間に合うように増やせる電力といったら太陽光や風力などに限られてくる(sakura@AdobeStock)

 となると、8年以内で増やせるとすれば太陽光と風力くらい(水力はダム作りに15年以上かかる。地熱も場所の選定から始めたら10年以上必要)。この2つなら頑張れば可能性ゼロじゃないと考えます。

 東京電力管内で言うと、10年前までゼロに近かった太陽光発電ながら、今や天気さえよければ昼間のピーク時に30%ほどの電力を賄っている。今の3~4倍に増やすことで、理論上、昼間は100%太陽光発電から電力を供給できる計算。

 ただ太陽光発電の場合、お日様が出ている間しか発電できず、昼間であっても天気悪かったりすると発電量は激減してしまう。安定した電力と言えない。

 それを補完するのが風力や水力だ。風力は日夜問わず風さえあればOK。また水力も太陽光発電が足りていれば発電を止められる。

 もし太陽光や風力で作った電力に余裕があれば、下のダムから上のダムに水をポンプアップしておく「揚水発電」も使えます。将来的には世界3位のポテンシャルを持つ地熱発電も常時電力を安定供給するベース電源として有望(2030年には間に合わない)。

■550万人の雇用を守るためには早急な対応策を打つ必要があり!

豊田章男自工会会長の言葉とおり、550万人の雇用を守るためには一刻も早く対策を打ち出す必要がある(dizfoto1973@AdobeStock)

 太陽光や風力発電を有効活用するために大切なのが、余った電力を貯める方法だ。電力は発電した分だけ使う必要がある。単純に考えたら「余った電力をバッテリーに貯める」なのだけれど、コスト的に厳しい。

 一番効率的と思われるのは電気分解して水素を作り貯めること。水素なら大量に貯められるし、パイプラインで日本中に送ることだって簡単にできてしまう。

 貯めた水素は火力発電所で燃やせば二酸化炭素を出さないクリーン燃料になる。自動車やトラックを燃料電池や水素エンジンで走らせることだってできる。

 トヨタなどはそういった方向性を打ち出して積極的にアピールしているが、国を見ると動きは鈍い。そもそも太陽光発電を現在の3倍にしようとしたら、すでに今から太陽光発電パネルをフル生産しなければならない。

 なのに! 間もなく決まる2022年度の予算を見ても抜本的なエネルギー戦略の変更はなし。本来なら1戸建ての屋根すべてに太陽光発電パネルを設置するような対応策を打たなければならないタイミングです。

 電気自動車に対する補助金こそ増やしていたが、欧州のような街中にある200V普通充電器の補助金などはなし。羽田空港みたいな場所の充電器拡充策だって含まれていない。

 我が国を見ていると新型コロナだけに振り回されてしまっており、それ以外の展望がない。さらにロシアのウクライナ侵攻などが現実となったことで原油や天然ガス相場が上がり、またしても大慌てになりそう。

 早めにエネルギー戦略を決めていたら、太陽光発電や風力発電は自給自足です。水素だって日本で作れる。隔靴掻痒(かっかそうよう)の思いながら、国会議員を選んでいるのは国民だから仕方ない。

 とはいえ国境炭素税(二酸化炭素出して作った製品は輸入に関して割り増し税金をかける流れ)など決まったら、日本の工場で作ったクルマを輸出できなくなってしまう。となれば海外で生産するしかなく、日本の雇用に大きな問題が出てくる。

 豊田章男自工会会長は「550万人の雇用を守りたい」と言っているが、このままだと国際優良企業も海外に逃げ出すことになりかねないです。

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