重量や寸法などが規定値を超える車両を運行する場合に必要な「特殊車両通行許可申請」(特車申請)の新制度である「限度超過車両の新たな通行確認制度」が4月1日にスタートする。
審査不要で即時通知、電子化など、従来制度の欠点を補った新制度の詳細についてはすでに別項でご紹介しているが、実際にこれを使うことになる現場の状況はどうなのか?
港湾から荷物を陸送するドレージ作業に携わっており、膨大な量の(紙の)許可証の扱いに困っているというトレーラドライバーのヒデさんに聞いてみました。
文・写真/ヒデさん(ドレージドライバー)
電子化は運転手としてはありがたい
特車申請の新制度についてですが、トラックマガジン「フルロード」の記事を見て電子化について会社に問い合せたところ、社内では電子化を知らなかったようです。
弊社の場合、この特車申請に対する意識に関してはかなりホワイトで、アレコレ問題になる前から分厚い許可証を取得しておりました。
申請をする際は行政書士に一任していたとのことで、発行まで時間が掛かるのがやはりかねてからの問題でした。申請には相応の知識と時間を要するので、中小運送会社にとってはかなりの負担であることは紛れもない事実です。
それと過去の許可証では、経路の算出においてプロの行政書士さんでさえ経路不備で何度か弾かれるなど発行までにかなりの時間を要しておりました(お金を徴収できるから許可証経路はとてもシビアらしいですw)。
有効期限切れに気づくのが遅れ、再発行までの間会社からは「取り締まりに気をつけて走ってくれ」なんてこともしばしばありました。
なので、この電子化、即時発行やデータ化というのは本当にありがたいと思います。電子化で申請が簡略化できれば敷居も低くなるでしょうから、未取得の会社もかなり前向きになるのではないでしょうか。
運転手目線からですと、データ化されることによって「分厚い許可証を持ち歩かなくて良い!」というのが一番大きいです。週刊漫画雑誌2冊分はありますので邪魔で邪魔で……。
それと万が一高速料金所等での抜き打ちチェックに遭遇した場合、データであれば検索することも容易にできるでしょうし……。
ほとんどの運転手が意識していないように思うのですが、特車通行許可証というのはただ携行していれば良いわけではなく、取り締まりに遭遇した場合、原則としてすぐに提示できるようにしておかなければなりません。
ちゃんと許可を取得している場合でもヘッド・台車の車番、経路地図をすぐ提示できなければアウトになります。
私のようなドレージ業で、固定台車ではなく常に取っ替え引っ替えして走っている者にとっては、ここがホントに大変でした(捕まったことはありませんが……)。なんせ許可証に記載されている台車の本数が1000本以上ありますから。
運送会社の意識も変わってきた
ここ最近、この通行許可証の重要性についてどの運送会社もかなり意識していると感じます。運送会社というか、運転手自身が意識している、といったほうが正しいかもしれません。
規制緩和で増トン台車が増えてきて、22t、24t、26tの積載が可能な台車が増えてきましたが、特車申請をして許可証を取得しないと本当は高速を走れません。
しかし高速を走れば当たり前のようにその最大積載量ステッカーを貼ったトレーラが走っています。この手の台車は、もちろんGCW(連結車両総重量)オーバーで取締対象となります。
正直4~5年前は許可証を取得しない運送会社はザラにおりました。運転手なら名前を聞けば誰でも知ってるような全国規模の大運送会社でさえも、です。
こういったグレーな運送会社の取り締まり対処法というのは、ご存知かもしれませんが、SNSや取り締まり情報の共有サイトで情報交換して、うまく交わしておりました。
しかし「2020東京オリンピック」の開催が決まってから取り締まりが従来より厳しくなり、高速はもとより一般道での白バイ取締も激化しまして、グレーな運送会社の意識も大分変わったように思います。
実際に罰則を喰らった運送会社さんはETCコーポレートカードを没収されて大口割引が無くなり、かなり大変だったと言っておりました。
会社が取得してくれない、費用や手間が掛かって取得できないといった理由でも、会社が処罰対象となってしまったら、結局のところ、ドライバー自身の給料に響くわけですし、最悪の場合免許に傷が付くことにもなります。
ちなみに弊社では荷主さんの許可証に対する理解も深まってくれているので、申請費や手間の負担軽減のため、新規仕事に関しての特車申請は原則荷主さんがやってくれております。
投稿 現場は概ね歓迎! 2022年4月1日からスタートする新制度【限度超過車両の新たな通行確認制度】 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。