世の中には「地味だけど知っておくと便利」というものがたくさんあります。今回のタイヤの表記もその1つ。
数字とアルファベットの羅列からなるタイヤサイズの表記は、暗号めいた謎を解くと、そこには意外なくらい多くの情報が……。
タイヤのことならこの人に聞け! 現役タイヤマンのハマダユキオさんに解説してもらいました。
文・写真/フルロード編集部・ハマダユキオ
まずはタイヤの断面幅の数字から
タイヤの横にはさくざまな文字がありますね。メーカー名、商品名、そしてタイヤサイズ。その中でタイヤサイズの表記すべて分かります? タイヤに関わらない方からすれば、何の数字のことやらチンプンカンプンで……ってなるような表記です。
でも、タイヤを注文したり、パンク修理やパンク修理不可で新品への交換、作業依頼や見積もり等で、タイヤサイズが必要なことが多いため、タイヤサイズの表記の意味を知っていれば結構便利なんです。
タイヤサイズはトラックタイヤ、乗用車タイヤその他でほぼ共通(ISO表示)の表記方法でタイヤには必ず表示されています。
例えば、「245/70R19.5 136/134J」
このタイヤですと、まず「245」。これはタイヤの断面幅、つまりタイヤの幅です。地面と接する部分、トレッド幅ではなくタイヤの横から横の幅です(。
同じタイヤメーカーでもトレッドパターンが違う場合、見た目に細く見えたり逆に太く見えたりする場合があります。これはトレッドの幅が違うからなんですね。トレッド幅の違う設定があるのは設計時のコンセプトの違いから来るものと考えられます。単位はミリメートルです。
スラッシュの後は偏平率と構造区分
スラッシュの後の「70」これは偏平率です。率なんで単位はパーセント。
この数字はタイヤの高さを表す数字と思ってもらえればよろしいかと思います。何の70%なのかと言いますとタイヤの幅に対する高さの比率です。このサイズならば245mmの70%なので、171.5mmの高さですよ、という意味。
高さが分かると外径が出ます。タイヤサイズを変更する場合など、速度や距離メーターの誤差があまり出ないよう外径の近いサイズを選びます(外径の他に荷重指数も大事です)。
外径はタイヤの高さ×2+リム径(インチからミリへ変換)。上記サイズですと245mmの70%で高さが171.5mm、それが上下なので343mm。プラス19.5インチホイールなのでミリへ変換で495.3mm。合計で838.3mmです。
ただ、この外径は某メーカーのスタッドレスは853mm、同一メーカーでも夏タイヤの新車装着パターンですと833mmといったように、溝の深さもあるのでしょうが、このくらい差はあります。
次の「R」は構造区分でRはRADIAL、ラジアル構造ですよ、という表記です。
一部を除くほとんどのトラックタイヤ、乗用車タイヤはラジアル構造です。ラジアルに対する別の構造はバイアス構造で表記は「-」です。主にフォークリフトのような特殊車両や二輪車のタイヤに使用され表記してあります。
次の数字はリム径
その次の「19.5」これはリム径、単位はインチ。
リムはホイールに嵌まる部分で基本的には1インチ単位でサイズは変わります。ですが、トラックタイヤの場合、上記の「19.5」や「17.5」「22.5」のように0.5インチ刻みですね。これは誤組防止の意味もあるのではないかと思います。
現在はチューブレスタイヤが主流ですが、20数年前はまだチューブタイプが多くありました。
たとえば大型なら10.00R20(10.00-20)、4tクラスなら750R16(750-16)で、これのチューブレスタイプになると11R22.5、225/80R17.5になるワケですが、これが20インチ統一ならどうでしょう?
恐らく誤ってチューブレスホイールにチューブタイプのタイヤを組む可能性が高くなりますよね。そうなるとチューブタイプのタイヤはチューブありきの構造のため、エア充填してもタイヤ自体にシール性が無いのでエア漏れは止まりません。
サイズ表記の最後は荷重指数と速度記号
そしてサイズ表記の最後の数字「136/134J」。
まずスラッシュの前後にある数字の意味ですが荷重指数という数字です。
荷重指数とは規定(指定)空気圧充填時にタイヤが耐えられる荷重の指数ですね。指数ですからそのまま荷重の大きさではなく、タイヤメーカーのカタログの保有サイズ一覧表などから調べることができます。
たとえば上記サイズではスラッシュ前の136は空気圧850kPaで2240kgと出てきます。スラッシュ後の134は2120kgです。
この荷重指数、なぜ2つあるのか? それはリアの複輪で使用する場合のためです。数値の小さい方が複輪の荷重指数、大きい方が単輪使用時となります。
複輪の方が小さい値なのは、ダブルタイヤの両方に均等に荷重が掛かり続けることは難しいからです。
地球上のどの道を走っても平坦で傾斜がなく、外側に遠心力が掛かるカーブもなく、さらに全世界のメーカーが共通のパターンで、タイヤ交換は必ず全交換となりパンクもしません、というならば単輪の荷重指数だけでもOKなのですが……。
現実的には、複輪のうちどちらかの負荷がが一時的に大きくなるため、余裕を持たせ運行に支障のないよう設計、設定されているんですね。
当然ですが、乗用車用やスーパーシングルタイヤのように単輪のみでの使用するタイヤには荷重指数は一つしか表記がありません。
そして荷重指数の後のJ。これは速度記号といいます。この速度記号は、規定の条件下でそのタイヤが出せる最高速度を表しています。速度記号Jの最高速度は100km/h。
規定の条件での最高速度というのは、車両メーカー等で空気圧が指定圧に調節されている状況下において、そのタイヤの荷重指数の最大負荷能力に対し走行が可能な最高速度のことです。この速度記号も荷重指数と同じくカタログ等に掲載されております。
トラックタイヤですと、このJの他にはL、Nが主に使用されており、Lは120km/h、Nは140km/hです。
ISO表記以外の場合は?
ISO表記以外の表記で例えば11R22.5 14PRというサイズ表記もあります。こちらの11はインチ単位。タイヤ幅が11インチ、ミリ変換すると279.94mmです。
その後のRと22.5の表記はISOと同じ。その後の14PRですが、PRはプライレーティング、通常はプライと略して呼ぶことが多いですね。
プライとは、タイヤを構成する骨のようなモノ(カーカスと言います)を数枚重ねて強度を上げる枚数のことで、レーティングは「相当」という意味合いがあります。
なので上記サイズの14PRですと、カーカスが実際には14枚ではなく14枚相当の強度がありますよ。という意味になります。
いかがでしたか?タイヤのサイズ表記。ミリ、パーセント、インチの単位違い、構造や負荷能力を表す記号と情報盛り沢山ですが、実際の現場ではタイヤの幅、偏平率、リム径が分かればほぼ通用します。
タイヤ交換時はもちろん、レスキュー時にもタイヤサイズは必ずといっていいほど聞かれますので、ご自身の車両のタイヤサイズ、今一度ご確認を!
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