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ロシアによるウクライナ侵攻から1カ月以上が経ったが、国際的な支持のもとでウクライナの善戦が伝えられている。専制主義の大国と隣り合わせにいる台湾の人々は、ウクライナ情勢をどう見ているのか。台湾の大手通信社「中央通訊社」東京支局長の楊明珠氏へのインタビュー、後編は各国の動向を中心に聞く。

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アフガニスタン陥落の際に、ガニ大統領は逃亡してしまったが、ウクライナのゼレンスキー大統領はキエフに残って強いメッセージを発し続けている。強いリーダーがいれば、国難の際でも国民はくじけないという例を示しました。

とはいえ、アメリカはウクライナ侵攻に参戦しないと表明している。

台湾からすると、アメリカが参戦しないのはありがたいことかもしれません。今のアメリカには、2つの戦争を戦うだけの力はない。軍事力をウクライナに集中させてしまっては台湾海峡が手薄になり、台湾有事のリスクが高まってしまう。

それよりも、欧米や世界各国が侵攻反対を明確打ち出していることが重要だという。

直接的な参戦ではなく、資金や武器、情報などさまざまな援助でウクライナは助けられている。NATOに加盟していなくても、米英やドイツが民主主義国家のウクライナを支援していることを、台湾は誰よりもよく見ています。

台湾の政府機関「大陸委員会」が3月24日に発表した世論調査によると、87.4%の回答者が、中国による一国二制度に反対。ウクライナ侵攻に乗じて中国が台湾を牽制する動きについては、90.9%が反対した。ウクライナ侵攻によって、台湾では中国への警戒心が高まっている状態と言える。

アメリカにとって台湾の重要性は、ウクライナ以上のはずです。台湾が中国政府に占領された場合、沖縄やフィリピン、グアムなどの海域と中国が接することになる。台湾は第一列島線と呼ばれる地政学上の要所であり、中国による台湾占領は、アメリカの敗北を意味します

アメリカはこれまで、中国が台湾を侵攻した際に防衛する意思があるかどうかを明言しない「曖昧(あいまい)戦略」を取り続けてきたが、ウクライナ侵攻を機に、変化する可能性もあるという。

これまで通りの曖昧戦略で良いのかどうか、見直す機会になるのではないでしょうか。21年11月には、米国の議員団が軍用機に乗って台湾を訪問しました。こうした出来事も、曖昧戦略の見直しにつながっていくと思います。

ウクライナ侵攻を機に、世界の形は少しずつ変わりつつあるのかもしれない。