ひと昔前は、親しい友人のようにクルマにもあだ名が付けられ、正式な車名を言わなくてもあだ名を言えば通じた時代があった。それらあだ名で呼ばれたクルマの多くは生産終了後も熱心なファンがついていることも多い。しかし近年、あだ名や、愛称が付けられているクルマは激減している。そこで今回は、クルマ好きに愛され、親しみを持ってあだ名で呼ばれたクルマたちを振り返ってみたいと思う。
文/入江 凱、写真/トヨタ、日産、ホンダ、スズキ、Favcars.com
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誰でも知ってたあだ名の宝庫! 日産 スカイライン
スカイラインといえば多くの人に愛された名車であり、それを証明するかのように歴代モデルにも愛称が付けられたものが多い。ここでは、クルマ好きならずとも一度は耳にしたことがあるに違いないあだ名が付けられていたモデルを紹介しよう。
■3代目スカイライン「ハコスカ」
1968年に発売された3代目スカイライン(C10 型)は特徴的な角張ったボディ形状から箱のような形のスカイライン=ハコスカと呼ばれ親しまれた。プリンスと日産が合併後に発売した初のスカイラインでもあり、翌年にはGT-Rという名称の起源であるスポーツグレード2000GT-Rが追加されるなど、日産の歴史の中でも大きな意味を持つモデルだった。
■4代目スカイライン「ケンメリ」
1972年にモデルチェンジした4代目スカイライン(C110 型)のあだ名「ケンメリ」は車両の特徴からではなく、ケンとメリーというカップルがスカイラインで旅をするという内容のCMから生まれたもの。社会現象になるほどの爆発的な大ヒットを記録し、1977年までの約5年間の販売期間における累計販売台数は約66万台にも及んだ。スカイラインの伝統となるリング型の4灯テールランプもケンメリから初採用された。
■5代目スカイライン「ジャパン」
1977年に登場した5代目スカイライン(C210型)のあだ名である「ジャパン」も当時のCMキャッチコピーである「日本の風土が生んだ名車=SLYLINE JAPAN」から生まれた。開発中に排ガス規制が厳しくなった影響で当初はターボ、DOHCの設定がなく、「名ばかりのGT」呼ばわりされることもあった。
しかし、3年後の1980年にはターボエンジン搭載モデルを追加し、高性能スポーツカーとしての立ち位置は譲らなかった。そして、大人気ドラマ「西部警察」の中でスカイライン2000GTターボをベースにした改造車「マシンX」が登場。これで知名度が一気にアップした。
■6代目スカイライン(R30型)「ニューマンスカイライン」
1981年に登場した6代目スカイラインはイメージキャラクターにアメリカの映画俳優ポール・ニューマン氏を採用したことから「ニューマンスカイライン」と呼ばれた。デザイン面では3代目以降に採用されてきたリアフェンダーのサーフィンラインを廃し、同年10月には直列4気筒4バルブDOHC FJ20E型エンジンを搭載した「2000RS」、1983年にはターボチャージャーを装備した歴代最高出力となる190psを誇る「2000ターボRS」が発売され、「史上最強のスカイライン」とも呼ばれた挑戦的なモデルだった。
■6代目スカイライン 後期型RSグレード「鉄仮面」
1983年に「史上最強のスカイライン」とも呼ばれた2000ターボRSが追加されたが、同年の夏に行われたマイナーチェンジによりRS系は薄型ヘッドライトにラジエターグリルレスのデザインとなり、その独特のフロントマスクから「鉄仮面」と呼ばれた。一般的に6代目スカイラインはこのマイナーチェンジを境に前期型/後期型に分類することが多い。翌年にはさらに出力を上げたターボインタークーラーRS(ターボC)が登場し、話題となった。
■7代目スカイライン「7th(セブンス)」「都市工学スカイライン」
7代目を意味する「セブンス」の愛称で呼ばれ1985年に登場したのが7代目スカイライン(R31型)。当時はバブル経済、マークIIなどが人気を博したハイソカーブームのなかということもあり、カードを携帯するだけで施錠、開錠できる世界初の「カードエントリーシステム」といった豪華装備を採用、発売当初は4ドアモデルのみを設定するなど、高級路線を意識したものとなった。
しかし、スカイラインに硬派でスポーティなイメージを求めていた既存のファンには受け入れられず、翌年には2ドアクーペを追加するなどマイナーチェンジを繰り返しつつイメージの回復を図った。
メーカーが公式に愛称を付けていた! ホンダ シビック
初代シビックが発売された1972年以降、一時的に生産終了された時代はあったものの復活を果たし、今なお販売されているシビックには2代目から7代目までメーカーが付けた愛称があった。
■2代目 スーパーシビック
1979年に登場し、シリーズで初めて愛称が付けられたのが2代目の「スーパーシビック」。デザイン的には初代を踏襲しながらサイズアップしたボディや、大型のスピードメーターとタコメーターを同軸に配置した「集中ターゲットメーター」など、各部をブラッシュアップ。「初代を超えるシビック」という意味で付けられた愛称だったと言われている。
■3代目 ワンダーシビック
1983年に発売された3代目「ワンダーシビック」は2代目までのデザインを一新し、角張ったロングルーフデザインの3ドアハッチバックモデルを追加、スポーツグレード「Si」が初めて登場するなど、シビックにスポーティなイメージを定着させることに成功した。
■4代目 グランドシビック
1987年に発売された4代目の「グランドシビック」はロー&ワイドボディ、4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションを全車に採用するなど、3代目で築いたシビックのスポーティなイメージをさらに高めつつ、内外装の装備を充実させ高級感と快適性も高めたモデルだった。
■5代目 スポーツシビック
1991年に発売された5代目「スポーツシビック」はその名の通り、歴代で高めてきたスポーティさを全面に出し、合理的な車内空間やファミリーユースを意識していた当初のコンセプトから明確に若者をターゲットにしたスポーツモデルへと変貌した。愛好家からはその型式から「EGシビック」とも呼ばれている。
■6代目 ミラクルシビック
1995年に登場した6代目「ミラクルシビック」は新開発の高出力型低燃費エンジン「3ステージVTECエンジン」や「ホンダマルチマック」と呼ばれるCVTを採用するなど当時の先進技術を採用、また3ドアモデルにマイナーチェンジでスポーツグレード「タイプR」が採用され、人気を博した。
■7代目 スマートシビック
2000年に発売された「スマートシビック」が愛称で呼ばれた最後のシビックとなる。3代目以降築いてきたスポーティなイメージから大衆車に立ち戻り、大きな室内空間、燃費、安全性能などを高めたコンパクトカーとなった。
人気はイマイチだったが、あだ名は有名
■トヨタ 6代目クラウン「鬼クラ」
4代目クラウンがその独特な丸みを帯びたスタイリングから「クジラ」と呼ばれ不評だったことを反面教師にしたのか、1979年に発売された6代目クラウン(S110 系)は5代目から続く直線的デザインを強調したモデルとなった。
先端がせり出したフロントマスクが強面の鬼のような顔に見えることから「鬼クラ」(鬼クラウン)と呼ばれたが、7代目が再び丸みをとり入れたスタイルになったことを見ると、少々やり過ぎだったのかも……。
■日産 2代目シルビア「ハマグリ」
1975年に登場した2代目シルビア(S10型)の正式名称は「ニュー・シルビア」だが、リアクオーターなどの特徴的なスタイルから「ハマグリ」の愛称で呼ばれた。2シータークーペだった初代とは異なり、2代目は乗車定員も5名となって当時人気のあったスペシャルティカーを意識したモデルとなったが、北米を意識した個性的なスタイルが国内では受け入れられず人気はイマイチだった。
バブル時代のイケイケぶりを物語る! 驚愕のあだ名
■BMW3シリーズ E30「六本木のカローラ」
1980年代、バブル期の国産ハイソカー(デートカー)ブームと同時期に発売されたBMW 3シリーズ(E30)はディスコ帰りのギャルをナンパするためのクルマとして大人気だった。その人気は凄まじく、特に六本木では大衆車として知られているカローラ並みに目にすることから「六本木のカローラ」と呼ばれるほどだった。
■メルセデス・ベンツ 190E(W201)「小ベンツ」
日本では1985年に導入が開始されたメルセデス・ベンツ初の小型乗用車が190E(W201)だ。5ナンバーサイズに収まるベンツという意味で「小ベンツ」と呼ばれていた。「六本木のカローラ」と同じようにバブル経済の勢いに乗って大ヒットを記録し、「赤坂のサニー」や「銀座のサニー」と呼ばれるほど街中に溢れていた。
歴史に残る!? インパクト大のあだ名
■トヨタ 3代目セリカ「ブラックマスク」
1981年に登場した3代目セリカ(A60)は通常状態では上向きになっているヘッドライトの下側を回転軸に起き上がるライズアップ式ヘッドライトを採用して話題を呼んだが、マイナーチェンジで通常のリトラクタブル式に変更された。閉じたライトの蓋部分やフロントグリルはブラックになり、ポジションランプといったレンズもスモーク化されるなど、ブラックで統一されたフロントフェイス周りから「ブラックマスク」と呼ばれた。
■ホンダ 初代シティ ターボ2「ブルドッグ」
1981年に登場したシティはもともと街乗りに使用するコンパクトカーだったが、当時は今よりもユーザーが「走り」を求めた時代。翌年追加されたターボよりもさらに過激なモデルとして登場したのがターボIIだった。コンパクトでありながら遊び心のある外観から若者を中心に「ブルドッグ」と呼ばれ人気を博した。
■スズキ マイティボーイ「マー坊」
スズキの軽スペシャルティカー、セルボをベースにリアのルーフを取り去って2シーターピックアップトラック化したマイティボーイは、CMで使われた「スズキのマー坊とでも呼んでくれ」のキャッチコピーから「マー坊」と呼ばれた。当時45万円という低価格の設定もあり、お金に余裕のない若者などに親しまれた。その独特なスタイルから今でもマニアの間では人気のモデルとなっている。
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投稿 いくつ覚えてますか…? クルマの「あだ名」は人気の証 懐かしの珍愛称、名愛称 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。