ロシアによるウクライナ侵攻から1カ月以上が経ったが、国際的な支持のもとでウクライナの善戦が伝えられている。専制主義の大国と隣り合わせにいる台湾の人々は、ウクライナ情勢をどう見ているのか。台湾の大手通信社「中央通訊社」東京支局長の楊明珠氏に話を聞いた。
「今日のウクライナは、明日の台湾」という言葉が台湾で注目されており、台湾の多くの人々は、ウクライナの情勢を自分たちと重ね合わせて見ています。巨大な専制主義国家を隣国に持つ国として、シンパシーを覚える人が非常に多いと言えます。
「今日のウクライナは、明日の台湾」という言葉は、侵攻直前の2月18日、自民党外交部会の台湾政策検討プロジェクトチームの会合で、佐藤正久部会長(通称、「ヒゲの隊長」)が「明日の台湾を今日のウクライナのようにしてはいけない」と発言したのが発端だという。
近年、リトアニアが台湾と国交を結んだり、チェコの上院議長が台湾の立法院(国会に相当)で演説を行うなど、東欧の国々への関心が高まっていました。もともとは地理的にも文化的にも非常に遠い地域でありながら、関係が深まっていたのです。今回の侵攻を機に、ウクライナにも非常に関心が高まっています。
台湾からウクライナへの義援金は、3月24日までに8億1196万台湾ドル(約34億3700万円)が集められた。日本からウクライナへの義援金も、3月1日までに20億円近く集まったと報じられているが、台湾の人口が日本の5分の1(約2300万人)であることを考えると、日本以上に関心が高いと言えそうだ。
国民党の趙少康氏が侵攻直後に「小国は大国を刺激すべきではない」と発言し、大きな非難を浴びました。台湾メディアの多くも、ウクライナ善戦のニュースを自国同然のように「朗報だ!」という論調で伝えています。
ウクライナの戦況は、そのまま台湾の未来を占うことにもつながるという。
ロシアが敗れる、あるいは非常に不利な条件で停戦を迎えることになれば、武力侵攻は失敗だったということになる。大義もなければ、実益もなかったという評価になる。そうなれば、中国政府は台湾の武力統一を今まで以上に躊躇することになるでしょう。強力なブレーキになるわけです。中国はロシア以上に世界経済との関係が深いため、ロシアと同様の制裁を国際社会から受ければ、中国経済はおそらく崩壊してしまう。
中国政府からすれば、ロシアが大失敗する未来は見たくないということかもしれない。ウクライナ情勢は台湾市民にとって、極めて切実な問題なのである。