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読売新聞が27日に発表した世論調査の結果が話題を呼んでいる。日本の経済格差に関する全国世論調査で、経済格差を「深刻だ」と回答した人は、「ある程度」を含めると88%に上るという。

88%の人が格差を深刻だと捉えていることよりむしろ、ネット上で大きな話題を呼んでいるのが、格差縮小のために政府が取り組むべき対策の方だ。

編集部撮影

世代ごとに違いすぎる政策ニーズ

格差縮小のために政府が取り組むべき対策を年代別に見てみると、18歳から39歳での1位は「賃金の底上げ」、2位が「教育の無償化」だった。40歳から59歳までの1位は「教育の無償化」で、2位が「賃金の底上げ」。

これに対して、60歳以上の1位は「大企業や富裕層への課税強化など税制の見直し」だった。2位と3位は同数で、「社会保障の充実」「賃金の底上げ」が続いた。

「大企業や富裕層への課税強化など税制の見直し」は、18歳から59歳までの現役世代では上位3位に入らなかった。現役世代はそれよりも、「賃金の底上げ」と「教育の無償化」を求めている。

「社会保障をやり過ぎて国が潰れそう」

この結果に次のように不満の声を挙げる現役世代は少なくなかった。

貧富の差がなく社会保障をやり過ぎて国が潰れそうなのに、60歳以上のみ「大企業や富裕層への課税」が1位、次いで「社会保障の充実」ですと。プロのフリーライダー達に食い潰される。

高齢者の意見は、富裕層や大企業への課税強化や社会保障の充実。つまり、中間層への増税や社会保険料の値上げが最優先。子育てなんか二の次。

稼いでる人を課税強化して、皆で貧しくなるのが良いと考えているオッサンがこれだけいるのは怖いですね。

『バカでも稼げる「米国株」高配当投資』の著書がある投資家のバフェット太郎氏は、「格差が「深刻」だと考えてる人の大半が「(国・企業・富裕層からの)富の分配」しか求めてなくて驚愕してる」とツイートした。

また、ニュースサイト「MyNewsJapan」編集長の渡邉正裕氏は「読売の世論調査なのに内容は赤旗」とツイートした。

渡邉氏の指摘通り、この調査結果が「赤旗的」と映ったのだろうか。赤旗の発行母体の共産党の志位委員長は、「当然の願いが示されている」と誇示するようにツイートしていた。

いつまで現役世代を食いつぶすのか

岸田首相は、新自由主義のもと、公平な分配が行われずに格差拡大を招いたとして、「成長と分配の好循環」を通じた分厚い中間層の復活を目指すとしている。実際にこの世論調査でも、日本の経済格差が「深刻」と回答した人は全体の88%に上る。

官邸サイト

88%もの人が格差を深刻だと捉えている。だから、岸田首相が提唱する「新しい資本主義」で格差の是正が必要なんだ――。この世論調査からはそうした意図を読み取ることができる。

読売新聞の主筆は言わずと知れた、ナベツネこと渡辺恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役。世論調査一つ行うにしても、主筆に許可を取っていなくても、ある程度その意向は社内的に忖度して反映しているはずだ。もしかしたら、渡辺氏は開成高校の後輩である岸田首相の「新しい資本主義」政策を“側面支援”するつもりでこの世論調査を行ったのかもしれない。

しかし、御齢64の首相と95の主筆の問題意識は、むしろ多くの現役世代にはヤブヘビになった可能性がある。彼らがこの世論調査から感じ取ったのは、格差そのものよりも、それを解消する取り組みにおける世代間ギャップだった。

総務省の人口統計によると、日本では65歳以上の人は3626万人に上る。日本の全人口の約3分の1が65歳以上で、この年齢層は投票率も高い。総務省の調査によると、昨年の衆議院選挙の投票率は60歳以上が71.43%、70歳以上が61.96%だった。20歳代の投票率は36.50%で30歳代は47.12%。40歳代でも55.56%とわずかに過半数を超えた程度だ。

人口が多く、投票率も高い層に受けそうな公約を掲げる政治家が多数なのは仕方のないことなのかもしれない。大新聞も主要な読者層が60歳以上のため、その層が反発するような政策は主張しづらい。しかし、いつまでも現役世代を食いつぶすような政策を取り続けていては、国として立ち行かなくなるのではないか。