3月26日、静岡県の富士スピードウェイで始まったスーパーGT富士公式テスト。GT300クラスでは、今回がシェイクダウンとなったHOPPY Schatz GR Supraが無事に初日を終えたが、もう1台、今季初めての公式テスト参加となった車両がいる。今季からトヨタGR86にスイッチしたmuta Racing INGINGのmuta Racing GR86 GTだ。
■加藤は2005年のセリカ以来のFRも「違和感はない」
muta Racing INGINGは、2021年からCars Tokai Dream28とINGINGがコラボレーションし、ロータス・エヴォーラMCを走らせてきたが、2022年は車両をスイッチ。GT300規定のトヨタGR86を投入し、加藤寛規のパートナーに気鋭の堤優威を起用。新たな体制で挑む。
そんなチームだが、3月12〜13日に行われた岡山公式テストは参加せず、この富士公式テストが初めての公式テストとなった。チームはこの直前、3月21日に富士スピードウェイでシェイクダウンを実施。スーパー耐久第1戦鈴鹿の決勝日翌日で、スタッフやドライバーにとってはかなりのタイトスケジュールのなかで動作確認などが行われたが、無事にシェイクダウンを終え、3月26日の公式テスト初日を迎えた。
加藤が11周、堤が11周をそれぞれ走行したmuta Racing GR86 GTは、ライバルたちのメニューも分からない中ではあるが、6番手で午前のセッション1を終えた。午後はウエットのなか堤が16周を走り17番手。動作確認を行っていたことも功を奏し、無事に公式テスト初日を終えた。
このmuta Racing GR86 GTは、すでに走行しているapr GR86 GT、シェイドレーシング GR86 GTと同じGT300規定のGR86。当然FRマシンだ。じつは加藤にとって、コンビを組んでいた高橋一穂がミッドシップにこだわっていたからでもあるが、FRでのスーパーGT参戦はなんと2005年のウェッズスポーツセリカ以来。トヨタ車での参戦もそれ以来だ。
ただ、加藤はレースにこそ出ていないが、GT3カーでFRは何度も経験があるという。「違和感はないですが、GT3よりもレーシングカーだと感じましたね。思ったよりもピーキーさがなく素直なクルマでした」とGR86を評した。
一方で逆に、その素直な感触から「ここからどうタイムを上げるかが次のステップです」という。「トップとの差をどう詰めていくのか手探りの状態で、そのためにいろいろなものをいじって、感度を見ているところです」と加藤。
「速いかといわれると、速いといいな……と思いますけど(笑)。他のテストの状況も分からないですし、自分たちのなかで開幕に向けて可能な限りいちばん高いポテンシャルを引き出せるようにしたいと思っています」
■目標はシリーズチャンピオン
一方、2021年にたかのこの湯 GR Supra GTをドライブし印象的な速さをみせてきた堤は、GRスープラとGR86の違いについて「昨年の経験をもとに、走り出しを担当させていただきました。そこでGRスープラとの違いを確認させてもらいましたが、やはり元は同じで、基本的な動きの違いはありません」という。
「エンジニアの(渡邉)信太郎さんもそれに合わせてセッティングしてくれていると思いますが、やはり違いを感じたのはタイヤですね。動きの違いが少しあり、昨年苦しんだところがなくなっていたので、僕としてはすごく好印象でした」
昨年は三宅淳詞という若いチームメイトと組んでいた堤だが、新たに組む加藤からは学ぶことも多そう。「まだ一緒にレースはしていないですが、経験豊富なドライバーですし、僕が知らないことをたくさん知っています。フォーミュラでも僕より全然経験があり、その目線からの走らせ方も知っている方です。また、信太郎さんとも長いので、ノウハウを盗めたらと思っています」と堤は今季、加藤から多くのことを学びたいという。
そして加藤による堤の評価も高い。「速いですよ。もともと僕の中のセンサーに引っかかっているひとりですし、いろいろな噂も聞いていましたから。走らせ方も上手です」と加藤は堤を評する。
「昨年は昨年で、ハコ使いの(阪口)良平くんが僕の引き出しを増やしてくれたので、走りの部分で引き出しを見つけられたらいいですね。技術を僕がバックアップして、走りを盗んでとギブ・アンド・テイクが成立しています(笑)」
強力なパッケージであろうと推測されるmuta Racing GR86 GTのふたりの目標は「もちろんシリーズチャンピオン」だ。「まわりからもパッケージの評価は高いですし、スポンサーさんに2勝はマストと言われているので(笑)。ミスをしなければ結果はついてくると思っています」と堤はシーズン開幕に向け意気込んだ。