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ロシアによるウクライナ侵略から1カ月が経ったが、今なお戦闘は激しさを増していると報じられている。中国は、欧米や日本に比べてロシア寄りの立場を取りつつ、ロシアとも微妙な距離感を保つという独特な立ち位置を保ってきたが、この戦争をどう見ているだろうか。

マリウポリで、ロシア軍による高層住宅への容赦ない砲撃(11日、写真:AP/アフロ)

中国メディア「澎湃新聞」は3月24日、「ウクライナ衝突から1カ月、伸び続ける『電撃戦』、進まない和平交渉と漂う暗雲」とのタイトルで分析記事を掲載。「プーチン大統領は、『ウクライナ政府によるジェノサイドを阻止するため特別軍事行動を取る』と宣言した」など、ロシア側の言い分にもかなりの紙幅を割き、戦況を伝えた。

中国の軍事専門家・韓東氏は記事中、ロシアは電撃戦で短期間のうちに勝利を収めて交渉を優位進めようとしていたと分析。だが、交戦開始から1カ月が経ち、持久戦へと向かいつつあるという。電撃戦が成功しなかった要因として、韓東氏は、次のように述べている。

「ウクライナ陸軍は都市部での戦いやゲリラ戦などに強く、決して弱い相手ではない。ロシア軍は民間人の犠牲を最小限に留めようとしているが、ウクライナ軍は民間施設を利用して抵抗を続けているため、ロシアは手が出しにくい。ロシア軍の空爆は精度が低く、さらには西側からの絶え間ない支援にも手を焼いている」

記事によると、3月19日にロシアは極超音速ミサイル「キンジャル」の使用を開始した。この時期をロシアの戦略の転換点と見ることも可能だという。

また、上海社会科学院国際問題研究所柯静副研究員は、ロシアに対する大規模な制裁はアメリカ経済にとっても痛手となっていると指摘。

「アフガニスタンのように泥沼化することはアメリカの国益を損ねることになるため、アメリカもそれは望んでいない。アメリカは軍事支援という形で戦争を煽ることはしても、自身の利益を損ねることはしないはずです」

アメリカが本格的に参戦する第三次世界大戦の可能性については、こう述べた。

「アメリカが参戦した場合、戦火はアメリカ本土にも及び、第二次大戦の時のような対岸の火事では居られなくなる。世界戦争を引き起こすことはしないとは思いますが、アメリカは現在も和平交渉に干渉を加えている。アメリカが賢明さを欠けば、ロシアが核兵器を使う可能性も排除できない。核兵器の使用は全人類にとっての悲劇であり、最悪の結果と言えます」

世界の関心がウクライナに向いているとはいえ、米中対立は今なお続いている。中国としては、欧米ともロシアとも一定の距離を取りながらも、アメリカを牽制したい意図があるのかもしれない。