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北朝鮮が24日、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられる飛翔体を発射したことについて、秋田県の佐竹敬久知事が同日夕、「防衛をどうするか真剣に考える時期でないか」と述べたことに対し、弾道ミサイル防衛システム「イージス・アショア」配備に反対していた過去の発言との整合性を問う声がネット上で強まりつつある。

秋田県の佐竹敬久知事(県サイト)

地元紙の秋田魁新報毎日新聞によると、佐竹知事はこの日、県庁で報道陣の取材に応じ、「本当に極めて遺憾だが、遺憾と言っても(北朝鮮は)聞かない。防衛をどうするか真剣に考える時期でないか」と述べた。陸地に着弾する可能性についても「十分に陸に被害がある」などと言及していたという。

県民の安全を預かる知事として、この日の発言だけを見れば当然のように見えるが、時計の針を遡ってみると佐竹知事の発言は微妙になってくる。

防衛省は2018年に「イージス・アショア」の配備先の一つとして秋田市の陸上自衛隊新屋演習場を決定。演習場の近隣自治体などがこれに反発したものの、佐竹知事は当初、旗幟を鮮明にせず、秋田魁新報に「見えぬ本音」(19年3月19日)などと批判的に書かれるほどだった。

イージス・アショアの迎撃実験(米国防総省サイト)

しかし、19年6月、防衛省が配備先を検討した際の報告書でデータを誤ったミスが同紙のスクープで発覚し、反対世論が勢い付いた。佐竹知事は「『新屋ありき』という状況で(防衛省が)おいでになっても、うちはもう協議に応じません」との頑なな姿勢に転換。同紙の県民世論調査で反対派が6割と賛成派の倍にのぼると、「県民は真っ当な意見」と述べたり、計画の白紙を強調したりするなど実質的に反対側に転じた。

その後、秋田県と秋田市は翌年1月、防衛省に「住宅地に近い新屋への配備には無理がある」と正式に拒否を申し入れ、河野防衛相(当時)が経済的な合理性を見合わないことを名目に「イージス・アショア」の計画そのものを停止するに至った。

2020年1月、河野防衛相(当時)に申し入れをする佐竹知事ら(秋田県サイト)

こうした経緯から、ツイッターでは、経済評論家の上念司氏が「知事、あなたはイージスアショアに反対してませんでした?あの時は真剣に考えてなかった?」と追及。

ヤフーニュースのコメント欄でも

ミサイルが落ちた時は佐竹知事に責任を辞任後も取ってもらいたい。本当に県民を守る気があるのか?

地上イージスを誘致すれば良かったよ。誘致すれば、防衛の面でも人口面そして若者が働ける場所を確保できたのに。

といった意見が書き込まれていた。

さらにツイッターでは、佐竹知事が旧藩主の末裔であることから「日和見主義で芯がなくフラフラしてて決断ができない。そして、弱きを挫き強きに媚びるのは佐竹家代々の御家芸ですから」とコメントする人も。佐竹家は常陸国(現在の茨城県)を拠点とする戦国大名。北条家や伊達家と覇を競い合った名門だが、関ヶ原の戦いに際しては、当主が西軍、家中が東軍それぞれにつくべきとの考えから結果として曖昧な態度となり、常陸54万石から秋田20万石に移封・減封された。

大名家出身の政治家はしばしば先祖のエピソードを引き合いにされる宿命があるが、戦国時代に最盛期だった時の当主、義重は戦場で7人の敵を切り伏せ「鬼義重」の異名をとったことで知られる。佐竹知事は日和見から脱し、県民の安全を真に守るため「鬼」になれるのだろうか。