3月26〜27日、静岡県の富士スピードウェイで開催されるスーパーGT公式テスト。今回、GT300クラスは27台が参加するが、今季初登場となるGT300規定の車両が2台姿をみせる。そのうちの1台が、HOPPY team TSUCHIYAが製作したHOPPY Schatz GR Supraだ。つちやエンジニアリングの若いエンジニア、メカニックたちがゼロから作り上げたマシンが、富士に登場した。
2021年までポルシェ911 GT3 Rを走らせていたHOPPY team TSUCHIYA。チームを創設した故・土屋春雄さんの願い、そして「若い子たちが自分の技量を上げるために」ゼロからの車両製作を決めたのが2021年4月。春雄さんに「クルマ、作ることに決めたから」と告げたのが土屋武士監督と春雄さんの最後の会話となった。
そこから、ホモロゲーションに従いロールケージが製作され、若き木野竜之介エンジニア、武藤良明メカニックらを中心に、コツコツと製作されてきたHOPPY Schatz GR Supra。3月12〜13日の岡山公式テストには間に合わなかったが、3月25日、富士スピードウェイにその姿をみせた。
このHOPPY Schatz GR Supraの“火入れ”が行われ、産声を上げたのが3月24日(木)の18時前ごろ。「奇しくも親父の一周忌だったんですよ。富士に行くギリギリのタイミングだし、合わせたわけでもないんですけどね」と土屋監督。春雄さんにお線香を上げてから火入れを行ったのだという。
何日も徹夜をするほどではなかったというが、夜遅くまで若いスタッフたちが作り上げたHOPPY Schatz GR Supraは、遠目に見ると他のGRスープラとは変わらないが、近くで見るとかなり細部が異なる。今季SYNTIUM LMcorsa GR Supra GTがオリジナルのカウルを製作したが、これともまた異なる形状。また、つちやエンジニアリングならではとも言えるアルミのパーツも「そこらじゅうにある」と多用されている。
「高いものも使わなければいけないけれど、20〜30年前と同じようなものがついています。つちやMR2とそう変わりはしないかな(笑)。外注で頼まなければいけないところもありましたが、自分たちで作れるものは作ってる。つちやエンジニアリングっぽいクルマができあがったと思います」
製作を開始する段階から土屋監督が述べていたように、このクルマは土屋武士が直接手を下すことなく、若いスタッフたちへの技術の伝承をコンセプトに製作された。
「他のGRスープラやGR86とは、フレーム以外同じものを使っていないんです。設計者(木野エンジニア)いわく、『9割は違うものがついている』。しかもほとんどが自作なんです。自分たちで作ったことがないようなものも作っています。『良くこんなこと考えついたな』というくらい。知識はあるけど経験がない人たちが作っているので、ものすごく“肥やし”になっています」
この日は、最初のハードルとも言える車検を受けた。かなり長い時間をかけ、GTAのテクニカルスタッフによって計測や技術解釈などが話し込まれていたが、修正が必要な部分もある様子。ただ、やはり新たなマシン、さらにつちやエンジニアリングが作り上げたマシンだけに、ピットレーンを手押しで通過する際は、他チームからも熱い視線が送られた。
今回はエースの松井孝允と新たにチームに加わった野中誠太、そしてMax Racingが不参加であることから佐藤公哉を“借りる”かたちでドライブするが、あくまで目的はシェイクダウンだ。
「まずは本当に転がして、無事に工場に帰れるかどうか」
産声はまだ上がったばかり。HOPPY Schatz GR Supraがどんな走りをみせるかは分からないが、ぜひ現地観戦するファンはその走りを見守ってほしいところだ。