2022年F1第1戦バーレーンGP土曜日のフリー走行3回目で1周もできず、変更したセットアップの確認ができないまま予選では、まさかのQ1落ち。予選後、ミックスゾーンにやってきた角田裕毅(アルファタウリ)は、チームへの不満を口にしなかった。
「レースをやっていれば、ああいうことも起こります。それよりも、どうして自分の力を出しきれなかったのかという気持ちが強くて、チームへのフラストレーションというより、自分に対してちょっと悩んでいたという感じでした」
気持ちを切り替えてレースに臨んだ角田は、スタートから魅せた。「FIA F2で18インチタイヤの経験があったので、そのときの感覚や記憶を信じて行った」という角田は、スタート直後の1コーナーまでに4つポジションを上げて12番手で1周目のコントロールラインを通過していった。
目の前を走るのは、昨年までコーチ役を務めていたアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)。そのアルボンを5周目の1コーナーで、オーバーテイクしていった。
角田がエンジニアとレース前に立てていた戦略は、3ストップ。リヤタイヤに厳しいバーレーンGPでは、2回以上のマルチストップはこれまでも何度か度々採用されてきた。しかし、その多くは比較的硬めのコンパウンドが使用されてきた。
角田も事前の予想では途中でハードタイヤを装着する予定だったが、途中で予定を変更。ソフトタイヤを中心にタイヤ戦略を組み立て直したという。その理由を角田は説明しなかったが、おそらく今年から18インチタイヤに変更されたことが大きく影響していると考えられる。
昨年までの13インチタイヤはトレッド面のゴムによるグリップ力だけでなく、サイドウォールが高い分、コーナーリングでタイヤがたわむことでもグリップ力を生んでいた。ところが、今年から18インチタイヤが導入されたため、サイドウォールは低くなり、たわみが小さくなった。その結果、グリップ力はトレッド面のゴムに依るところが大きくなり、結果的に滑りやすいタイヤとなった。そのため、硬めのコンパウンドを履くと、今年のタイヤは昨年に比べてよりグリップ力を失う傾向にあり、選択しにくくなったのではないか。
1回目のピットストップでミディアムタイヤに交換した角田は、2回目と3回目にソフトタイヤを投入した。
「たしか僕はソフト→ミディアム→ソフト→ソフトだったと思うんですが、途中からは、もう1回ピットストップして、4ストップも視野に入れていました」(角田)
しかし、4回目のピットストップは行わずに済んだ。チームメイトのピエール・ガスリーのマシンが後方部から出火して、コース脇に停まったため、セーフティカーが出動したからだ。このリタイアに関して、チームは原因を明らかにしていないが、レース後、フランツ・トスト代表は「あれはMGU-Kの可能性が高い」と語っていた。
その後、再開されたレースでレッドブル勢2台が失速して、レースを離脱。8位に入賞して開幕戦を終えた角田に、笑顔はなかった。