宮城県・福島県を襲った震度6強の地震もそうですが、まったく嬉しくない「災害列島」という呼称が当てはまってしまいそうなくらい、このところ日本各地でさまざまな自然災害が発生しています。
それに備えようと、経営資源を有効活用し被災地を支援しようという動きが企業にも見られるようになってきました。
埼玉県上尾市に本社工場を構えるUDトラックスも地域と連携して被災地を支援するプログラムを開始。多様なニーズにきめ細かく対応する「災害支援車」を仕立てるなど、トラックメーカーらしい独自性を発揮しています。
これはUDトラックスのGood job!! だと思います。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/UDトラックス・フルロード編集部
地域と連携し、地元企業ならではの「できること」
いつ発生するか分からない自然災害だが、UDトラックスは自社製品であるトラックと従業員のマンパワーを活用する災害支援プログラムを立ち上げた。地域や地方自治体、NPOなどの人々とともに被災地に寄り添ったサポートを目指すとしている。
地球温暖化に伴う気候変動により水害や土砂災害、渇水被害などの自然災害の頻発化、激甚化が懸念されている。UDトラックスが本社を構える埼玉県上尾市でも2019年の台風19号により荒川が氾濫を起こし、避難者が一時1000名に近づくなど大きな被害を経験した。
UDトラックスは、上尾市に本社工場を構えるトラックメーカーとして、広い敷地と多くの人的資源を抱えていている。こうした特性は、災害援助・復興支援において大きな力になると考え、地方自治体関係や地域で支援活動を行なう団体関係者と協議を開始した。
心身のストレスを低減するプライバシー空間の提供
その中で見えてきたのが、「プライバシー確保」の課題だった。避難所では限られた空間の中で共同生活を余儀なくされるため、とりわけ女性や子ども、障がい者や高齢者などにとっては心身への負担が非常に大きくなることが指摘される。
そこで、人道的な避難所運営のための行動理念と基準などについての最低基準を明文化した「スフィアハンドブック」などを参考にしつつ、プライバシーや衛生面に配慮した安心・安全な環境の提供、および、ライフラインの充実を活動方針とすることを決定した。
さらに議論を進めた結果、UDトラックスのトラックの荷台部分をプライバシーが確保できる空間として活用することを第一案として、具体的な設計方針を決めた。そしてさまざまな設計案を検討した結果、架装メーカーなどの協力も得て2タイプの「災害支援車」を実現した。
多様なニーズにきめ細やかに対応
1台はバンタイプの小型トラックで、避難所や被災現場での運用を想定。室内にはエアコン、冷蔵庫、水タンク式シンク、充電キャビネット、AED装置などを完備し、プライバシーを確保した2つの個室でオムツ替えや授乳といったベビーケアや、障がい者や高齢者の身体ケアなどの個別用途に対応している。
また、ソーラー発電システム、ディーゼル発電機、リチウムイオン蓄電器を搭載しており、モバイルバッテリーの充電や貸し出しサービスなどを通じ、ライフラインとしての通信を確保するための手段を提供する計画である。
ちなみに東日本大震災では、今まで信頼度の高かったエンジン式発電機がメンテナンス不足のため、稼働しないという事態が発生するなど、防災計画(BCP・MLCP)において電源確保には、複数のバッテリーユニットの導入が必須となっている。
もう一台は平ボディタイプの小型トラックで、主に被災現場において土のうや被災家財の運搬用途で運用する予定。重量物の積載や倒壊家屋の下敷きになった家具などの搬出を想定し、テールゲートリフターやウィンチを搭載している。
地域社会との共生をめざして
「災害支援車」は公道走行が可能となっており、緊急時における柔軟な災害支援活動に対応できる。また、実際の運用に際しては、上尾市、社会福祉協議会、その他関係団体と緊密に連絡・連携した上で、派遣の有無や派遣先の調整を行なう予定。
なおUDトラックスは、上尾シティマラソンの特別協賛をはじめ、商用車による事故件数の多い埼玉県における啓発活動の一環として市内の小学校への交通安全教室プログラムの提供や、社会的孤立を防ぐことを目的とした地域の高齢者向けインターネット教室の開催など、以前から経営資源を活用することで地域社会およびコミュニティへの貢献活動を行なっている。
また今年は、上尾市が掲げる「第2期上尾市スポーツ推進計画」を支援するとともに、UDトラックスが掲げるパーパス「Better Life(ベターライフ)」の実現をめざし、同市が保有する「上尾市民球場」のネーミング・ライツ(命名権)を取得し、「UDトラックス上尾スタジアム」と命名する契約を締結している。
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