たぶんトラックドライバーさんなら誰しも一度は考えたことがあるのではないでしょうか? 「完全自動運転が実現したら自分たちの仕事はどうなっちゃうんだろう?」。
自動運転にもレベルがあり、現在はまだ先進安全性に重点が置かれていますが、いずれは完全自動運転が普遍化するかも……。そこで3人のトラックドライバーさんに聞いてみました。
文/かんちゃん・ぱんだパパ・尾山ママ 写真/フルロード編集部・ボルボトラックス
*2016年3月発売トラックマガジン「フルロード」第20号より
まだまだ人間のほうが勝っていると思う/かんちゃん
約30年前に初めて担当したトラクターヘッドは日野スーパードルフィン。屋根に速度灯が付いている角目初期です。ABSなんて物は付いてないし、なんの工夫もないオープンデフだし、オートチェーンなんて発想すら無い時代でした。
それでも嬉しくて嬉しくて、マーカーをたくさん付けたりフロントバンパーを2段にしたりと、すごく大事に乗っていたのを思い出します。
トレーラ1年目の私は長距離業務を担当。北海道内どこへでも行かされました。北海道って「難所」的な峠がたくさんあるのですが、石北峠、日勝峠、稲穂峠、中山峠、ありとあらゆる峠で勉強させてもらいました。
なんせV8生エンジン(ターボ無しエンジンのこと)360PSのオープンデフに、当時は過積載全盛の時代でした。ハイ、3速友の会です。当時のトラクタヘッドはそれだけ走行性能が良くなかったんですよね。
何を言いたいかというと、そこからのトラクタヘッドの進化です。
トラクターヘッドにABSが義務付けられ、更にシャシーのほうも義務付けられたり、デフもLSDがオプション装着できたり、標準でASRが付いたりと、年々すさまじい進化でした。
そしてオートチェーンが登場、これにはマジで驚きました! 止まらずに運転席のスイッチ操作だけでタイヤチェーンがかかるんですよ!
そして「自動運転」。これに近いオートクルーズは、私の「クオン」には標準で搭載されていますので、有効に活用させていただいています。私は「運転が楽」というよりも「速度の管理がしやすい」ということで活用させてもらっている感じです。
人間って、集中力がない動物だと思うんですよ(俺だけ?)。速度だけに集中すると他のことが疎かになってしまうような気がして……。
最近はデジタコが付いていたりして、少しでも速度オーバーすると違反になり、日々の日報に違反回数として記載され、会社にもよるとは思いますが、勤務評価にもつながると思います。
オートクルーズは速度以外のことに集中できるので安全運転には効果的だと思います。もちろんオートクルーズに頼りきったり、冬道で使用したりは厳禁ですが……。そのオートクルーズが物すごく進化したのが「自動運転」ではないかと思います。
結論からいうと、あまり賛成しません。まずは、自動運転の車両開発よりも、道路などのインフラ整備が先ではないでしょうか?
現時点では車両が先走りしてますよね。それと先ほども言いましたが、人間は集中力が無かったり、楽なほうに流されやすかったりして、絶対に自動運転に頼りきっちゃうと思います。
また、北海道には本格的な冬があり、1年の半分近くは凍結路面と接することになります。自動運転がどこまで凍結路面に対応できるのか不安です。
凍結路面といってもいくつもの種類があって、しかも刻々と変化ています。道産子運転手はその変化を一瞬で判断して日々安全運転をしているわけなんですよ。この判断が果たして自動運転にできるのか?
効率という面からすればオートメーション化は永遠の目標かもしれませんが、運転に関してはまだまだドライバーによる職人的な技が勝っていると思います。
なので、オートクルーズまでは賛成ですが、それ以上は賛成しません。……だって自動運転だとオレ、要らないじゃん(泣)。
貴重な時間の肩代わりなら、大賛成です/ぱんだパパ
昔は長距離、今は塵芥車に乗っているぱんだパパです。
以前、メルセデスベンツ「アクトロス」のコックピットで、ドライバーがシートをずらして本を読んでいる姿を目にしました。
私がトラックの自動運転を知ったのはこの時です。「俺が長距離走ってる頃に自動運転ができていたらどんだけ良かったやろな~」としみじみ思いました。
何のため? ズバリ「働くドライバーの環境改善、物流業界の将来のため」。大いに実現してもらいたいです!
各メーカーや政府は、「事故・渋滞の抑止」「ドライバー不足対策」「高齢化社会へ向けて」など、さまざまな課題解決を追及していますが、終わりのない問題のような気もします。
理想を言えばキリがないですが、渋滞時のスットプ&ゴー、あのムダな時間だけでもドライバーの代わりに運転してくれたなら……。ウトウトはもちろん、テレビを見たり食事したり、簡易トイレで用を足すことだってできるじゃありませんか!?
現実には、渋滞にハマったからといって「今のうちに寝とこ」ってすぐに停まれるわけではないし、停まれたとしてもタイミングよく仮眠できるわけでもない。渋滞や事故での損失って、はかり知れないり知れないでしょう。
自動運転が実現すれば、この業界に入るのを躊躇する若者も「これならできるかも?」、また「これなら生涯現役じゃ!」って引退をとどまる先輩も出てくるんじゃないかな?
重ステからパワステ、板バネからエアサスみたいにどんどん変化を遂げて、「オイラの仕事!? 楽勝~」ってな具合にいきたいもんですね(笑)。
興味はあるけど、まだ時間は掛かると思う/尾山ママ
自動運転がトラックにまで及んで来るなんて誰が想像したでしょう? うちでは新聞取ってないし、テレビのニュースも見ていないので、やたら妄想のようなクルマが頭に浮かんでしまう。
ひと昔前の外国のTVドラマにあった「ナイトライダー」のようなクルマが現実になってしまうのか? しかも喋ったりしたら、お一人様旅行も増えたり、居眠り防止になるかなぁ? なんて、もう遠い遠い未来のはずだったSFの世界が、近い将来に実現してしまうのかも?
現状では、いつでも運転ができるようにドライバーは運転席に座ってなければならない。それでも長距離ドライバーだったら疲労は軽減されるのかな?
高速道路やセンター便とか大きな倉庫に行くクルマはできるのかも……。一般道路は? 細かい道路を行く店配とか個人宅の配送とか、現場に入るようなトラックは無理じゃないかなぁ?
「トラック」と一括りにはできないと思います。それぞれ積んでる荷物も違うし、降ろし方も違う。10年後に運転手が消えてしまう、というところまでは行かないのが現実ではないでしょうかね?
まあ、私が現役で運転手をしている内には実現しないでしょうから、確かめられないのが残念ですが、どんなもんか乗ってみたい気持ちも多少ありますよ。そりゃあ興味津々です! できたらナイトライダーみたいなトラックに乗りたいです!
投稿 実用化したら失業の危機!? トラックドライバーは自動運転をどう思っているか? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。