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今回、幸いなことに大雪で立ち往生することはなかった。そこで低ミュー路面に踏み込んで発進性をテストしてみる。 ホンダeはリアにモーターを搭載し、後輪を駆動するから平坦路でも発進には気を遣う。滑りやすい路面でアクセルを強く踏み込むと、クルマが暴れないようにトラクションコントロールが作動し、じんわりと前に進んだ。トラクションコントロールをOFFにしてしまうと、同じアクセル開度でも路面をかき、暴れてしまうから前に進みにくい。ラフな操作は禁物で、アクセルワークにも気を遣った。 次は除雪していない勾配のついた坂道にバックで踏み込んでみた。案の定、途中からタイヤが空転し、進めなくなる。何度か前進と後退を繰り返し、少しずつ進んだが、無理は禁物だ。いざというときのためにスノーヘルパーは持っていきたい。 帰り道は下り坂が多かった。だからエネルギー回生がはかどり、航続可能距離がグングン延びていった。加えて、高速道路にはCHAdeMOの急速充電器を設置しているサービスエリアが多い。だから不安なく家まで帰りつくことができた。 ちなみにホンダeは雪道でもコントロールするのが楽しいEVだ。トラクションコントロールを解除し、ステアリングを切ると簡単にリアが流れ、クルマが向きを変えた。 だが、ヒャッとする絶妙なタイミングで横滑り制御が助け船を出し、クルマを安定方向に導いてくれる。走りの楽しさと操る楽しさに満ちたEVなのだ。

 温暖化したといわれているが、雪国からは「記録的な大雪に見舞われ、大変だ!!」という情報が毎年のように届く。

 突然の大雪で除雪が間に合わず、何万台もの自動車が立ち往生。多くの人が何時間も自動車のなかに閉じ込められたというニュースを見聞きした人は少なくないはずだ。

 東京でも何年かに一度、雪が降り積もり、首都高速や一般道がパニックに陥ることがある。こういった状況になったときに気になるのがEVの冷寒性能だ。もし数十時間も雪のなかに閉じこまれる状況になったら……。そんなことを考えただけでも怖い。

 そこで、ホンダeオーナーの筆者が、意を決してスタッドレスタイヤを購入し、極寒の雪国に行ってBEVは極寒でも大丈夫なのか走ってみた!

文/片岡英明
写真/片岡英明

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■バッテリーは寒さに弱い

 別名バッテリーEVと言われていることから分かるように、EVは駆動系はもちろん、暖房や冷房などの温度調整にも電力を使っている。バッテリーの弱点は温度変化に対する適応性に難があることだ。なかでも苦手なのが低温である。

 デジタルカメラやスマートフォンで分かるように、氷点下の寒冷地だと電力を食ってしまい、消耗が激しい。EVは寒い時に電気式ヒーターで車内の温度を高めようとするから電費は大きく落ち込み、航続距離はぐっと短くなる。

 寒いと平坦路でも電気の効率は落ちる。我が家のホンダeアドバンスは、エアコンを使うことが少ない秋の平均燃費は6.8km/kWhだった。

 タイヤがスポーティカー用のミシュラン製パイロットスポーツ4だから、ラフな走りをすると電費はすぐに1割くらい落ち込んでしまう。

スタッドレスタイヤに交換の図。ちなみに、寒冬期の航続距離低下は車種によって低下率が違い、専用のバッテリーヒーターを搭載した車種の方が低下率が少ないとか

 そして、今回、意を決して、スタッドレスタイヤに履き替えた。選んだのは、北海道のテストコースで試乗した時に印象がよかった横浜ゴムのアイスガード7だ。ホンダeは前後異サイズだから出費は大きいが、安全には変えられない。

 タイヤの慣らしが済んで電費を計測したら、なんとサマータイヤと大差なかった。というより、関東周辺のドライブコースでは以前より電費と乗り心地が向上していたのである。

 このスタッドレスタイヤのほうが転がり抵抗が小さいのだろう。エアコンをオフにしてシートヒーターで腰まわりを温めて走ると7km/kWh台に迫った。エアコンを稼働させると、電費は10〜15%ほど落ち込む。だから安心して走れるのは頑張って200km程度だ。雪国へのドライブなら150km以下での充電が安全圏となる。

■寒いと充電スピードも下がる

 雪国に行く前に、USBでつなぐ電熱ブランケットやスコップ、スノー(ぬかるみ)ヘルパー、防水タイプの軍手なども車内に放り込んだ。

USB接続の電熱ブランケットはEVに限らず、寒い時期の遠出でおすすめのアイテムだ。クルマ側にヒートシーターがついていれば効果的

 目指したのは群馬と新潟の県境で、我が家からは190kmほどの距離にある。早朝に出発し、1時間ほどで関越道に入った。気温はマイナス(氷点下)1℃を指している。出発前にタイマー予約機能を使ってエアコンで車内を暖めていたため、走り出しから快適だった。

 80km/hのスピードで丁寧な運転を心がけたが、駒寄PAまではなだらかな登り坂が続く。そのため電費はいつもより悪い6.2km/kWhだ。

 ここで50kWの急速充電器を使ったが、外気温がマイナス3℃だったからか、充電器の不具合か分からないが、思うように電力量が増えていかない。30分つないで11.5kWhにとどまった。

 この先は登り坂が続く。電費は5.2km/kWhまで下がったので、20km先の赤城高原SAに立ち寄って再充電。

近年はこの「急速充電」も物凄い勢いで進化中だ。有名所はテスラスーパーチャージャー(250kW)だが、新型ヒョンデアイオニック5は充電回路に駆動モーターを使用し、350kWの充電電力許容量を誇る。日本ではインフラの充電器側が対応していない

 外気温はマイナス5℃だったが、今度は13.2kWh入り、バッテリー量は82%まで増えた。航続可能距離は153kmと表示される。

 最短距離を走るため、月夜野ICで国道17号線に下り、三国峠を目指す。勾配はどんどんきつくなり、外気温もマイナス7℃まで下がった。平均電費は4km/kWh台前半まで落ち込んでいる。

 オートエアコンは便利だが、思いのほか電費を落ち込ませてしまうのだ。エアコンを使うときはマニュアル式に切り替え、細かく温度や風量を調整した方がいい。

 今回も少し不安なのでエアコンの設定温度を下げたが、最後はエアコンを止め、シートヒーターとステアリングヒーターだけでの走行に変更した。助手席の人は熱線入りブランケットや足温器があると寒さをしのげるはずだ。

 峠の頂上付近までは約40kmの距離だったが、航続可能距離は65kmまで縮まった。ハラハラさせられたが、下り坂になるとエネルギー回生を使って航続距離を延ばせるのでホッとする。

 EVは行く先の標高差や道路レイアウトなどを知っておく必要があると痛感した。ギリギリでの充電は、危険だ。充電スポットが休みだったり、故障することだって考えられる。山間部を走る時は早めに充電することが大事だ。

 ちなみに氷点下10℃以下の北海道で出力が20kWの中速型充電器につないだ時は30分の充電で少ししか電気を貯められなかった。充電器もバッテリーも冷えていたからだ。すべてが高出力の充電器とは限らない。

 だから土地勘のない地方を走るときは、少し電気を多く残して電欠の不安なしに充電した方が安全である。バッテリーに電気がたくさん残っていれば、万一、大雪で立ち往生したときも安心だ。

 消費電力の少ないシートヒーターに電熱ブランケットの組み合わせなら、それほど電気を食うことはない。雪の中に長時間閉じ込められても、エンジン車のように一酸化炭素中毒になる危険性がないのもEVのいいところだ。

 ホンダeのバッテリー容量は35.5kWである。満充電に近い状態なら、上手に暖を取れば、ひと晩くらいは車内にこもっていられるだろう。

■ホンダeは雪道でも楽しい!

 今回、幸いなことに大雪で立ち往生することはなかった。そこで低ミュー路面に踏み込んで発進性をテストしてみる。

大雪で立ち往生しないに越したことは無い。折角無事雪の中来たのだから、純粋にホンダeというクルマの走りを雪道チェックしたい

 ホンダeはリアにモーターを搭載し、後輪を駆動するから平坦路でも発進には気を遣う。滑りやすい路面でアクセルを強く踏み込むと、クルマが暴れないようにトラクションコントロールが作動し、じんわりと前に進んだ。トラクションコントロールをOFFにしてしまうと、同じアクセル開度でも路面をかき、暴れてしまうから前に進みにくい。ラフな操作は禁物で、アクセルワークにも気を遣った。

悪路へ行くことが分かっているなら、スタックした時のためにスノー(ぬかるみ)ヘルパーを積んでおくと安心だ

 次は除雪していない勾配のついた坂道にバックで踏み込んでみた。案の定、途中からタイヤが空転し、進めなくなる。何度か前進と後退を繰り返し、少しずつ進んだが、無理は禁物だ。いざというときのためにスノーヘルパーは持っていきたい。

 帰り道は下り坂が多かった。だからエネルギー回生がはかどり、航続可能距離がグングン延びていった。加えて、高速道路にはCHAdeMOの急速充電器を設置しているサービスエリアが多い。だから不安なく家まで帰りつくことができた。

 ちなみにホンダeは雪道でもコントロールするのが楽しいEVだ。トラクションコントロールを解除し、ステアリングを切ると簡単にリアが流れ、クルマが向きを変えた。

 だが、ヒャッとする絶妙なタイミングで横滑り制御が助け船を出し、クルマを安定方向に導いてくれる。走りの楽しさと操る楽しさに満ちたEVなのだ。


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投稿 【実録】ホンダeオーナーが極寒の雪国で走ってみた! はたして無事に帰れたのか?自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。