自動車ディーラーで営業マンをしていると、他社のクルマが非常に良く見えることがある。隣の芝は青くみえる状態になり、「このクルマがあればなぁ」「あの人気車が欲しい」と何度願ったことだろう。
本稿では、筆者がトヨタ営業マンだった頃、ぜひともトヨタラインナップに加えて欲しかった他メーカーのクルマを紹介していく。トヨタ販売現場で、喉から手が出るほど欲しかったのは、このクルマだ。
文/佐々木亘、写真/SUBARU、DAIHATSU、BMW
【画像ギャラリー】トヨタ営業マンが売りたかった!! トヨタラインナップにはない魅力を持った他社メーカーのクルマたち(15枚)画像ギャラリーステーションワゴンの最高傑作! スバル・レガシィツーリングワゴン
トヨタ・レクサスで営業をしていると、ステーションワゴンのスターがいないことに気づく。かつてはカルディナが良い位置にいてくれたが、それも2007年まで。以降はアベンシスやカローラツーリングなどが登場するが、どれもパッとしない。
ステーションワゴンやハッチバックが好きな筆者は、自社扱いのクルマのなかで自分が購入するクルマを探すのに苦労した。ミニバンやSUVではなくステーションワゴンに乗りたいのだが、乗りたいクルマが見つからないのだ。
こうしたステーションワゴン不足に悩むトヨタ販売現場では、スバル・レガシィが眺望の的になる。特に2009年から2014年まで販売された5代目は秀逸だった。
全長は4800mmに迫り、全幅1780mmという堂々のサイズ感。荷物がしっかりと積み込めて、さらに余りある室内スペースは居住性も高い。クルマとしての質感が高く、さらにアイサイトver.2を搭載していて、安全性能も文句なしだ。
家族と乗ると真価を発揮するレガシィだが、筆者が思うレガシィの魅力は一人で乗っていても違和感が少ない点である。ドライバーズカーとして魅力が高いステーションワゴンは、世界を探しても、そう多くはない。
レガシィはその代表であり、筆者が営業マン時代に一番乗りたかったクルマでもある。
小さくてもファミリーカー ダイハツ・タント
トヨタ営業マンは、軽自動車の主軸となるクルマを販売したことがない。軽が飛ぶように売れていくという体験を、一度はしてみたいものだ。
2013年に登場した3代目タントは、のちに登録車を含めた新車販売台数でNo.1を記録する。助手席側はアイシスと同様に、Bピラーレスの「ミラクルオープンドア」を採用。使い勝手の面では、軽自動車の枠を大きく超えているクルマだ。
小さいクルマはファミリー層へ向かないという潜在的な意識を壊すほど、ファミリー層に支持されるタント。ミニバンやSUVを購入していくファミリー層とはまた違う、新たなユーザーとの出会いを、タントが与えてくれるのではないだろうか。
最高のメーカースローガンとその象徴 BMW・3シリーズセダン
ドイツ語のFreude am Fahren。「駆け抜ける歓び」と訳されるこの言葉は、BMWを象徴するスローガンだ。このスローガンを忠実に守り、シンボルとして作り続けられているのが、3シリーズである。
トヨタにもクラウンというシンボリックな存在はあるが、メーカーとの一体感は、世代を追うごとに小さくなっているようと感じる。ファン層も少しずつ変化し、クラウンが時代とともに変わっていく姿を目の当たりにしてきた。
3シリーズももちろん、時代の変化に対応し、自身を変えてきたが、根幹にある駆け抜ける喜びは今も持ち続けていると思う。伝統を重んじ、歴史に裏打ちされた確固たる自信をもって販売できるクルマがあるということは、営業マンとしての幸せを感じる瞬間だろう。
BMWのこだわりを最も強く感じるのは、2005年に登場した5代目3シリーズ、E90型だ。自然吸気の直列6気筒エンジンを搭載する最終モデルで、作り上げたエンジニアの想いもひとしおだと思う。
利益を出すためにモノを売るのが営業マンだが、販売するものを通して、作り手と使い手を結びたいという気持ちも持っている。この気持ちを通わせる架け橋になれたとき、売り手として、そこはかとない充足感を得られるのだ。
世代が変わり、名前が変わり、人気車や歴史のあるクルマが数多く消えていくトヨタラインナップと比較して、BMWの姿勢は創業当初から一貫しているように感じる。
良いクルマを作るという点では、日本メーカーも欧州メーカーに負けないクルマづくりができていると思うが、想いのこもったクルマを作るという面では、まだまだ及ばない部分も多い。
3シリーズのように、メーカーの伝統の重さや、ファンの期待を背負ったクルマの販売を続けることが、当時は一つのゴールだと思っていた。
「(他社の)このクルマを作るなら(売るなら)、我々ならどうするだろうか」と常に考えながら製造・販売することは、各メーカーを強く大きくする方法ではないかと筆者は考える。
もしも、商談中にライバル車の話をして、「あのクルマいいですよね、私も売りたいですよ」などと切り返す営業マンがいたら、日本車の未来を明るくするために、その場でじっくりとクルマ談義をしてもらいたい。
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