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 ただでさえ少子高齢化が進む日本ですが、ドライバー不足のトラック業界ではさらに高齢化が進んでいます。

 厚生労働省の令和2年のデータによると、全産業の就労者の平均年齢が43.2歳なのに対して、中・小型トラックの運転手は46.4歳でプラス3.2歳、大型トラックの運転手に至っては49.4歳とプラス6.2歳もの開きがあります。

 「いつまでも若くありたい!」は、大多数の人の偽らざる願望だと思いますが、残念ながら少子高齢化の時代にあって、「年を取ったな~」の溜め息はますます世の中に横溢する寸法でございます。

 ずいぶん前から「トラックドライバーの高齢化が進んでいる」なんていわれるいっぽうで、ドライバーさん自身の感じ方はあまり伝えられて来ませんでした。これはぜひ知りたいものです。

 ネガティブなエピソードが多いかもしれませんが、「年を取って人間が丸くなった」なんて言い方がありますから、良いこともあるかも……。

文/かんちゃん・ヒロシ・尾山ママ 写真/トラックマガジン「フルロード」編集部・他
*2018年6月発売トラックマガジン「フルロード」第29号より


体力的にはジワジワと忍び寄る「寄る年波」/かんちゃん

 北海道でバルクトレーラなどの運転をしているかんちゃんと申します。

 最近、「年を取ったな~」と思ったこと……。昭和44年式の私ですから、そりゃもう!!

 まず精神的なことでいうと、運転中に事故になりそうな行為をされた場合です。若い頃は怒りが先に来て、車内で怒鳴ったり、トラックは悪くないのにトラックのハンドルをぶっ叩いたりして、とにかく怒りがおさまらない状況でした。

 しかし、最近は同じような場面に遭遇したとしても、まずは「うわぁ~、ぶつからなくて良かったぁ~」と思うようになりましたね。

 そしてその後に「いやぁ~、ビックリした!」と驚きがきて、最後にジワジワと怒りが込み上げてくるのですが、その頃には現場から遠ざかっていたり、相手が居なくなっていたりで、自然と怒りも収まります。

 きっとこれも年を取って性格や気性が丸くなってきたってことなんでしょうね(笑)。

 あとは体力的なことですね。やはり40歳を過ぎたあたりから筋力は確実に落ちています! 持久力はそんなんでもないのですが……、手積み手降ろしのような筋力を使う仕事が本当に苦手になり、逆に長時間の運転が楽になって苦痛を感じなくなってきました。

 それに北海道や東北では冬季の雪道は避けて通れないのが現状ですが、年を感じるのは歩き、歩行です。

 40歳まではどんなにツルツルなところでも、バランスを崩しても転倒することは無かったけれど、40歳を超えると1シーズンに2回ほど転ぶようになり、直近では1シーズンに3回も転び、その内1回は肋骨にヒビが……(泣)。

 おそらく若い頃は筋力もあり関節もしなやかで、バランスを崩しても簡単にリカバリーできていたんでしょうね。肋骨にヒビが入った時は、地面が凍っていたこともありますが、足が滑って身体が宙に浮き、背中の左側で着地!

 背中は痛いわ、息ができないわで悶絶してしまいました(泣)。

 その時に思いましたね! 私は諦めが悪くて、知らず知らずのうちに、まだまだ自分は若いんだと思い込んでいるんだと……。とりあえず諦めて「自分も年なんだ」と認めて行動しないから痛い目にあうと……。

 会社では、気がついたら自分より勤務年数の長い方は数人しか居なくなり、社内でもジジイの部類に入ってきていることを最近認めました(汗)。

 それでも去年からスクワットを1日に15回×5セットしていて、まだまだ諦めの悪い、かんちゃんでした(笑)。

ますます進むトラックドライバーの高齢化! いったい当人はどう感じているのでしょうか?
年々トラックドライバーの高齢化が進んでいる

超ポジティブシンキングで気力体力ともバリバリの現役!/ヒロシ

 北九州を起点に大型トラックで超長距離の仕事をしているひろしです。

 僕は40代半ばですが、正直「年を取ったな~」と感じたことは一切ありません!

 気の持ちようで若さは保てると自負しているので、気力体力、まだまだバリバリの現役です。じゃあどうやって気持ちを保つのか!? 簡単なことです! 年齢を意識しないことです!

 僕の友人が、よくこんな発言をします「もう若くないけ……」、「もうそんな年やないけ……」その発言自体がネガティブそのもの! 僕には意味がわかりません。

 ネガティブな考えを持つと気持ちも落ちていきます。友人の発言に対して、いつも僕が発する言葉は「なにをするにも年齢は関係ないやろ!?」です。年齢を意識することによって自分自身の行動力が消極的になる気がします。

 僕は自他ともに認めるポジティブシンキングですが、長距離運転手はポジティブじゃなければ勤まらない仕事だと思っています。年がら年中、ほぼ1人で過ごしますし、1人の時間が長いぶん、悩みごとなど考え出すとキリがありません。

 その時にネガティブ思考だと、どんどん気持ちが落ちていって仕事に支障をきたし、それが事故などに繋がりかねません。

 年齢で体力が落ちたなら、体を動かして体力低下を防ぐとか、対処法はいくらでもあると思います。気力体力の低下を年齢のせいにするのは簡単ですが、気力体力を維持するための努力と工夫も大事です。

 なので、自分自身の気の持ちようで、年齢を意識せず、若さは保てると思っています。

 しかし、気の持ちようではどうにもならないこともあります。唯一、僕が年齢を意識するのは老眼です……。いや、若干老眼気味になってきたことです。

 これも自分ではわかっていますが、認めていません……。なので、あえて「老眼」ではなく「老眼気味」と訂正してしまいました。

 年2回行なわれる会社の健康診断での視力検査では、安定の「2.0」なのが自慢です。遠くもばっちり見えますし、長距離で深夜帯も運転していますが、夜でも対向車のナンバーが読めるので動体視力も優れていると思います。

 遠いところに関してストレスはありません。 しかし、近いところのピントが……。伝票に記載された住所など近くの文字が読みにくくなってきました。40代も半ばに差し掛かってきたので、老眼(気味)なのはしょうがないのかな!? と思っています。

 何度も書きましたが、気の持ちようで若さを保っているつもりなので、これからも老いに逆らいながら、まだまだ現役で仕事を続けていきたいと思います。

昔の自分じゃないことを痛いほど実感/尾山ママ

 アルツハイマー型認知症の母の介護をしながらのダンプ運転手……。

 もう終いには介護離職が頭をよぎりましたが、親身になって相談に乗ってくださったケアマネージャーさんと施設の方のお陰で、無事に特別養護老人ホームに入所することができて、仕事も辞職せずにすみました。

 子供に手が掛からなくなったら、次は親が待っているんだな、と実感しました。

 自分が親の年齢になった時に子供に迷惑を掛けないように考えておかねば! なんてことを言っても、もう私自身が若いワケではなくて、すでにオバチャンですから、それなりに(?)老化現象は目に見えて起こってきています。

 世間一般でもよく耳にするのが物忘れ。というよりは、端から覚えていないと言ったほうが正確かもしれませんね。もしかしたら私も認知症か?

 そんな私ですが、昨年、ダンプをやめてスクラップトレーラに転職しました。昔勤めていた会社の運転手から声が掛かり、13年ぶりに戻ることになりました。皆知らないよねぇ、私がいつまでも元気でバリバリじゃないことを!

 でも、なんたって住宅ローンが残っていますから、生きている内はバシバシ働かなくてはいけません! 気持ちだけは若いつもりです。

 けどねぇ、大型トラックの運転席ってこんなに高かったっけ? もう、「乗る」というより「登る」という感じ。

 トレーラに戻ってすぐに、運転席から降りる時にステップを一段踏み外して、ハンドル横の持ち手にぶら下がってしまい、左手首~肘にかけて負傷してしまいました。どうやら頭が思っている通りの動きを、体ができなくなっている模様です。頭と体が別物ですね。

 昔、ガラ屋(解体ガレキ)のダンプに乗っていた頃……。そこは爺さんばかりのダンプ屋でした。ガラ屋は建物の解体現場で真っ暗な建屋の中へバックで入って行くことも多いのですが、無線で爺さん達が「見えねえ、見えねえよ!」と騒いでいました。

 でも現場でよく使われている提灯ライトは置いてあるんですよ。当時の私は「見えないって何?」と理解できませんでした。が、今になってわかるようになってしまいました。

 私は、視力は悪いほうではなく、メガネ使用でもありませんが、暗いと見えないんです。昼間でも見えないもんだから、夜はもっと見えません。

 先日、解体現場で左バックして向きを変えるため、降りて後ろを確認してきたのに、クルマに乗ってミラーを見てもよく見えなくて、ゆっくり下がって行ってから見えた、なんてことがあり、あの時に爺さん達が言っていたことが理解できました。

 また、遠くは見えるけど近くが見えない。老眼鏡を使用しています。初めて行く現場とか、昔は地図帳見ながら走れたのに、今は老眼鏡をしないと見えないので、走りだす前に頭の中に叩きこんでから走るとか……、あとはメガネなしで見える大きさで自分で地図を書いておくことです。

 スクラップは積み降ろしの時に、両サイドのタイヤにパレットやコンパネでカバーをするのですが、重たいのなんのって! 大型ウイングに乗っていた時は飲料やら家電やらをバラ積み降ろししていて、女にしては力持ちのはずなのに、動かすのがやっと。

 どうやら普通の女になったみたいですね。昔、「お前は普通のオバチャンにはなれない!」と言われてましたけどね、なれました。ま、体形はオッチャンですけどね。

 体力的なことばかりでなく、子供から「やる気が空回りしている」と言われるほどやる気満々だった私が、「できる範囲でやってればいいんじゃね?」と、まあ気持ちが萎えてしまっている今日この頃です。

 そして、瞬間湯沸かし器だった性格も穏やかに(?)なり、あまり怒ることが無くなり、心に余裕ができたのかな? 右折車がいれば譲ってやり、左の路地から出るクルマがあれば入れてやり、横断歩道に人がいれば停まってやり、これを人間が丸くなったというのか?

 昔は無理な配車をされては配車係に蹴りを入れていたのが、「子供と同じ年頃やないかーい」と、どうやら親目線になったのかもしれませんね。

 以前スクラップ屋に入った子がすぐいなくなって、聞いたら「遊ぶ時間が無いから」って。確かに労働時間長いですからね。若手を増やすには、休日をしっかり取れて、決まった時間内の勤務でないとすぐ辞めちゃうから。そこから直していかないと。

 あ~、でも若い子が入ってきたら、婆さんは肩叩かれちゃうのかな? いや~、まだまだ若いもんには負けないから!

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