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石川県知事選(3月13日投開票)に立候補中の前金沢市長、山野之義氏の陣営が、公職選挙法で規定されたポスターのサイズを順守せず、県選挙管理委員会に違反部分の補修を報告していたことが7日、わかった。

陣営はすでに補修を終え、選管に対し「すべて完了した」と報告したというが、選挙法務に詳しい専門家が「あり得ない基本的なミス」と驚くほどの内容で、保守系の有力3候補など過去最多の5人が激しく競り合う知事選の終盤戦に思わぬ形で水を差している。

激戦の石川県知事選。右下の山野氏が問題のポスター(提供写真)

ポスターのサイズ規定違反

県選管によると、知事選告示から2日後の2月26日、山野陣営から選挙ポスターを「補修したい」との申し出があった。

公選法では、選挙運動用のポスターのサイズは縦の長さが42センチ以内、横幅が30センチ以内とそれぞれ規定しているが、衆院選小選挙区、参院選の選挙区、そして知事選の候補者については、個人演説会の告知用のポスター(縦の長さが42センチ以内、横幅が10センチ以内)と合わせたサイズ(42×40を作成できる。

しかし、山野陣営が告示後に貼ったポスターは、個人演説会の告知の記載がないにもかかわらず、サイズは42×40になっていた。陣営は、外部から違反しているとの指摘を受けたようで、選管に報告。個人演説会の告知部分を記載したシールを貼って急遽対応したが、全県規模で行う知事選だけあって、県内に3000か所以上ある公営掲示板に全て貼り出した後だった。選管への報告では、3月6日までに補修を終えたとしている。

だが、すでに選挙戦で半分以上の期間が経過し、期日前投票の同日までの投票者数は約11万2051人と前回より2倍近くに増加。補修が遅くなったポスターはその間も違反状態で張り出され、投票した人がいたことにになる。

自治体などで選挙法務に長年携わってきた第三者の専門家は匿名を条件に取材に応じ、「ポスターに記載が義務付けられている掲示責任者の記載漏れは稀にあるが、今回のようなケースは聞いたことがない」と呆れ気味に話す。

Before(修正前)

6日午前、補修前の山野氏のポスター。上の対立候補は個人演説会の記載があるが、山野氏にはない状態が続いていた(撮影日:提供写真)

After(修正後)

7日撮影の山野氏ポスター。個人演説会の告知を記載したシールが貼られていた(提供写真)

陣営は言葉少な、警察に通報する人も

山野氏は金沢市議を4期、市長も4期務めたベテラン政治家だが、この専門家は「基本のキとも言えるミス。候補者本人は政治経験が豊富で、すばらしい人かもしれないが、支える周りのスタッフのミスや知識不足でケチがつく結果になる」と手厳しい。

一般の有権者にとってはポスターのサイズ規定のような細かい話は関心が薄いかもしれないが、当該の規定(公選法243条)に違反し、有罪が確定した場合、公選法では「二年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する」と明記している。前述の専門家は「選挙はある意味で戦争。こうした瑕疵はあってはいけないし、公職の候補者になるだけあって積み重ねが問われる」と話す。

山野陣営の選対責任者はサキシルの電話取材に対し、「もう終わっていることなので。シールを貼って選管からOKももらった。急ぎの用があるので切らせてもらう」と述べるにとどめた。知事選を取材する新聞、テレビの中には、この違法ポスターの存在を把握している社もあるが、記者クラブメディアのお約束で、報道した場合の選挙戦への影響を憂慮して尻込み。選挙後まで静観を決めている模様だ。

先週末、この違反の事実を知った県内在住の男性は、選管や県警本部、県内11か所の警察署など関係機関に通報。「まだ選挙中とあって動きが鈍いが、違法状態が続いていたのは明らかな事実で取り締まるべきだ」と主張している。

石川県知事選は、山野氏のほかに届け出順で、新日本婦人の会県本部会長の飯森博子氏(共産推薦)、前参院議員の山田修路氏(立民県連推薦、自民県連支持)、元文科相の馳浩氏(維新推薦、自民県連支持)、元会社員の岡野晴夫氏の無所属5人で争われている。当選者は28年務めた現職、谷本正憲知事の後継になる。