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 欧州マツダが3月8日に新世代のラージ商品群第1弾モデルとなるSUV、CX-60を発表することをアナウンスしている。欧州や日本でも導入が予定されているモデルだ。

 マツダによれば、「電動化が進んでいる欧州には、直列4気筒ガソリンエンジンとモーター駆動を組み合わせたプラグインハイブリッドを中心に、新世代ガソリンエンジンのSKYACTIV-XやクリーンディーゼルのSKYACTIV-Dを直6化し、48Vのマイルドハイブリッドシステムを組み合わせる。クリーンディーゼルエンジンの人気が根強い日本では、直列6気筒のSKYACTIV-Dと48Vマイルドハイブリッドの組み合わせやプラグインハイブリッドなどを導入していく」とのこと。

 このCX-60をはじめとするマツダのラージ商品群戦略は果たして成功するのか否か、国沢光宏氏が分析する!

本文/国沢光宏、写真/マツダ、メルセデスベンツ、BMW、ベストカー編集部

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■エンジン搭載を前提に6気筒まで用意に驚き!

欧州マツダですでに公開されているCX-60PHEVのティザー画像。3月8日(現地時間)に正式に世界初公開される予定だ。2.5L直4エンジンにモーターを組み合わせ、300ps以上のパワーを発揮するという

 今年、マツダは生き残りを賭けた大勝負に出る! いわゆる「ラージ商品群」と呼ばれるフロントエンジン後輪駆動車のラインナップを展開していくのだった。

 環境問題をクリアしなければならないタイミングで、エンジン搭載することを前提とした新しいプラットフォームを出すというメーカーは世界規模で存在しない。マツダ以外の新世代モデルを見ると、すべて電気自動車用です。

 もちろん、マツダのラージ商品群にも電池を搭載するPHVは存在するようだけれど、エンジン搭載が前提。アメリカや日本市場向けに、直列6気筒まで準備しているというから驚く。

 そして完全なる電気自動車を作る計画を持っていないようだ。世界の流れからすれば完全に明後日の方向です。TOPバッターとなるCX-60の分析などしながら、マツダの狙いについて考えてみたい。

 CX-60というモデル、Dセグメントに属すCX-5より大きい数字が使われていることから推測できるとおり、アッパーミドル級のクルマになる。イメージからすれば後輪駆動のプラットフォームを使うBMWのX3やメルセデスベンツGLCクラス。全長4700mm級×全幅1900mm級だ。エンジンラインナップでいうと、2L4気筒から3L6気筒といったあたり。500万円以上になること確実。

メルセデスベンツGLCクラス。DセグメントSUVとして上級志向のモデルだ
こちらは昨年10月にマイナーチェンジを受けたBMW X3。デザインが最新のBMWのテイストのものに改められている

 現在、確認されているパワーユニットは欧州が2500ccのPHVになるようだ。そのほか、ラージ商品群で考えると、日本やアメリカ向けに2500ccの4気筒ガソリン、3000cc直列6気筒ガソリン、3300cc直列6気筒ディーゼルなどもラインナップされている。なんで欧州は4気筒PHVかといえば、「CAFÉ」(企業平均燃費)という燃費規制をクリアしなければならないからにほかならない。

 トヨタのように燃費のいいハイブリッドをたくさん持っているメーカーはCAFÉ2021年規制で求められる走行1kmあたり二酸化炭素排出量95g(おおよそ24km/L)クリアも容易。しかし、マツダのような電動化に遅れを取ったメーカーにとって厳しい。1g増えるごとに1万2000円の罰則金を取られるため、車両価格に上乗せしなければならない。価格競争力を失うワケ。

■CAFÉをクリアできるマツダのパワーユニットはPHVだけ?

 違う観点で見ると、ラージ商品群でCAFÉ2021をクリアできるパワーユニットは、PHVだけしかないということになる。当然ながら欧州での頒価も高額。日本だとあまり知られていないことながら、欧州って同じボディサイズであっても、アウディやBMWを買う層と、オペルやフォードなどを買う層は違う。マツダというメーカー、どちらかといえば後者と同じブランドイメージです。

 そこにBMWやメルセデスに近い価格帯のクルマを出すというのだから、ハードルの高いビジネスになることは間違いない。エルメスやヴィトンのバッグに、エルメスやヴィトンのクォリティを目指して開発した日本製のバッグで勝負をしようということ。

 しかもマツダ、予算不足でブランド作りをまったくしてこなかった。お金に余裕のない高級ブランドって、その時点で厳しいと私は思う。

 もちろんモータースポーツで勝ちまくっているとか、燃費のいいクルマをたくさん出しているなど文化&文明的な魅力あれば別ながら、ラージ商品群の武器を見ると、後輪駆動ということくらいしか考えられない。

 もっと言えば、欧州市場はカンパニーカー制度。日本で言えば住宅手当のようなもので、会社から支給される。ここにきてカンパニーカーは電気自動車がメインです。

■CX-60を買う明確なユーザー層がイメージできない……

 ということで、欧州でCX-60をどんな人が買うのか、私だとイメージできない。BMWやメルセデスを買っている人たちがマツダを買うなんてあり得ないです。今までマツダを買っていたユーザー層からすると、高額過ぎて手が出ない。カンパニーカーとしては、そもそも不利な日本車ということだけでなく、企業イメージ向上に直結する電気自動車でもないから難しい。

 欧州、厳しいと考えます。じゃ日本ならどうかというと、3300ccの直列6気筒ディーゼルがメインになるだろう。間違いなく頒価500万円超え。ただでさえマツダで最も売れているのはマツダ2(旧デミオ)というコンパクトカーである。そしてディーゼルエンジン車の売れゆきだって厳しい。ディーゼルエンジンを積むマツダ車に500万円以上出そうというユーザーがどれだけいるだろうか?

 成功する可能性があるとすればアメリカくらい。3000ccの直列6気筒ガソリン車の走りがパワフル&ファンタスティックなら、ある程度売れるんじゃなかろうか。ただ、アメリカも日本車のお得意さんである西海岸と東海岸は電動化が重要になってきている。イマドキ直列6気筒で勝負できるか疑問。

北米市場には昨秋公開されている写真のCX-50が投入される

 以上、厳しく評価したが、クルマは実車を見て評価したい。ニューモデル、CX-60の試乗を楽しみにしています。

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