レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、2018年末にチーム離脱を決めたダニエル・リカルド(現マクラーレン)について、当時彼を取り巻いていた状況を語った。
リカルドは、レッドブルの育成プログラムを自力で駆け上がってきた。2011年に、短命に終わったHRTチームからイギリスGPに参戦してF1デビューを果たした後、2012年にトロロッソのシートを獲得した。
2014年に、同胞マーク・ウェーバーの引退を受けてレッドブルに昇格し、当初はセバスチャン・ベッテル、次にダニール・クビアト、さらに2016年からはマックス・フェルスタッペンと組んでレースを戦った。しかし、フェルスタッペンが成功を収めるにつれてチームは彼を開発作業の中心と位置づけるようになっていった。リカルドは、ミルトンキーンズにおけるこうした状況への不満から、他のチームへ移ることを決めたようだ。
2022年F1第3戦オーストラリアGPを翌週にひかえたホーナーが、今週末『The Weekend Australian』紙に対して「ダニエルは、マックスがチームで支配的なポジションに立っていく様子を見て、自分はセカンドドライバーになりたくないと考えた」と語った。
加えて、ホンダとエンジン供給契約を結ぶというリスキーな賭けに出たチームで、リカルドは長く続いているルノーとのつながりを壊したくないとも考えていたが、その後ルノーがぎりぎりの戦いを続ける一方で、ホンダはレッドブルに期待どおりの成果をもたらすこととなった。
「彼の移籍タイミングが悪すぎたと言えるが、それは当時彼がホンダのエンジンに懸念を持っていたからだ」とホーナーは述べた。
「その後、(ホンダは)競争力のあるパワーユニットであり、レースに勝てるパッケージであることを実証した」
ホーナーによれば、当時リカルドとの契約延長に向けて高額のオファーを提示していたチームは、彼の残留を確信しており、ルノーへの移籍を知って驚いたという。
「我々は非常に高額のオファーを出していた。ダニエルは素晴らしいドライバーだ。彼がチームを離れると決断したことを知り、悲しい気持ちになった。そして、残念ながら物事は彼が思い描いていたほどうまくは運ばなかったのだ」
ルノー移籍後最初のシーズンは、リカルドにとって期待外れの内容に終わった。その後、彼はマクラーレンへ移ってランド・ノリスと一緒に走るという契約を受け入れた。2021年のF1第14戦イタリアGPでは予想外の優勝を飾ったものの、ここでも彼は悪戦苦闘を強いられた。
リカルドが突然離脱したことで、レッドブルはフェルスタッペンと組んで走るセカンドドライバーの確保に苦労している。最初はピエール・ガスリー、次いでアレクサンダー・アルボン、さらに2021年からはベテランのセルジオ・ペレスがそのシートに座っている。それでもホーナーは、リカルドに敬意を持ち続けているようだ。
「彼には天賦の才があり、また広い心がある。もちろん今は競争力の高いチームメイトもいる。彼にとっては厳しい時期であり、苦しんでいるだろう」
新型コロナウイルスの陽性反応が出たためバーレーンで行われたプレシーズンテストを欠席したリカルドは、開幕2戦を終えてまだポイントを獲得できていない。マクラーレンも開幕戦バーレーンGPでは苦戦し、第2戦サウジアラビアGPではリカルドが乗った2022年型マシン『MCL36』が決勝レース中盤で停まってしまった。
今週になり、チームにとって苦戦の先に光が見えるかどうか問われたリカルドは、以下のように答えた。「見えなければいけないよね」
「僕たちはそこへ向けて努力している。実際に光が見えてくるまで、みんなで頑張るつもりだよ」
「今はそのために多少のプロセスが必要なときだ。一夜にして変わるようなものではないからね。1週間で実現できるような変化ではない」
「けれど僕たちは今後トップ5に入れるような、より大きな変化を起こすことを目指しているんだ」