2022年F1第2戦サウジアラビアGPのレース中盤以降、優勝争いはセーフティカーのタイミングで首位に浮上したシャルル・ルクレールと、2番手マックス・フェルスタッペンに絞られた。レース後半に入るとトラブルなどでリタイアするクルマが増え、それによるVSCや黄旗が各車の状況を左右する展開に。サウジアラビアGP後半を無線とともに振り返る。
────────────────────
レース中盤以降は、優勝争いは完全にシャルル・ルクレール(フェラーリ)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)のふたりに絞られた。ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)のクラッシュによるセーフティカー(SC)導入中、ジャンピエロ・ランビアーゼはさかんにフェルスタッペンに声をかけた。
ランビアーゼ:フロントブレーキの温度に注意だ
ランビアーゼ:いいぞ、いい感じに(ブレーキが)温まってる
ランビアーゼ:直線で一度ブレーキを踏むんだ
ランビアーゼ:この周回で再スタートだ。スタートの際には、リチャージはオフだからな
ランビアーゼ:一応繰り返すけど、(SC)ラインまではオーバーテイクはできない
21周目、レースが再開された。
(21周目)フェルスタッペン:ルクレールは、白線踏んでるぞ
ピット入口の白線を言っていると思われるが、審議される様子はない。レース再開後、DRSを使っても、仕掛けるまでにはいかない。そのせいか、フェルスタッペンの声には少し苛立ちが感じられた。
(26周目)フェルスタッペン:(ルクレールに)ついていくのがすごく大変だ
ランビアーゼ:わかった。右フロント(タイヤ)に注意しろ
フェルスタッペン:ルクレールは、白線踏んでるぞ
ランビアーゼ:了解した
ランビアーゼ:ルクレールの速いのは、ターン6、7、8だ
(27周目)サインツ:ミスシフトが出てる。何だかわからないけど
リカルド・アダミ:チェックする
クリス・クローニン(→ニコ・ヒュルケンベルグ):次のSCが出るまで、伸ばせるだけ伸ばす
その思いは、まだスタートタイヤで走り続けて6、7番手まで順位を上げていたルイス・ハミルトン(メルセデス)、ケビン・マグヌッセン(ハース)陣営も同じだろう。
トップ争いは膠着状態。フェルスタッペンはなかなかDRS圏内まで近づけない。
(33周目)ランビアーゼ:タイヤを使わせよう
35周目、マグヌッセンを抜き去って7番手に上がり、絶好調のアロンソがスローダウン、そのままリタイアを喫した。
(35周目)アロンソ:ノーパワーだ
頭を抱えるオットマー・サフナウアー新代表。続いてダニエル・リカルド(マクラーレン)も止まってしまう。
リカルド:駆動系がない。加速しない
さらに9番手まで上がっていたバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)も、異常を感じて35周目にピットイン。そのままリタイアと、レース後半になってレースは大荒れの展開となった。
これでバーチャルセーフティカー(VSC)が出た。マグヌッセンとヒュルケンベルグは、その直前の37周目にピットに入っている。
この時点で唯一、1回もタイヤ交換していないのは、15番グリッドから6番手まで這い上がってきたハミルトンだけだった。このタイミングでピットインすれば、さらなる飛躍も可能だ。
(38周目)ピーター・ボニントン:セーフティカーウィンドウに入ってるが、ピットレーンが閉まる恐れがある。
ハミルトン:(そうなったら)すぐに知らせてくれ!
ボニントンの危惧通り、アロンソがピット入口で止まったため、ピットレーンは閉まってしまった。
ボニントン:ボックス、ボックスだ!
このピットインの指示が出た時点では、まだピットレーンは開いていたということか。
(38周目)ハミルトン:クルマがスローダウンしてる
ボニントン:ボックスだ
ハミルトン:遅いよ!
ハミルトンがようやくピットインできたのは、それから2周後の40周目。ジャンプアップを狙うつもりが、12番手まで後退してしまった。41周目にVSCが解除され、レース終盤はルクレールとフェルスタッペンの息詰まる首位争いとなった。
(44周目)フェルスタッペン:また白線超えたぞ!
ランビアーゼ:了解した。こちらも見た
そう答えた後、ランビアーゼはレースに集中するよう、フェルスタッペンをたしなめた。
ランビアーゼ:冷静になるんだ。自分たちの仕事をしようじゃないか
(48周目)ランビアーゼ:(ルクレールとの)ギャップは、コンマ8秒だ
ランビアーゼ:燃費は問題ない。思い切り行け
ランビアーゼ:コンマ7秒。パープルラップ(最速ペース)だぞ
フェルスタッペン:あと何周だ!
ランビアーゼ:3周だ
(49周目)ランビアーゼ:コンマ5秒だ
フェルスタッペンは47周目のメインストレートで、DRSを使って首位を奪っていた。ルクレールは首位奪還のチャンスを狙っていたが、49周目にアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)がランス・ストロール(アストンマーティン)と接触し、ストップ。これでセクター1に黄旗が出たために、メインストレートでDRSが使えなくなってしまう。
しかし最終ラップの50周目、DRS使用可能になった。フェルスタッペンは0.549秒差で逃げ切って、今季初優勝を果たした。喜びまくるフェルスタッペン。敗れたとはいえ、フェアなバトルを堪能したルクレール。一方で、不運と不振に泣いたペレスとハミルトン。4人のトップドライバーの明暗がはっきりと分かれたレースだった。
フェルスタッペン:やったぜ! いや〜、よかった
ランビアーゼ:本当によかった。2022年が、ようやく始まったね
クリスチャン・ホーナー代表:なんて、きわどかったんだ!素晴らしい仕事だ、マックス
ルクレール:マックス、よくやった。素晴らしかったよ。僕らはストレートスピードが、ちょっと足りなかったね
バード:めちゃくちゃ悔しいよ。本当に不運だった。でもマックスは、ルクレールをやっつけた
ペレス:ああ〜XXXX。でもマックスは、やってくれたね。
ホーナー代表:チェコ、本当に残念だ。あそこでセーフティカーが出さえしなければね。でも素晴らしい週末だったぞ
ペレス:みんな、よくやってくれた。チームにとっては、素晴らしい結果だ
ボニントン:10位だ。こんな結果で、申し訳ない
ハミルトン:その順位でも、ポイント貰えるの?
ボニントン:ああ、1ポイント獲れたよ
ハミルトン:そうか。みんな、ありがとう