静岡市の髙橋ボデーが販売するライブボトムトレーラは、カナダのトラウトリバー社が製造する主に土砂運搬用の特殊トレーラである。
最大の特徴は、荷台フロア部に頑丈なベルトコンベアを搭載しており、それを使って荷降ろしを行なうという点。国内の土砂運搬ではダンプが絶対的王者として君臨しているが、ライブボトムトレーラは荷台をダンプアップさせずに荷降ろしができ、横転リスクが少ないことなどが強み。
今後、市場で存在感を発揮していけるか注目の存在だ。今回は同車両の記念すべき国内第1号車のレポートをお届けしよう。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部、髙橋ボデー
※2021年12月10日発売「フルロード」第43号より
ライブボトムトレーラを日本で販売する理由とは?
トラウトリバー社は、カナダの東海岸に浮かぶプリンスエドワード島を本拠地とする特装車メーカー。荷台フロア部に搭載するベルトコンベアで荷降ろしを行なう特装車が専門で、同分野ではカナダ最大手に君臨するという。
いっぽう髙橋ボデーは、ダンプ、スクラップ運搬車、脱着ボディ車など特殊なトラックボディを得意とする架装メーカー。油圧とスウェーデン鋼の取り扱いを得意とし、新明和工業、フジタ自動車工業、スウェーデンスティール社と契約を結んでいる。
両社は2019年、パートナー契約を締結。これは日本進出にあたって油圧とスウェーデン鋼のノウハウを持つメーカーを探していたトラウトリバー社と、長年ダンプ以外の土砂運搬用車両を探していた髙橋ボデーの思惑が一致して契約が実現したもの。
髙橋ボデーがダンプ以外の土砂運搬用車両を探していた理由は、ダンプは荷台をダンプアップさせる時に横転するリスクがあるからで、ライブボトムトレーラはそのリスクがなく、また荷降ろしスピードもダンプと遜色ないことから「ぜひ使ってほしい」として契約を結んだのだという。
なお、販売は髙橋ボデーのほか、岡山県倉敷市の山田車輌も協力。髙橋ボデーが車両仕様の決定、発注、輸入、販売の全体を担当し、山田車輌は日本全国で展開する中古トラック販売ネットワークを活かして広域での販売サポートを行なうという。
幅広い積み荷に対応する独自のベルトコンベア
ライブボトムトレーラの日本仕様は、カナダ仕様をベースに、寸法や車軸バランスを最適化したもの。車両寸法は全長9810×全幅2500×3170mmで、連結全長は約13m。取材車両(土砂運搬用)は最大積載量28000kgである。
バスタブのような形状にちなんで「タブ」と呼ばれる荷台はスウェーデン鋼(耐摩耗鋼板)製で、荷台フロア部にベルトコンベアを搭載。積み荷の種類は幅広く、土砂、砂利、アスファルトなどの建設資材、鉄鋼原料、チップ、産業廃棄物などに対応する。
具体的には、6インチ(約151mm)以内のバラものならほぼ何でも運べるが、金属スクラップなどの鋭利なものはベルトが傷付くためNGだ。
操作は簡単で、本体もしくはスマホアプリから操作可能。どちらの方向にも回転できるので、積み込みにも荷降ろしにも使用可能。また、駆動用チェーンに自動給油を行なうシステムも内蔵されているので、基本的にメンテフリーで使用できるのも魅力だ。
いっぽう「ボギー」と呼ばれるフレーム部もスウェーデン鋼(高強度構造用鋼板)製。荷台締結は走行中のねじれに強いという独自のボルト締結式を採用。車軸はSAFホランド社製で、エアサス/リフトアクスル/ワイドシングルタイヤ/ドラムブレーキの組み合わせだ。
なお、ワイドシングルタイヤは455/55R 22.5を標準装備。これだけでもダブルタイヤと比べて1軸あたり約60kgの軽量化となるが、さらなる軽量化のため385幅も検討中。また、このほかにも日本仕様ならではの改良を順次行なっていく方針という。
もう1つのライブボトムトレーラとは?
髙橋ボデーが販売するトラウトリバー社製トレーラのうち、主に土砂運搬用として販売されているのがライブボトムトレーラだが、実は「もう1つのライブボトムトレーラ」も日本市場に導入されている。それがハイキューブトレーラだ。
ハイキューブトレーラは、いわばライブボトムトレーラの高容積仕様。比重の大きい土砂を運搬するため規制に合わせた荷台容積で設計されているライブボトムトレーラに対して、ハイキューブトレーラは比較的比重の軽い積み荷を想定。深アオリ仕様となっている。
基本的な構造は共通で、荷降ろしは荷台フロア部のベルトコンベアで行なう。ただし、駆動用モーターはライブボトムトレーラの1基に対し、ハイキューブトレーラは2基を搭載。チェーンも強化タイプとされており、より大容量の輸送に対応している。
積み荷は産業廃棄物のほか、ウッドチップ、ペレットなどを想定。こちらも第1号車が完成し、すでにユーザーのもとで運用が始まっているところだ。
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