2022年3月28日現在、軽油1Lの全国平均価格は153.7円。とんでもないことになっています。
全日本トラック協会などは燃料価格の上昇分を別だての運賃とする「燃料サーチャージ制」導入などを求めていますが、実現した例は少ないのが現状ではないでしょうか。
運んでナンボのトラックドライバーとしては「あまり気にしていられない」というのが正直なところかもしれませんが、今般の燃料高騰は、ドライバーの給料・待遇から会社の経営にも影響が及びかねない深刻な事態です。
そこでトラックドライバーさんに単刀直入に「省エネ運転をしていますか?」と聞いたところ、興味深い声が集まりました。
文/渚・涼のパパ・幸恵・ヒデ 写真/トラックマガジン「フルロード」編集部・他
*2022年3月発売トラックマガジン「フルロード」第44号より
テキパキ仕事をこなすことも大事なのでは?/渚・涼のパパ
大阪で海コン運転手をやっています。「省エネ運転していますか?」とのことですが、結論からいうと「あまりしていないなぁ」になります(苦笑)。
私の勤務する会社では、エコドライブ競争を行なっており、トレーラ部門では、デジタコの点数と1L当たり3.1kmの燃費をクリアすると、1年ごとに3~5万円が貰える仕組みになります。
これを狙おうとすると、急発進や急停車は厳禁、坂道でアクセルを強く踏み込むのもダメで、高速道路は時速75~80kmの一定走行が大事になります。無駄なアイドリングも厳禁です。
ハードルは高いのですが、賞金を貰うドライバーはほぼ決まっており、このことを踏まえると、ヘッドのメーカーや荷物の重さによって燃費の良し悪しはあるものの、「ドライバーの腕次第だなぁ」って感じます。
毎回賞金を貰っているドライバーは、「燃費の悪いクルマに乗ると、賞金貰うのは大変やで!」とおっしゃいます。それでもクリアするのだから感心します。
私は約10年勤務していますが、エコドライブ賞を頂いたのは2回です。10回中2回なので、明らかに少ないですね(苦笑)。毎回賞金をもらうドライバーの特徴は、しっかり前を見て、まわりに影響されずに運転や作業に集中しているように思います。
私はというと、基本「イラチ」(せっかち)なので、運転にムラが出たり、暑いとき・寒いときは、我慢できずにエンジンを回して、エアコンのスイッチを入れてしまいます。坂道でアクセルを強く踏むこともあります。
これではエコドライブ賞は頂けません。安全運転の観点からも、高速道路では一定の速度を保って走行することが大事になります。しかし、時速75kmで走っていると後ろから煽られたり、追い越しザマに指示器を出さずに前に割り込まれたりします(最近は減りました)。
私は以前配車係もやっていましたので立場を変えて見ると、エコドライブで1日にさばく仕事量が減ることも考えられます。
例えば、クルマを少し飛ばせば、お昼休憩前に配達先に到着し、午前中に荷降ろし完了する場合もあります。午前中に終わる・終わらないの兼ね合いで、その日の業務終了時間が大きく変わることもあります。
もちろん、それで仕事が早く終わる保証はありません。しかし、元配車マンからすると、やっぱり「手の早い」ドライバーは重宝するし、効率の良い仕事を回しがちになります。しかし、テキパキ運転するため、当然、燃費は悪化することが多いです。
エコドライブに関しては、個人で頑張るというよりは会社や部署全体として、業務の効率化の一環として捉えられていくでしょう。今後は、データに基づいた動きができる物流会社が生き残る可能性が高いと思っています。
ドライバーとしては、この辺りをどう捉えて働くか、です。エコドライブを考えずにテキパキ走って、売り上げや早い帰社を狙うのか? あるいは、売り上げを考えずに、燃料を削減したほうが利益になるのか?
うちの会社の場合は、そこはドライバーに委ねられています。
それはさておき、我が社でエコドライブ賞か始まってすぐの頃、長時間に渡りエンジンカットを行ない、体調不良でダウンしたドライバーが出ました。
また、年末シメ日に燃料ランプが付いているにも関わらず、「今日さえ乗り越えたらエコドライブ賞を貰える!」と給油せず、仕事納めにガス欠でストップするという、信じられないことをやらかしたドライバーもいました。
私は、燃料節約も大事ですが「安全運転で適切に荷物を届けること」が一番大事だと思います。エコドライブ賞がとれないひがみからくる苦しい言い逃れも入っていることは間違いありませんが……。
燃費に目覚め省エネ運転を励行中/幸恵
北九州のドレージ女子の幸恵です。「省エネ運転していますか?」ということなんですが、もちろん胸を張って「YES!」です。少しでも燃費を伸ばして会社に貢献できればと思って日々努力しています!
……っていう感じでは全然なくて、させられているっていったほうが正解かな(笑)。こんな私でも少し意識するだけで月々の平均燃費を徐々に伸ばすことに成功しました。そんな、私なりの努力について書いていきたいと思います。
まずはなんといってもコレ! 運転ではないんですが、停車中のアイドリングストップです。これはもう基本中の基本で、みなさんもすでにかなり前からやっていると思います。私もこまめに実施しています。
昔はアイドリングストップなんか考えたこともなかったし、コンビニや食事やお風呂に行っている間も、合鍵で鍵を閉めてエンジンはかけっぱなしでした。
それが今から17~18年くらい前に軽油が一気に値上がりして、会社がアイドリングや燃費のことを言うようになり、デジタコをつけて細かく管理されるようになりました。
デジタコが付いてしばらくは制限速度に急加速に回転数オーバーの警告の嵐で、しまいには「休憩しろ」とか「エンジン切れ」とか言い出したりして、「うるさい!」とか「こんなところで停まれるかー!」って毎日デジタコと大喧嘩(笑)。とにかく煩わしくてストレスでした。
それでもなんとか90点台を出せるようになり、アイドリングに関しては、もうエンジンを切らないと逆に気持ち悪いレベルに……(笑)。エンジン音がうるさく、微妙な揺れも気になって落ち着かないエコ体質にバージョンアップされました。
次に頑張っている部分は走行速度です。一車線の道路では流れに乗って走りますが、とにかく飛ばさないようにしています。左車線をテレテレ走る。アクセルを踏みたい衝動をグーッと堪え、自分の中の煩悩を全て捨てて、ひたすら左車線を走る。
あと、燃費向上だけを意識して改めたのは、排気ブレーキの使い方です。トラックに乗り出してから20年ほどは、ずーっと排気ブレーキをかけっぱなしにし、アクセルから足を離したら常に排気ブレーキがかかる状態で走ってきました。
それが燃費に悪いとか考えたことも無かったし……。けれど、「こまめに排気を切ると燃費が伸びる」と言われて、整備担当に理由を聞いてみました。
「要するに無駄なブレーキをかけて、そのぶんアクセル踏むのと同じなんです。でも排気を切っとけば、アクセルから足を離しても燃料使わずに惰力だけで進むことができるんです!!」。
なるほど、天才かよ! 40歳過ぎて初めて気付きました(笑)。早速やってみましたが、初めのうちはやっぱり右足がうずうずしています。
しかし、慣れてしまうと案外楽なもので、今では排気だけで速度の調整をして坂道を下ったり、信号が少ない道なんかは、ある程度速度に乗ってきたらあえてアクセルから足を離してまさに転がしている状態です。今はもう意識しなくても自然にやっています。
信号が赤の時もかなり手前から排気で調整し、なるべく停まらずに交差点を通過するようにしています。停まってしまうと発進時にかなりの燃料を消費するし、加速するのにも時間がかかってしまうので、転がしたほうがいいことづくし。
もちろん周りの様子を見ながら転がしたり、停まったりしていますよ。
そして、ありがたいことに最近新車を貰ったのですが、今のトラックはハイテクになっているんですね。メーターパネルの液晶がカラーだもん(笑)。そのパネルをスクロールしていくと「燃費コーチ」っていうのがあります。
私の運転を緑・オレンジ・赤の3段階で評価して、点数まで表示してくれるみたいなんです。コレもチラチラ見ながら走っています。コーチの指導の元、これからも安全運転と省エネ運転に努めていきます(笑)。
今は会社の窮状にも思いを馳せてエコ運転/ヒデ
新型コロナウイルスが猛威を振るう中でも、エッセンシャルワーカーである私達は、経済活動のヘモグロビンとなるべく、日夜駆け巡ってきました。しかし、燃料高騰など、新たな要因が運送会社の経営を逼迫しております。
私が運送業に入った20年前の軽油価格は、まだリッター80円代。物の値段は需要と供給の関係で成り立っているので致し方ない事とはいえ、昨今の燃料高騰は「これはちょっと……」という感じです。
これに伴い(日頃から気をつけるべきことですが)我々運転手は少しでも燃料を抑えるべく、エコ運転を心がけねばなりません。
会社からこれに対し特に「お触れ」が出たということはありませんが、運転を生業としている者にとって低燃費運転は非常に重要なことです。
弊社では毎月の燃費がデータとして張り出されますが、運んでいる物も違えば運行形態も一台一台全く違いますし、さらに細かくいいますと、路面状況やタイヤの仕様等も違うので、あくまで参考程度に考えています。
例えば、周りからは同じような仕事に見えても輸出入コンテナ輸送に携わっているクルマと、内航フェリー輸送のクルマでは違います。
コンテナ輸送では港内でコンテナをヤードからピックする際などに順番待ちが発生します。大型店舗の渋滞と同じように徐々に前に進んで行きますので、必然的にストップアンドゴーの繰り返しになり、燃費は自ずと悪くなっていきます。
また、ピックしたコンテナは荷主の元に運ばれるのですが、行き帰りどちらか片方は必ず空車になります。
いっぽう、内航フェリー輸送等においては、「並び」というのは無いので港で台車を繋いだら荷主の元へ向かいます。荷降ろしを終えたら帰り荷を積んで港へ戻りますので、基本行き帰り実車ということになります。
こういった仕事の形態が違いますので、同じようなトレーラでも比べるのは酷というものです。なので、人と比べるということに関してはあまり意識しなくても良いと思っています。
自身の仕事内容を客観的に見たうえで、低燃費な走り、かつクルマに優しい走りを見つめ直すことが大切です。
私は、エコ運転に関して大事なのは「正確な輸送データ」だと思っていますので、過去15年の運行に関して、日報とは別に全てデータとして記録しています。
例えば何月何日、輸送区間は○○~○○、距離○○km、重量○○t等……。自身の走行において距離と給油量の比較だけでは正確なデータではありませんので、「先月より燃費が上がっている!」とはなりません。
軽量物が多かったのかもしれないし、高速走行が多かっただけかもしれません。走りを正確に算出するには正確な数字が必要で、そこから初めて自分の走りを見つめ直すことができます。
燃費を伸ばしたい方や伸び悩んでいる方、走り方を見つめ直したい方、是非一度試してみて頂ければと思います。
これに合わせて昨今の新型トラックにはエコモード(燃料噴射を抑制する)装置などが搭載されており、ドラレコによる運転評価など最新技術と合わせると、更にエコ運転に対し理解も深まってくるのではないかと思います。
一昔前(というより私自身の若かりし頃)は、エコという言葉には無頓着というか、「やってられねぇ」と尖っていたこともありました。しかし、やはり会社に所属して給料を頂いている以上、「会社とともに自身も成長していかないと……」と、心変わりしていきました。
運転手なら誰しもあると思うんですけど(無かった人はごめんなさい)、あのトンガリ具合って何なんですかね(笑)。
今はなかなか大変なご時世で、悠長なことを言っていられる場合ではないかもれませんが、そんな中でも日々成長できるよう頑張っていきましょう! それでは明日もご安全に。
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