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ロシア政府、とりわけプーチン大統領が一体何を考えているのかに世界中の注目が集まっている中、駐日ロシア大使館のミハイル・ガルージン大使が2日夜、BSフジのプライムニュースに出演した。同番組にはガルージン氏のほか、自民党安全保障調査会長の小野寺五典元防衛省が出演した。

ガルージン駐日大使(2019年、参院議長表敬訪問時。参院サイト)

「ウクライナのナチス派が政権奪取」

フジテレビの新美有加アナウンサーからロシア側のウクライナへの見方を問われたガルージン氏は次のように自説を展開した。

ガルージン氏)「ロシアとウクライナは多くの絆で今まで結ばれてきた国。民族的にも文化的にも経済的にも、緊密に数世紀に渡って同じ国家の中にあった。ウクライナ国民はとても有能で賢明な素晴らしい国民ということは我々ロシア国民みんなが思っている。そして尊敬をしている。しかし残念ながら2014年2月にウクライナのキエフで武力によるクーデターが発生して、結果としてナチス派が政権の座を奪取した。

プーチン大統領が核兵器を使うのではとの懸念が世界的に高まっているが、小野寺氏はこの問題について、プーチン氏が2020年に策定した核使用に関する指針(核ドクトリン)を示したうえで、次のように述べた。

小野寺氏(防衛相時代、防衛省サイト)

小野寺氏)「プーチン大統領の発言を聞くと“私たちは強い経済制裁を受けている。西側の国から攻撃的な発言を受けている。だから核を使うんだ”と捉えられかねない言い方をしている。合理的な考えのもとの発言なのか。(核兵器が使われるのではないかとの)不安が世界中に広がっている。私が一番ショックなのはプーチン大統領がどうして合理的な発言をされなかったかということで、そこが一番心配だ」

ロシアは核ドクトリンで、核攻撃を行う条件に「核兵器およびほかの大量破壊兵器の使用に対する報復」「通常兵器の使用により国家の存続そのものが脅かされる時」「弾道ミサイルの発射が確実な時」を挙げていた。

「“核”という言葉は一切使っていない」

小野寺氏の懸念に対して、ガルージン氏は「プーチン大統領が言っているのはNATOから我々を脅かす言動がされている以上、“抑止力”を特別体制に移すよう命令するということだ」とし、プーチン氏の真意を次のように説明した。

ガルージン氏)「(プーチン大統領は)“核”という言葉は一切使っていない。さらに、今のヨーロッパにおける安全保障情勢を見てみると、アメリカがNATOの領域に核兵器を配備している。アメリカは自国の領土以外に核兵器を配備している世界で唯一の国だ。そのアメリカは軍事政策の綱領の中でロシアを敵、あるいは反対国と明記している。そういう状況の中で我々は警戒をしなければならない」

ガルージン氏はプーチン氏が「核という言葉は一切使っていない」と述べたが、自身の発言内容は「アメリカがロシアを敵とみなして、NATO内に核を配備している。だからロシアも核兵器を使うのは仕方がない」とも読み取れる。少なくとも、プーチン氏が現時点で核兵器の使用を考えていないことの明快な説明にはなっていない。

また、ガルージン氏はロシアが脅威にさらされていると、ことさらに強調しているが、そもそもアメリカもNATOも今回のロシアの軍事侵攻について、「軍事介入をしない」との立場を崩していない。この点について小野寺氏は「相手が軍事介入をしないと言っている中、あえて核に言及するというのは合理的ではない」と指摘した。

民間施設への爆撃はウクライナ軍の誤射

議論は現在行われているロシアの軍事侵攻の内容にも及んだ。ガルージン氏は、「ウクライナの将来を決めるのはウクライナ国民。我々の攻撃はウクライナ国民に向けられていない」と強調したが、ウクライナの病院や市庁舎などにロシア軍が爆撃したことはSNSなどで多数報告されている。

ハリコフ市内中心街への砲撃(ウクライナ国家警察ツイッター:CC Attribution 4.0)

これについてガルージン氏は「すべてウクライナ軍による誤射。テレビ塔への攻撃は明確な軍事目標だから、これはロシア軍による攻撃だ。しかし、それ以外、ウクライナ市街への攻撃はしていない」と述べた。

さらに、ガルージン氏はイラク戦争時にアメリカが「大量破壊兵器がある」と言って結局なかった事件を引き合いに出して、日本の対応を次のように批判した。

「アメリカがイラクに軍事進攻をした時、日本は積極的に支援した。二重の規範を使われると困る」

この発言に、司会の反町理氏(フジテレビ報道局解説委員長)が「アメリカがやったことに対して、西側諸国が強く批判しなかったのだからロシアの武力行使も批判しないでくれと聞こえる」と迫ると、ガルージン氏は「そういうことだ」と否定しなかった。

反町氏は、「それはつまり、自分たちが悪いことをやっていると認めていることになる。アメリカがイラクでやったことと同じレベルの、実力による現状変更をロシアもウクライナでやっている。でもアメリカを批判しなかったのだから、我々も批判しないでくれと、まさかこういう理屈じゃないですよね」とガルージン発言の矛盾を厳しく突いていた。

番組を通して、支離滅裂な言い分が目立ったガルージン氏。駐日ロシア大使館と言えば、つい先日、日本をナチス呼ばわりしたことでも話題を呼んだ。おおよそ、一国の大使館の公式ツイートとは思えないような内容を連日更新している。

プーチン氏を無理やり擁護しようとすれば、誰でもどうしてもそうなってしまうのか。それとも、本気でそう信じているのだろうか。プーチン氏の精神状態を危惧する声が聴かれているが、大使はじめ、駐日ロシア大使館職員の精神状態も普通ではないのかもしれない。