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 皆の手の届くアフォーダブルなスポーツカーとして誕生した日産フェアレディZだが、2022年に登場する新型フェアレディZの特別仕様車「Proto Spec」は公表されているところで700万円になるとされている。

 旧型のZ34がバージョンTでも、車両本体価格が約500万円だったことを考えると大きな値上がりと言える。正直500万円でも”皆の手に届く”かと言えば、「……」という反応が返ってくるかもしれない。

 だが、今のご時世でこういったクルマが発売される自体が、非常に貴重であるとも言える。今回は、ファンも大いに期待を寄せる新型フェアレディZの魅力について語っていきたい。

文/岡本幸一郎
写真/NISSAN

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■インパクトがあるが量販グレードも考慮すれば妥当ともいえるZの値付け

 2022年1月に開催された東京オーロサロンで日本市場向けの新型フェアレディZの発売を記念した特別仕様車「Proto Spec」が発表された。同車は6月下旬頃に240台限定で発売が予定されている。

 2020年に公開されたフェアレディZプロトタイプから着想を得たという「Proto Spec」は、イカズチイエローとスーパーブラックの印象的な2トーンのボディカラーをまとい、専用カラーのチタニウムゴールドのレイズ製19インチアルミ鍛造ホイールや、イエローの4輪アルミキャリパー対向ピストンブレーキを装備。

新型フェアレディZ 240台限定特別仕様車「Proto Spec」(イカズチイエロー)

 インテリアもイエローのアクセントが目を引く本革とスエード調ファブリックのコンビシートを備えるほか、インストパネル、ドアトリムクロス、MTシフトノブブーツ、ニーパッドなどに専用カラーステッチを施すなど、色にこだわった仕様となっている。

 696万6300円という価格には驚いた人が少なくなかったようで、これまでのZ34が400~500万円あまりだったことを思うと、たしかにちょっと高い気もしなくない。

 ご参考まで、スペック的に近く、もっとも直接的なライバルといえるGRスープラの6気筒モデル「RZ」が731万3000円だ。スープラだってかなり高くなったように感じられたものだが、同じぐらいのスペックの輸入スポーツカーはもともとずっと高い上に、このところみな軒並み大幅に値上がりしているケースが多い。

 Zで700万円近い値付けというのはそれなりにインパクトがあるが、「Proto Spec」はZにとって特別な位置づけのモデルでもあり、あまりスープラよりも安いと「格下」というイメージが付いてしまいそうで、そうしたくなかったという意図も見て取れる。

 ほかの量販グレードはもう少し低い、Zのよき伝統であるアフォーダブル(=手ごろ)な価格を継承することが予想される。といっても全体的にはこれまでよりも大なり小なり上がると見てよいだろう。

■400Rが示したシャシーの可能性! その走りに期待が高まる

スカイライン 400R

 ただし、仮にもっと安かったらZを買う人が増えるかというと、そんなこともない。今はもうそういう時代ではない。スポーツカーに目を向ける人自体が減り、ましてやこのクラスのスポーツカーは若者よりもいうと年齢層の高い人にとっての趣味の乗り物になった。欲しいと思って買える人が買えばそれでよいのかなと思う。

 価格がどうなのかはさておき、新型Zは、内容的にもなかなか魅力的だ。モデルチェンジ前のZ34の標準系に対し、1845mmの全幅と1315mmの全高と2550mmのホイールベースは変わらないが、全長は130mm増の4380mmとなる。

 スラントした長いノーズにショートデッキのスタイルを受け継ぐスタイリングは、これまで以上に偉大なる初代S30へのオマージュを感じさせるスタイリングをまとうのは見てのとおりだ。

 スタイリングについて、歴代Zのなかでは、Z32のみやや異質だったように思っているが、S130もZ31もZ33もかなりS30の面影を感じさせるデザインとし、価格も内容のわりに安かったことで、ことのほかヒット作となった。Z34はその発展形だ。

 新型はさらにS30直系のクルマであることを色濃く打ち出したデザインとなったわけだが、これをもっと昔の時期にやっていても、あまりありがたみがない。生誕50年を過ぎた今やるからこそ意義があるように思う。幼い頃に見たS30の雄姿に憧れた現在50~60代の層にはガチで刺さるデザインだと思う。

 走りに関しても大いに期待させる数字が並ぶ。最高出力405ps、最大トルク48.4kgmという性能を発揮する3L V6ツインターボのVR30DDTTは、スカイライン400R(以下「400R」)にも搭載されて絶賛されているエンジンであることはご存知のことだろう。

 それをベースに、よりシャープなレスポンスを追求すべく細部に手を加えた新開発のエンジンだという。これまでのVQ37VHRの標準系が、336ps/38.1kgmだったことを思うと、大幅な向上だ。

 さらには、6速MTと9速ATが選べることにも注目。400Rが7速ATのみだったのに対し、3ペダルHパターンのMTと、より多段化したトルコンATという、いずれも400Rには設定のないトランスミッションが組み合わされるわけで、そのあたりも楽しみだ。

 シャシー性能も、FR-Lプラットフォームはあまり素性がよろしくないことはたびたび指摘されてきたとおりで、筆者もあまり評価できないように感じていたが、400Rはエンジンだけでなくフットワークのよさでも高く評価されたことで、このプラットフォームにもまだまだ可能性があることを示した。新型Zはさらに洗練されていると思ってよいだろう。

■時代が変わってもアフォーダブルであり続けるZという存在

 ところで、プラットフォームこそ流用するなど事情によりZ34という型式を6代目から踏襲することになったようだが、実際には全体の約8割が新設計という。そうなると、もはやビッグマイナーチェンジというレベルではない。日産も「7代目」と表現しているとおり、新型Zは“新しい”のだ

 歴代Zもそうだったように、すべてがわかりやすいところがよい。誰が見てもひと目でわかるスタイリングや高いパフォーマンスといったZの持ち味が、新型Zはこれまでにも増してわかりやすくなっているのだから、惹かれないわけがない。

誰が見てもひと目でわかるスタイリングや高いパフォーマンスといったZの持ち味が、新型Zはこれまでにも増してわかりやすくなっている

 それでいて価格についても、特別仕様車は上で述べたとおりだが、おそらく500万円台半ばから600万円前後が売れ筋となるはず。そうなると、2022年に出るこのクラスのスポーツカーとしては、かなりアフォーダブルといってよいのではないだろうか。

 これほどのスポーツカーがこの価格で手に入るというのはほかに思い浮かばない。世界的にも稀有な存在に違いない。そんなまもなく世に現れる日本を代表するスポーツカーの最新モデルをドライブできる日が、今から楽しみでならない。

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