世はカーボンニュートラルに向かってまっしぐら、EVを中心にPHV、FCVという電動化モデルの一気呵成といった情勢。が、そんななかで気になってくるのがガソリン車とともに消える運命にあるクリーンディーゼル車。
今後を考えると、今後クリーンディーゼルはどうなるのか? やはり10年くらいで消えてしまうのだろうか? そうなると今買うくらいがラストチャンスとなるのかもしれない。そこで、自身もボルボXC60のディーゼル車に乗る国沢光宏氏に助言していただこう。
文/国沢光宏、写真/ベストカー編集部、マツダ、トヨタ
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■今年買っておけば27年間は乗れる!?
間もなく発表されるマツダのラージ商品群のなかに、新開発となる3300ccの6気筒ディーゼルエンジンがラインナップされる。どの地域で発売されるかはアナウンスされていないけれど、日本市場についちゃ「売る」可能性99%だと思う。となると、気になるのは「ディーゼルっていつまで乗れるのか?」ということ。以下、今後ディーゼルがどうなるのかジックリ考察してみたい。
現時点の規制や法規から考えれば、2030年代半ばまで販売できるし、2050年まで乗れそう。根拠は政府が「2050年のカーボンニュートラル」を国際公約にしているためです。
逆に考えると2049年12月31日まではガソリンスタンドで普通にガソリンも軽油も販売されている、と思われる。したがって今年買ったら、とりあえず27年間乗れると考えていいだろう。
普通の人だと長く乗って15年。つまり2037年ということになる。まったく問題ないでしょう。一方、新車で販売できるのはいつまでか?
■ユーロ7をクリアできてもCAFÉは厳しい?
まず、欧州市場。今のところエンジン搭載車の販売が許されているのは、国によって違うものの、2025~2040年と言ったイメージ。ノルウェーだと2025年だから2年少々しか販売できないということになる。フランスだと2040年です。
また、その前にCAFEという厳しい燃費規制や、ユーロ7という排気ガス規制もクリアしなければならない。大ざっぱに言って燃費で26.0km/L以上。そのうえ、アクセル全開やエンジン冷えている時も大気よりクリーンな排気ガスしか出せない。ラージ商品群に搭載されるディーゼルは当然ながらユーロ7クリアを前提としていると思うけれど、CAFEクリアは厳しいと思う。
いや、正確に書くと6気筒ディーゼルの燃費が26.0km/Lを超えなくてもいい。その代わり大量の電気自動車を販売できたら、平均燃費が上がるため規制クリア可能。とはいえマツダは電気自動車で大幅に出遅れており、果たしてCAFEをクリアできるか読みにくい。もし、厳しいようだと巨額の罰則金が上乗せされるため、事実上販売できなくなる。
マツダにかぎらず欧州市場でディーゼルを販売できるのは、今後5年くらいになると私は考えてます。マツダもユーロ7をクリアしたり、燃費改善を行ったり、電気自動車に注力したりすると思うが、なかなか厳しそう。唯一の望みはロシアのウクライナ進行の影響で排気ガスや燃費の規制が延期されることながら、今のところそういった話は出ていないようだ。
■米国はディーゼル人気薄、日本ではトヨタ以外は旗色悪し
アメリカはどうか? すでにディーゼル人気なし。日本勢ではマツダのみ可能性あったものの事実上の撤退といっていい状態。ラージ商品群のディーゼル搭載車、アメリカ仕様にラインナップされないと予想しておく。厳しい排気ガス規制があるため、今後も難しいと思う。アメリカにおけるディーゼルの販売、数年後にできなくなると私は考えている。
ということで日本だ。中東などと並び法規的には世界一緩いと考えていいだろう。トヨタもランクル300に搭載するため、まったく新しいディーゼルを開発してきたほど。マツダの3300ccディーゼルだって欧州より緩い排気ガス規制のため問題なし! とはいえ日本にもCAFEが定められている。だからこそトヨタのように平均燃費のいいメーカー以外、厳しい。
マツダが高い評価を得ている2200ccディーゼル搭載車を増やせないのも、スバルが高性能エンジン車を次々と絶版していくのも、CAFEをクリアできないためだ。マツダは燃費のいいクルマを揃え、さらに電気自動車なども出していかないかぎり、2020年代後半にも絶版を余儀なくされそう。燃費だけでなく、2026年から始まる騒音規制のクリアだって大きな課題です。
■やはりディーゼルを買うなら今だ!!
ウクライナ情勢でどうなるか読めなくなってきた、という前提で話を進めると、最も厳しい状況を考えたらディーゼル車は今後4~5年で新車の販売ができなくなってしまうかもしれません(前述のとおり、買ったら20年以上乗れる)。
もしディーゼルの購入を考えているのなら、なるべく早く動いたほうがいいと思う。マツダの3300ccディーゼル、出来がよければ狙い目です。
参考までに書いておくと、ディーゼルの排気ガス処理装置(特に触媒)は1gあたり1万円もするパラジウムが相当な量使われている。そのほか、簡易型ハイブリッドに使われているモーターやインバーター、バッテリーの部品や材料の調達コストまで高騰中。年次改良の度に値上げを余儀なくされると予想してます。だったらハイブリッドを買おうという人も出てくる。
規制だけでなく、車両価格やハイブリッド、PHVとの価格競争も激化する(だからこそディーゼルはマツダくらいしか作っていない)。太い低速トルクに代表される魅力を持つディーゼルながら、徐々に競争力を失っていきそう。買うのなら今です! やがて車種バリエーションは減るし、価格だって高騰していく。私もしばらく自分のディーゼル車(ボルボXC60D4)に乗ろうと思う。
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