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 1月27日に行われた日本自動車工業会(自工会)の記者発表で、年頭理事会によって決定された自工会としての2022年以降の取り組み、業界の優先検討事項5つが提示された。

 このなかで5つの重点課題の筆頭であり、活動のメインとなる「成長と分配」では、自動車の保有&滞留から回転への転換を掲げている。そこで自工会の取り組みのなかで豊田章男自工会会長にやってほしいことを国沢光宏氏が次のように主張する。

文/国沢光宏写真/トヨタ、日本自動車工業会

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■未曽有の変革期迎え、クルマ界もオールジャパンで

1月27日に行われた自工会の記者会見。豊田章男会長は業界を挙げて取り組むべき優先的な検討事項を5つ提示した

 自工会が今までとまったくレベルの違う存在感を見せている。自工会といえば2年に1度の東京モーターショーを主催する団体という程度のイメージながら、2018年に豊田章男さんが会長になってから、突如たくさんの情報発信をするようになった。

 正確に書くと豊田章男さんは2012年からの2年間も自工会会長だったものの、当時はリーマンショック対応が精一杯だったように思う。

 ちなみに自工会会長の任期は2年。本来なら豊田章男さんも2020年まで。けれど自工会の参加企業の強い要望で1期延長し、2022年までとなった。

 さらに自動車産業はカーボンニュートラルに代表される未曾有の変革期を迎え、オールジャパンで対応しなければならないということから、最ベテランとなった豊田章男さんが3期目を担当することになった。ちなみに自工会会長、ボランティアです。

 もっと言えば、ただでさえ忙しい社長業務を縫って時間を割かねばならない。実際、これまで自工会会長といえば「当番になったのでしかたなく引き受ける」というポジションであり、実務についちゃ代行が努めていた。

 逆に考えると、我が国の自動車産業は「自工会で環境の変化に対し団結して情報発信し存在感を見せていかないと厳しい状況」になってきたということだと思う。

■自工会会見にすべての社長が出席した意味合い

 長い前置きになった。1月27日に行われた記者会見を見て「どうしちゃったの?」と驚いた! 豊田会長のほか、ヤマハの日髙祥博社長、いすゞの片山正則社長、日産の内田誠社長、ホンダの三部敏宏社長、スズキの鈴木俊宏社長と、2輪や4輪、商用車を含め、すべての社長が姿を見せた。

豊田会長(上段中央)をはじめ、ズラリと2輪と4輪の各社社長が揃って出席した今回の自工会記者会見

 通常の記者会見にこれだけのメンバーが揃ったことなど自工会の歴史を見てもなかったこと!

 それだけ自動車産業を巡る現在の環境や状勢、課題が大きいということなんだと思う。カーボンニュートラル達成に向け、最も大切になるエネルギー政策だけを例に挙げると、1企業で政府に訴えても何ら実効性なし!

 豊田会長が何度もアピールしていた「550万人の仲間」と一緒に声を上げれば政府だって無視できない。カーボンニュートラル対応、それくらい大きな課題です。

 興味深いことに自工会が豊田会長体勢になった2018年当時、ほかの企業は「業界を挙げての活動」についてあまり熱心じゃないように見えた。その後、自動車産業を巡る状勢はドンドン複雑かつ難しくなっていく。

 決定的になったのが2020年10月の「2050年のカーボンニュートラルを目指す」という首相宣言。自工会構成企業にとって大きなテーマになった。

■自動車産業の衰退は国の衰退につながる

 今回の記者会見で豊田会長が強調したのは、「日本という国」において自動車産業が最大級の貢献をしているかということ。豊田会長のコメントをまとめると、「直近の2年間で雇用は22万人増。平均年収500万円であれば家計に1兆1000億円のお金を回している。平均賃上げ率は2.5%で全産業トップ水準。自動車メーカーの12年間の累計納税額は10兆円、株主還元は11兆円」。

自工会が掲げた「成長と分配」への取り組み。年間約10兆円を国に納税し、同じく約11兆円を株主還元している

 そのうえ、自動車を所有/利用することによって国に入る税金だって巨額。こういった数字を見ると、自動車産業が衰退したら日本も衰退するということも明々白々になる。といったことをバックボーンとしたうえで豊田会長は「みんなで頑張っていきましょう!」という基本スタンスを紹介した。確かに自動車産業の次は育っていない。ここが踏ん張りどころだと強く思う。

■新車購入時に課される税金の改革などは急務

 具体案は税制改革と保有期間の短縮化。例えば、現在15年の保有サイクルを10年にすると、日本の年間市場規模が500万台から800万台になる。これだけで7.2兆円の経済効果になるという。

 参考までに書いておくと、日本で発生する大半の中古車は海外に輸出されていく。新車輸出を禁止している新興国が多いなか、中古車だとさまざまなルートもあるようだ。保有年数が5年短くなると、中古車の質も上がる。

 そのため、新車を買う時に徴収される罰則的な税金などの改革が必要だという。気軽に買い換えられたら自動的に保有サイクルだって短くなる。同時に二酸化炭素削減のため、燃費のいい新型車が増えていくという環境面でのメリットだって大きい。

 豊田会長のアピール、自動車業界にとって「そうだよなぁ」と思えることばかり。今後もこの調子で自動車産業を引っ張って行っていただきたい。

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