いすゞ自動車の「MIMAMORI」は日本初の商用車テレマティクスである。運用開始は2004年なので、今年で18年目を迎える商用車テレマティクスの草分け的存在だ。スタート当初は「みまもりくんオンラインサービス」と呼ばれていた。
商用車テレマティクスは、今風にいえば「コネクティビティ」ということになるだろう。そう、自動車の4つの最先端技術を指す「CASE」の1つであるコネクティビティのことだ。
コネクティビティには通信端末が不可欠だが、いすゞの車載端末を搭載した車両は現在約30万台走っており、そのうち約8万台がMIMAMORIの契約をしている。
ちなみに、その約8万台のうち約3割が他社製トラックだという。後付けが簡単にできることもさることながら、商用車テレマティクスではMIMAMORIが独走していることの証でもある。
MIMAMORIにはこのほど待望のトラックドライバー向けのアプリも登場し、さらに活用の場を拡げそう。知らない間に長足の進化を遂げていた商用車のコネクティビティの実際に迫ってみよう。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部 写真・イラスト/「フルロード編集部」、いすゞ自動車
いすゞの2つのコネクテッドサービス
商用車テレマティクスは、今ではコネクテッドサービスなどとも称されるが、前述したようにこれには通信端末が不可欠だ。いすゞでは順次採用を開始し、現在ではギガ、フォワード、エルフの全車に通信端末を標準搭載している。
ちょっとややこしいので最初に整理しておくと、いすゞのコネクテッドサービスは2つあり、1つが有償運行管理サービスのMIMAMORI。もう1つが車両コンディションデータを活用した高度純正整備のPREISMで、こちらは車両標準のサービスとなっている。
予防整備を柱としたPREISMは、ダウンタイム(故障等でトラックが稼動できない時間)を極力減らし、稼動をサポートすることが主たる狙いだ。
そもそもMIMAMORIってどんなもの
では、MIMAMORIのシステム構成はというと、通信端末と車載器であるコントローラとクラウドサーバーで成り立っている。通信端末には通信モジュールを搭載しており、車速やエンジン回転パルスといった車両データを各基地局に送信し、データをサーバーに集約する。
運送事業者はMIMAMORIを契約した際に発行されるIDとパスワードによって、パソコンやタブレット上で自社の車両の位置や運行状況を確認でき、また、運転日報等の出力を行なうこともできる。
MIMAMORIの機能は、その目的によって「エコドライブ」「動態管理」「法令遵守」の3つに分けられる。
機能は3つ「エコドライブ」「動態管理」「法令遵守」
エコドライブは、乗務員に対し運転中に省燃費運転となるような運転方法を音声で的確にアドバイスするもの。さらに「エコドライブトレーニングレポート」ではエコドライブ・安全運転度合を採点、ランキング表示し、改善ポイントを明確にするなどの機能も備えている。
動態管理は、車両位置や運行状況をリアルタイムに確認するもので、新機能も加わり多彩なサービスが用意されている。列記すると、車両位置お知らせサービス、輸送状況お知らせサービス、運行軌跡サービス、運行軌跡ガントチャート表示、ジオフェンス入出お知らせサービスなどとなっている。
また、ドライバーステータスモニター連携という機能もあるのだが、これがなかなかユニークなもの。ドライバーの目の動きをモニタリングし、脇見や居眠り等を検知。車両側ではドライバーに音声で警告するとともに、事務所側にもリアルタイムにその情報を伝えることができるのだ。
最新のギガに搭載しているドライバー異常時対応システム(EDSS)は、ドライバーの異常を検知すると車両を緊急停車させるものだが、MIMAMORIはその情報を事務所側に知らせることもできるのだ。MIMAMORIはセーフティドライブにも寄与していることがわかる。
法令遵守もMIMAMORIの大切な機能である。これには運転日報の作成、デジタコデータを通信で取得・チャート化するインターネットデジタコ、乗務員毎の乗務時間等が分かる拘束時間管理表の作成ができる労務管理サービス、車検・点検の予実管理ができる車検・点検予定表などのメニューがある。
オプションとなるが、点呼酒気帯確認を定量的に測定するアルコールチェッカーとの連携もでき、これも法令遵守の項目に入るだろう。
よく使われている機能と料金
MIMAMORIでよく使われる機能をあげると、車両位置お知らせサービスに加えて、運転日報、インターネットデジタコ、労務管理サービスだという。働き方改革もあるが、運送事業も労務管理の厳格化が求められており、煩雑で手間がかかる業務をサポートするツールとしてもMIMAMORIは認知されている。
ちなみに価格だが、MIMAMORIのコントローラ基本キットが車両1台につき11万3025円、基本サービスは1台につき月額990円となっている。
新たに加わった「MIMAMORIドライバー向けアプリ」3月1日運用開始!
そんなMIMAMORIに新たに加わったのが運行管理スマートフォンアプリ「MIMAMORIドライバー向けアプリ」だ。もちろん国内商用車メーカー初で、MIMAMORIの契約者が利用できるサービスとして今年3月1日から全国一斉に運用を開始する。
MIMAMORIと連携したこのスマートフォンアプリは、新しいサービスとして運行前の日常点検と荷役作業の機能を追加し、このアプリを利用することで確認作業を効率化することができるというもの。
日常点検機能は、2019年に発表した日常(運行前)点検アプリ「PRE START CHECK」のトライアルを通じて改良を重ねたもので、これまで2人で実施していた点検作業を1人で行なうことが可能になり、省人化と作業時間の短縮を図ることができる。
さらに、スマートフォンで点検データの記録管理も可能。また、従来のMIMAMORIの機能である労務管理、位置情報も本アプリで利用することができる。
ドライバーをサポートする4つの機能
(1)日常点検
車外からスマートフォンでターンシグナルランプやヘッドランプ、クリアランスランプ、ストップランプの灯火を操作し(別途指定無線LANの部品購入が必要)、目視確認を実施することで、一人作業が可能となる。
アプリ内に記録された結果は、MIMAMORIとの連携により帳票として出力することが可能。また、作業点検手順もアプリ内で確認できるため、点検に不慣れなドライバーでも、正しい点検を行なうことができる。
(2)荷役作業
2019年「貨物自動車運送事業輸送安全規則」改定に伴い、荷待時間や荷役作業の記録、荷主の確認・署名ができるようになっているが、これらの記録、荷主の署名はMIMAMORIの運転日報に自動的に反映する。
(3) 労務管理
勤務状況をドライバー自身で確認することができる。前回までの勤務実績を基に、1日あたり/1週間あたりの運転時間や必要な休息時間等が一目で分かるようになる。
(4) 位置情報
目的地までの最短ルートや所要時間等を確認できる。地図上には自分の車両だけでなく、同じ事業所内の他の車両、渋滞情報、降水情報、いすゞのサービス拠点、大型車通行可能道路等も確認できる。
なお、このアプリの運用にあたっては、アプリを起動し利用規約に同意後、契約時に発行されたID/パスワードを入力してログインする。利用料金は月額110円(税込み)となかなかリーズナブルだ。
いすゞのMIMAMORIが商用車テレマティクスの中で独走しているのは、業種・業態・業容に合わせてさまざまなメニューが用意され、利用料金が比較的安価であることがあげられる。それは18年間コネクテッドサービスに注力してきたいすゞの「先見の明」といえるのかもしれない。
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