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 2022年F1第2戦サウジアラビアGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った点などについて解説する。第1回では激しく優勝を争ったレッドブルとフェラーリの空力設定の違いについて解説。第2回では、レース終盤、フェラーリのシャルル・ルクレールがレッドブルのマックス・フェルスタッペンを抑えきれなかった理由について探る。

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 レース終盤に起きた現象に目を向けてみよう。VSC(バーチャル・セーフティカー)期間が終わった際、トップ2台の差が一気に縮まった。37周目、首位を走るシャルル・ルクレール(フェラーリ)と2番手マックス・フェルスタッペン(レッドブル)の差は1.581秒だったが、41周目には0.483秒まで詰まったのだ。

 なぜそんなことが起きたのか。レース後に質問されたルクレールは、「マックスが知っているはずだ。聞かれても、答えないだろうけどね」と笑っていた。

 答えはおそらく単純で、レッドブルのマシンの方が、タイヤの温度を上げやすかったということだ。通常のペースより約30秒遅く走るVSCで、タイヤの内部温度は一気に下がった。しかしレッドブル2台のタイヤは、フェラーリより早く最適な温度に戻った。レース後、フェラーリのカルロス・サインツが、そう指摘している。

 ダウンフォースが小さいため、タイヤが滑りやすかったのかもしれない。一方で、だとすれば2台のレッドブルが熱劣化に悩まされていなかったことをどう説明すればいいのだろう。確かなのは、彼らは今回のタイヤでは、ミディアムコンパウンド(C3)よりハードコンパウンド(C2)での方が快適に走れていたということだ。いずれにしても今季のピレリタイヤを深く理解するには、もう数レース待たねばならないだろう。

2022年F1第2戦サウジアラビアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)のバトル
2022年F1第2戦サウジアラビアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)のバトル

 ルクレールはDRS検知ゾーンを巧みに操りながらも、結局はフェルスタッペンの攻撃に対抗することはできなかった。42周目、ルクレールは2つ目の検知ポイントの手前でブレーキをかけ、マックスを前に出そうとした。そうすればDRSの恩恵を受けながら(3つ目の検知ポイントで後ろを走るため)再び前に出ることができるからだ。昨年、このサーキットで行われたルイス・ハミルトンとフェルスタッペンの対戦を彷彿とさせる、猫とネズミのようなゲームだった。

 このトリックは一度はうまくいき、ルクレールはターン1で前に出た。しかし2度目はそうはいかなかった。

 レッドブルの方が速さで勝っており、フェルスタッペンは最終コーナーでフェラーリを抜くのを巧みに避け、ライバルのアンダーステアを利用しててわずかにスライドさせ、ストレートでフェラーリをオーバーテイクして勝利した。

 信頼性の問題がないときのRB18は、速さのあるマシンと言える。ヘルムート・マルコの言葉を信じるなら、第4戦イモラでマシンの重量が大幅に減るはずだから、さらに期待は膨らむ。今季のレッドブルは今のところ、レッドブルのバッジをつけたホンダ製パワーユニット(PU)の信頼性だけが問題だ。

■2022年型F1マシンの謎のノーズ構造

 2022年型F1マシンのいくつかのノーズは、去年までとは違う方法で作られている。例えばレッドブルやフェラーリでは、正面衝突時にエネルギーを吸収するためのクラッシャブル構造のカーボン部分が、塗装されたボディパネルで覆われている。そしてRB18では、内部の開口部が外部の開口部よりも大きくなっている。

レッドブルRB18のノーズ
レッドブルRB18のノーズ

 フェラーリのF1-75も同じ構造だ。ただでさえ重量オーバーのクルマをさらに重くするような構造に、なぜあえてしたのか? 正確な理由は不明だ。おそらくカーボン構造に他のパネルを簡単に取り付けられるようにすることで、空力開発を促進するためではないだろうか?

フェラーリF1-75のノーズ
フェラーリF1-75のノーズ