2022年F1第1戦バーレーンGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った点などについて解説する。今回は、開幕戦で1-2フィニッシュを飾ったフェラーリF1-75の強さの秘密について考察する。
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フェラーリF1-75が見せた圧倒的な強さは、パワフルなエンジン、空力特性に優れたシャシー、そして何より入念な準備の賜物だった。
■ライバルと同等以上のパワーを持つPU開発に成功
今季のフェラーリが、パワー面で優れていることは明らかだ。2019年以来、スクーデリアは初めて、ライバルたちと同等かそれ以上のパワーを持つV6ターボハイブリッドの開発に成功した。それが今季の飛躍に大きく貢献したことは、想像に難くない。
たとえば開幕戦予選での相対的なパフォーマンスを、1年前と比較してみよう。純粋な速さの増減をパーセントで表してみると、2021年より大きく向上したのは、フェラーリ製パワーユニットを搭載した3チームであることは明らかである。
純粋なスピードが昨年より2.27%向上したハースを筆頭に、フェラーリが0.91%、アルファロメオが0.817%の飛躍を遂げた。もちろん、この種の比較は慎重に行うべきだが、予選のトップ10にフェラーリV6エンジン搭載マシンが4台も入っている事実は、素直に認めるべきだろう。
■空力効率の高いシャシーでタイヤマネジメントでも有利に
シャルル・ルクレールの予選ラップを分析すると、ストレートではレッドブルより遅い(最速はセルジオ・ペレス、次にマックス・フェルスタッペン、ルクレールは11番手にすぎない)。サクヒールサーキットの路面は滑りやすく、リヤタイヤ保護のために、ダウンフォースを追加したのだ。おかげでF1-75は、レッドブルのRB18よりもタイヤの劣化が少なかった。
2022年のピレリタイヤは、劣化が少ないように設計されている。しかし、それでも優しく扱う必要があることが開幕戦で判明した。まず今回のレギュレーション変更で先行車にぴったりとついていけるようになったが、そうするとタイヤの劣化が激しくなる。そして車重が46kgも重くなり、高速コーナーでの横Gが増加、簡素化されたサスペンションとバウンシング(激しい縦揺れ現象)にも対処しなければならない。
■2022年開発への早期切り替えが結実し、最高のスタートダッシュ
去年の最終戦までタイトル争いを繰り広げたレッドブル、メルセデスとは対照的に、フェラーリはかなり早い段階から2022年のプロジェクトに集中してきた。もちろんレッドブルに対抗できるタイトル候補かどうかの評価は、数レース待たなければならない。中古ソフトタイヤでスタートしたフェルスタッペンが、レース序盤にルクレールについていったことが、RB18の速さを示唆している。とはいえフェラーリにとって、開幕戦での44ポイント獲得が、これ以上ないスタートダッシュだったことは間違いない。