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 MotoGP第2戦インドネシアGPには“いくつかの変更”があり、それが様々に影響したレースウイークだった、と言えるのではないだろうか。テストとは異なるタイヤ、路面の再舗装、周回数の変更、そして雨によるフルウエットでの決勝レース。初開催のサーキットで行われたインドネシアGPは、一筋縄ではいかないレースウイークとなっていた。

 インドネシアGPでは、タイヤサプライヤーのミシュランが持ち込んだタイヤがひとつの話題だった。2月にプルタミナ・マンダリカ・インターナショナル・ストリート・サーキットで行われた公式テストとは異なるケーシングのリヤタイヤがアロケーションされたのだ。高い気温に対応するため、というのがその主な理由だった。これについて、ミシュランの二輪モータースポーツマネージャーであるピエロ・タラマッソ氏は、フリー走行1回目のMotoGP.comの中継の中で、次のように説明している。
 
「テストを終えて、このサーキットは非常に高速でフロントとリヤのタイヤに大きな負担がかかることがわかりました。気温がとても高く、路面温度は60度くらいで、タイヤもかなり温度が上がります。よって、テストと同じコンパウンドでありながら、構造が異なり、ケーシングも異なるタイヤとなっています。このケーシングは、スタンダードよりも10~15度ほど温度を下げるように設計されています」

 プルタミナ・マンダリカ・インターナショナル・ストリート・サーキットは、テスト後に最終コーナーから5コーナーの路面が再舗装されており、つまりコースの一部が新しい路面になっている。初開催のサーキットでテストとは異なるタイヤアロケーション、そして一部路面の再舗装、というライダーにとっては適応が求められる週末となったと言えるだろう。
 
 とはいえ、決勝レースは金曜日、土曜日とはまったく異なるコンディションとなった。MotoGPクラスの決勝レースが始まる前にサーキットを激しい雨が襲い、レースは1時間15分のディレイ。フルウエットコンディションでスタートとなる。ライダーは全員、レインタイヤのミディアムを選択した。なお、周回数はMoto3クラスの決勝レース後、つまり雨が降る前に27周から20周に変更されている。これは、再舗装した最終コーナーの路面状況の悪化が理由のひとつだと見られる。
 
 優勝したミゲール・オリベイラ(レッドブル・KTMファクトリー・レーシング)は、7番手スタートから1周目で2番手に浮上。2周目でトップに立った。一時はジャック・ミラー(ドゥカティ・レノボ・チーム)にかわされて2番手に後退したが、ミラーの後ろを走っていたときにペースをつかんだという。

「ジャックの後ろで走ったのがよかったんだ。ラップタイムを確認して、特にブレーキング・ポイントを参考にすることができた。ラップタイムもデータとしては十分で、ギャップを広げていきながら確認していた。そのくらいのリスクで留めるようにして、ミスをしないように努めていたんだ」

 オリベイラは5周目にミラーをパスしてトップに立つと、そのまま独走の形でチェッカーを受けた。ウエットコンディションでは前を走るライダーの水しぶきが視界を遮るため、その点でレースリーダーの位置がペースを上げやすいと言える。
 
 オリベイラも「うまくスタートできていなかったら、レースはまた違っていたかもしれない。誰かの後ろを走っていると、水しぶきやバイザーについた雨粒で本当に何も見えなかった。正確なラインをとるのもすごく大変だったし、グリップレベルを判断するのも難しかったんだ」と述べている。的確かつ素早くペースをつかみ、序盤でトップに立ったことがひとつの勝因と言えるだろう。

 そう語ったオリベイラは会見で素早く質疑応答をすませ、会見場をあとにした。1時間15分のスタートディレイによって、フライトの時刻が迫っていたためだ……、というのはこのレースウイークのひとつの余談である。
 
 さて、レースではポールポジションからスタートしたファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が2位、ヨハン・ザルコ(プラマック・レーシング)が3位を獲得した。
 
 クアルタラロもザルコも、ウエットコンディションでのレースでペースを把握するのに時間がかかったのだという。クアルタラロは一時5番手を走行していたが、「もっと速く走れる」と気づいた。そこから追い上げを開始し、残り5周で2番手に浮上すると、最終的にオリベイラに2.2秒差まで迫った。

「5番手にいたとき、正直、ウエットで速かったことがなかったから、速く走れると気づくのに時間がかかったんだ。5番手にいたとき、少しマージンがあるとわかった。もっと下のポジションに慣れていたのだから、5番手でも十分だなと思うところだけど、もっといけると感じて、ブレーキでも感じがすごくよかった」

「雨が降るとグリップが落ちるサーキットがあるけれど、ここでは(リヤの)グリップがあった。2021年のオースティン(第15戦アメリカズGP)以来まったく違うセットアップを使っていて、それは全く違うものなんだけど、すでによくなっていたんだ。でも今回、バイクにとても小さな変更をした。それに加えて、路面のグリップのよさがとても助けになった。今日のような小さなことでも、もっとやっていけば、リヤグリップが上がるかもしれない」

 一方のザルコは「ミゲールとジャック、(アレックス・)リンスが最初からハイペースでびっくりした」と序盤のレースについて語った。3番グリッドスタートのザルコはクアルタラロと同じく序盤に後退したが、やはり少しずつポジションを回復していった。

「ジャックがこのコンディションにすぐ適応していたからすごいと思ったよ。この水の量の中でね。彼は自分がプッシュできるとわかっていたんだ。でも僕はいけるかどうか……、と考えていた。数周後にいいペースで走れるとわかったんだけど。だから、最初にタイムをロスしてしまった」

「ジャックの後ろについたときに、リヤタイヤに苦戦しているのがわかった。それで、彼をオーバーテイクできればアドバンテージになるな、と思ったんだ。そのときはすごく彼に接近していたんだけど、彼のブレーキングはとてもハードだった。ジャックをとらえるのはちょっとやっかいだったね。そこでタイムをロスして、ファビオが僕らをオーバーテイクしていった。そのとき、『表彰台を失ってたまるか。もっとプッシュしなきゃ』と思ったんだ」

 インドネシアGPは、通常以上に様々な要素が絡み合ったレースウイークとなったと言えるだろう。