3月18日(金)、アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで2022年WEC世界耐久選手権第1戦『ゼブリング1000マイルレース』の決勝が行われた。今季もハイパーカークラスに2台のル・マン・ハイパーカー『GR010ハイブリッド』を投入するトヨタGAZOO Racing(TGR)は、8号車が総合2位、7号車がリタイアという結果で開幕戦を終えた。
2台のGR010ハイブリッドは、BoP(性能調整)の変更もあり、予選から苦戦。セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮がドライブする8号車GR010ハイブリッドは4番手、マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペスがドライブする7号車GR010ハイブリッドは7番手から、268周または8時間で争われる決勝レースをスタートさせた。
スタートから1時間後には8号車のブエミが2番手、7号車の可夢偉が3番手に浮上し、首位をいくアルピーヌ・エルフ・チームの36号車アルピーヌA480・ギブソンを追うが、アルピーヌとの差は拡大していき、この時点ですでに優勝を争うのは難しい状況となっていた。
■クラッシュにより、約5年ぶりのリタイアを喫する
3時間を経過する頃、104周目には7号車のロペスが8号車のハートレーをパスする。
その数周後、ロペスはLMGTEアマクラスのマシンと接触してスピン。タイヤバリアにヒットした7号車は、車体にダメージを負いながらもコースに復帰し、ピットへと戻ろうとしたが、高速のターン14でコースアウトし、再び激しくタイヤバリアにクラッシュしてしまう。
ロペスは幸運にも無事だったが、7号車はここでレースを終えることとなった。
このアクシデントによりレースは34分間の赤旗中断となったが、実質2番手を走る8号車にとっては不運なタイミングとなった。ハートレーは再スタートが切られる直前のセーフティカーラン中に、給油のための緊急ピットインを強いられ、その後、再びドライバー交代とタイヤ交換を含むフル作業のためにピットイン。ここで交代した平川がデビュー戦で初のコースインを果たした。
8号車のステアリングを握った平川は2スティントに渡って好走を見せ、3番手グリッケンハウス・レーシング708号車グリッケンハウス007 LMHとの差を広げ、その後出されたコース上の異物によるフルコースイエロー中に、ブエミへと交代した。
レースは1時間ほどを残したところで、落雷の危険が近付いてきたために再度赤旗中断。その後いったんはセーフティカー先導の下で走行が再開され、リスタートを待ったが、再び落雷の危険があるとして走行は停止され、その時点の順位でレース終了が決定された。
これにより、8号車の3人は2位表彰台を獲得。しかし昨年デビューしたGR010ハイブリッドにとっては初の敗戦となり、その連続勝利記録は6でストップした。
なお、TGRにとって参戦した車両がレースをフィニッシュできなかったのは、2017年のル・マン24時間レース以来のこととなった。
2022年シーズンのWECはヨーロッパへと舞台を移し、次戦は5月7日(土)にベルギーのスパ・フランコルシャンで6時間レースが行われる。
セブリングでの開幕戦を終えたTGRの6名のドライバーのコメントは、以下のとおり。
■「初めての実戦で、うまくできた」と平川亮
■小林可夢偉(チーム代表兼7号車ドライバー)
「2022年開幕戦たくさんの応援ありがとうございました。結果は8号車が2位、7号車は残念ながらリタイアとなってしまいましたが、ホセの身体が無事だったことは不幸中の幸いです」
「7号車、8号車とも、同じくらいのパフォーマンスでレースを進められ、いま持っている力は出し切れたと思いますが、今後、ドライバーと一緒にもっと強いチーム作っていくためにどうしたらいいかを考えていかないといけないと思っています」
「今回の性能調整は厳しいものでしたが、チームとしてパフォーマンスを引き出すことに集中して2番手になれたのは良かったと思います。今後どんな状況でも諦めず、車の限界をつかめるよう、さらに強いチームを作れるように気を引き締めてやっていきたいと思います」
「残念ながらチーム代表としての初レースは優勝できませんでしたが、これも試練として、自分自身が学習して、強くなってチームを引っ張っていけるように頑張っていきたいと思いますので、これからも引き続き応援よろしくお願いします」
■マイク・コンウェイ(7号車)
「望んでいた開幕スタートにはならなかった。着実な結果を期待していただけにとても悔しい。勝てるペースではなかったが、表彰台は充分に狙える位置だったし、それが目標だった」
「僕に交代する直前のアクシデントだったので、今日は1周も走れなかった。残念だが、車両の安全性が高く、ホセが無事だったのは幸いだった。それが一番大事なことだ」
「今日のようなアクシデントは耐久レースにはつきものだ。次戦スパへ向けて車両を修復し、今回のリベンジを果たすべくプッシュする」
■ホセ・マリア・ロペス(7号車)
「僕が走っていたときはとても好調で、前を行く8号車をパスすることができた」
「しかし、不運にもGT車両と接触してしまい、車両前部を破損してしまった。僕はすぐにピットへ戻ろうとして、車両のダメージを見誤ってしまった。ターン14へと進入したとき、車両のフロント下部が破損のために路面を擦り、ハンドルもブレーキも効かないままに真っ直ぐバリアに突っ込んでしまった」
「大きなクラッシュだったが、とても安全性の高い車体のおかげで無事だった。すぐに対応してくれたセブリングの救急スタッフや皆に感謝している」
「僕自身は何も問題なく、明日土曜日の(IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第2戦のセブリング)12時間レースにも出場できると思う。ただ、チームとチームメイトには本当に申し訳なく思っている」
■セバスチャン・ブエミ(8号車)
「クレイジーなレースで、7号車のアクシデントも含め、チームにとってとても大変なレースだった」
「あのアクシデントまでは、2台そろって良いレースを戦っていた。しかし2位というのは今日できた最良の結果であり、選手権争いに大事なポイント獲得は果たせた」
「セブリングに来る前から厳しい戦いになることは分かっていた。勝ちたかったが、今日は無理なことが分かっていたし、ポイントが獲得できただけ良かった。次戦へと気持ちを切り替える」
■ブレンドン・ハートレー(8号車)
「僕ら8号車にとってはとてもクリーンなレースだった」
「セブは最初の2スティントでとても良い走りをしてくれた。僕に交代したとき、いくつかの中古タイヤを使ったこともあり、後方からプレッシャーをかけてくるホセに対抗するのは大変だった。その後残念ながらホセはアクシデントに見舞われてしまった」
「亮は8号車でのデビューで見事な走りを見せた。すでに我々の間ではチームメイトとして良い関係が築けており、彼は完璧なレースを見せてくれた」
「我々には勝利を争うだけの速さはなかったが、ミス無くレースを戦った結果の2位には満足している。この勢いを活かしてル・マンへの準備を進め、チャンピオンを目指す」
■平川亮(8号車)
「TGR WECチームでの初レースを表彰台で飾ることができ、嬉しいです。GR010ハイブリッドで実戦を走るというのは初めての経験でしたが、うまくできたと思います」
「LMP2車両をかわしながら走るのはとても難しかったです。とはいえまずは自分の担当をミス無く走り、表彰台という好結果でシーズンのスタートを切れたのは良かったです」
「次戦スパでのレースが楽しみですし、さらなる好結果を目指し努力を続けます」