運転していて眠くなった経験は誰にでもあると思いますが、毎日トラックに乗っているプロドライバーは、眠気にどう対処しているんでしょう?
4時間走ったら30分休憩する430(ヨンサンマル)をはじめ、「トラック運転者の労働時間等の改善基準」を遵守すれば、トラックドライバーが居眠り運転寸前の危ない状況に陥ることはまずないはず。
なんて、建て前論はこの際置くとして、ただ、どんな状況に陥っても事故は絶対起こさないというのがプロの鉄則。3人のトラックドライバーさんに運転中眠くなった経験とその対処法を聞いてみました。
文/マサ・ゆで・鰻 写真/フルロード編集部
*2012年10月発売トラックマガジン「フルロード」第7号より
鮮魚を運ぶ「追っかけ」は時間と睡魔のせめぎあい/マサ
トラックドライバーをしていれば、眠くなるのは日常茶飯事ですね。私のように鮮魚などを扱う「追っかけ」の仕事をしていれば、どうしても時間に追われて眠る時間が取れないこともあります。
同じ仕事でも体調によって疲れが違うし、天気や季節にもよるので、居眠り運転はいちがいに睡眠不足や疲れが原因とは限りません。
ドライバーとして、過度の無理はせず、事故を起こさない努力はしています。ただ、この職業柄、睡眠不足をなくすことは、実際には不可能に近い気がします。
すべてを規則通りに行なったら荷物が動かないですし、給料になりません。なので、いろんな居眠り防止策を考えて毎日走っています。
クルマの中で身体を揺すったり、伸びをしたり、大声を出したり、外から見たら完全に変な人ですよね。まぁ、ここではチョット書けないような、恥ずかしいことで目を覚ますこともありますが……。
それでもダメなときは、お菓子を食べます。お菓子でも、ガムやアメは一定のリズムになるので、効果が一時的なんですよね。だから、スナック菓子を食べます。手で取る動きがイイみたいです。が、これを続けると、太ってしまうのが悩みです。
それでもダメな時はダメですね。本当の極限に眠い時は、どうにもなりません。そんな時は、どんなに時間に追われていても、トラックを停め、パーキングで顔を洗ったり、身体を動かしたり、もしくは5分だけでも寝ます。そうするとだいぶ違いますね。
もし寝過ごしたとしても、事故を起こすよりは全然いいでしょう。過度な無理はしない、これが鉄則なんですが、なかなか現実は……。
私の目安としては、フラつき始め、記憶がハッキリしなくなるのが、限界状態です。これでもすでに無理な状態なんでしょうが、年中停まっていては商売にならないですからね。基本、根性で走っています。
でも、ヒヤッとしたことは何度もあります、気がついたら、ある一定の区間の記憶が無く、どの車線を何キロで走っていたかわからない、なんてこともありました。
フラついて、隣の車線や壁にギリギリなんてことも……。たまたま、今まで運が良く事故に遭わなかったんだと思います。
20代の頃は、もっと走れたんですが、30代になって、ガクッと目が持たなくなりました。眠たくて道を間違えたり、降りなければいけないインターを通り過ぎたりと、老いには勝てないですね。たまに、いつまで追っかけができるかなぁ、と考えてしまいます。
ドライバーを続ける限り、運転中の睡魔は切っても切り離せないものですから、これからも過度な無理はしない、と心に留めて走り続けたいですね。
海コンお姉さんはホッペタを殴って睡魔退散を願ったことも……/ゆで
運転手の天敵、それは渋滞・通行止め・睡魔。3番目の敵に対しては、ガムを噛んでみたり、眠気覚ましのドリンクを飲んでみたりします。
特に酷いときは、ハードなミンティアを5~6個口に入れて、ヒーヒー言いながら運転したりするんですが、やっぱり眠いものは眠い!
特に寒い冬の日、凍える外から車内に戻り、ホンワカ温かいと、気持ち良くなってきて眠くなることはしょっちゅうです。
そんな時は、窓を開けて冷たい風を入れたり、寒いのに冷たいものを飲んで目を覚まそうとするんですが、それでもダメな時もありました。
雪が降る冬のある日。車庫を2時出発で山陰地方へ向かう鳥取米子道で明け方に睡魔が襲ってきました。
よくやるのは、太ももをつねったり叩いたりして意識を痛みに集中させること。でも、その日はそれも効果がなく、仕方なくホッペタを軽くつねったり叩いたりしていました。
ダメ! 女優は顔が命! 力任せになんてできません! でも、せまりくる睡魔との戦いは危険度90。意を決して強めにホッペタを平手打ち!
「そっか、ビンタってやつはこんなに痛いんだ」。いやいや、もの思いにふけってる場合じゃありません。
さらに「力任せにビンタしたらどのくらい痛いんだろう?」。そんな体験は誰にも聞いたことがない。で、よせばいいのに心の静止を振り切って、ピシャッ!!
瞼とホッペタがジーン! 心にジーンと染み渡るジーンではなく、ヒリヒリするようなジーン! 耳までキーンと鳴ってました。「確かに痛い!」と確認しなくても痛い。
一瞬目が覚めるものの、少したつとすぐ眠気はやってきます。そのたびにピシャだったり、ギュッとつねってみたりするうちに、ぶつけようのない怒りというか闘志というか、ボクサー並みに興奮状態に陥っている自分がいました(笑)。ボクサーってこうやって拳に力を込めるのね(納得)。
眠気で不機嫌、ビンタで怒り心頭。それでも睡魔はとてもしつこく付きまとう。とうとう撃沈寸前まで眠気が襲いました。危険度MAX状態。
殴られることに慣れてしまったホッペタは、少しの瞼の腫れと共に学習し、痛みを感じなくなりました。もう痺れているんですね。
「眠いなぁ」と走っていると、前に4トン車が走っています。その4トン車、何を積んでいるのかシートがダラダラ。こんな下手なシート掛けを見たのは初めてです。
ゆっくりノロノロと走っているので、すぐに追いつきました。追いついて「危ない!」とブレーキを踏んでハッとしたんですが、私の前には誰もいません。
「アレ、今のはなんやったん?」とゾッとしました。暗闇でダラダラとシートを引きずるような荷姿に見えたものは、今思うとあの世への入り口だったのかもしれません。
幸い前にも後ろに1台のクルマさえなく、まっすぐの直線だったので事なきを得ましたが、そんな出来事で目が覚めて、無事に目的地に到着。ホントに怖い体験でした。
皆さんも眠い時は無理をせずに15分でも寝るか、どこかに停めて運転席から降りて気分転換することをお勧めします。睡眠物質ってやつは、寝るまで分解されないそうです。私もそれを先に知っておけば、無駄に不機嫌になったり試合後のボクサーの顏にならずにすんだと思います。
ハンズフリーの電話での会話も効果あり/鰻
運転中に眠くなった時の対処法ですが、自分は、まず眠たくならないように飴やガムを食べたり、珈琲を飲んだりします。あと、最近は電話をすることが多いです。あ、もちろんハンズフリーです!
仕事のこと、交通情報、たわいもない話などをして、眠気をそらしています。それでも、どうにもならない眠気の時には、やはり「寝る」に限ります! 5分でも10分でもシートを倒して休むようにしています。
時間に余裕がなくても、事故を起こしては意味がありませんから……。もちろん、そうならないような、無理のない配車が一番ですが。
あと、眠い時に思うのは、駐車場はあるもののトラック用の場所が少ないこと。一般道等では、休憩できる場所までの距離が長いところが多いと思います。
高速道路のようにとはいいませんが、ある程度の距離毎に休憩施設を設置して欲しいものです。
投稿 睡魔と戦うのは当たり前!? プロドライバーが実践しているリアルな居眠り運転の対処法 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。