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 スウェーデンの大手商用車メーカー・スカニアは2021年12月9日、新世代のハイブリッドトラックを発表した。導入するのは充電オプションやパワートレーンの異なるハイブリッドとプラグインハイブリッドで、さまざまな架装・用途に配慮した。

 商用車メーカー各社がBEV(バッテリー式電気自動車)やFCEV(燃料電池車)へのシフトを進めるなかでもスカニアは大型ハイブリッドトラックの開発を続けており、スカニアのハイブリッドとしては第4世代となる。

 新開発された「GE281・ギアボックス・エレクトリック・マシーン」と7/9リッター級のダウンサイズエンジンの組み合わせにより、同型のディーゼル車比で40%の燃費削減を謳っている。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部  写真/スカニアAB


スカニアの第4世代ハイブリッドトラック

 スウェーデンの商用車メーカーで、フォルクスワーゲンの商用車部門・トレイトン・グループに属するスカニアは新型のハイブリッド(HEV)およびプラグインハイブリッド(PHEV)トラックを発表した。

 HEVとPHEVでは充電オプションや電動パワートレーンが異なるが、これにより輸送業界の様々な要求に応える。例えば冷凍車とコンクリートミキサ、地域配送など架装や用途によって求められるものが違うからだ。

 ハイブリッドとはいえ、新規に開発されたGE281・ギアボックス・エレクトリック・マシーンと、7/9リッター級のディーゼルICE(=内燃機関)との組み合わせは、電気のみでの走行が可能で、バイオ燃料も使用可能なため、化石燃料フリーの輸送ソリューションを実現できる。

スカニアP320ハイブリッド

 独自開発した電動マシーン・GE281は、2つの電動モーターと、スカニアの「オプティクルーズ」トランスミッション(最新の2020年モデル)を一体化したもの。内燃機関のサポートなしに最大でGVW36tクラスの車両を駆動する。

 GE281単体での出力は230kW(continuous) / 290kW(peak)、最大トルクは2100Nm。前進6段のギアが組み込まれており、クラッチレスでシフト時にも途切れることのないトルクをもたらす。

 同機はまた、低速時のクリープトルクと、トラックを動かしながらのPTO(パワーテイクオフ)エンゲージにも寄与する。

Scania GE281
スカニアが大型トラックの電動化における革新的なソリューションと自負する「GE281」電動マシーン。内製のギアボックスに2つの電動モーターを組み合わせたもの

 もちろん、PTO作動時や加速時など電動マシーンは常にエンジンをサポートする形で動いており、これによりエンジンは重量と出力の両面においてダウンサイズが可能となった。

 ハイブリッド化により、従来の内燃機関と比べた場合に、都市部における走行では約40%の燃料削減を見込めるほか、積載重量も増加する(積載量アップについては後述)。

 新世代ハイブリッドトラックに組み合わされるキャブはP、G、Lシリーズで、長距離輸送用のトップモデルであるSシリーズは(今のところ?)無い。HEVはリジッド(単車)とトラクタ(けん引車)、PHEVはリジッドのみだ。

 エンジンは7リッター級のDC07型エンジンと、9リッター級のDC09型エンジンで、それぞれ3つの馬力帯により162~265kW(220~360hp)をカバーする。

 なおエンジンは、HVO燃料(hydrotreated vegetable oil:水素化分解油)やFAMEバイオディーゼルにも対応しており、燃料の選択もよるが全く化石燃料に依存しない運送も可能だ。

 アダプティブ・クルーズ・コントロールやダウンヒル・スピード・コントロールなど、従来車に搭載する機能は新世代のハイブリッドでも踏襲する。

 もう一つの重要な変更点は、GE281を車両のプライマリー(第1段)・ブレーキとしたことで、これにより車両減速時のエネルギー回生が中断されることが無くなった。

ハイブリッド化の詳細

 大型商用車のハイブリッドに取り組んでいる完成車メーカーは多くないが、スカニアはその中の一社だ。

 スカニアの上級副社長でEモビリティを担当するフレデリック・アラード氏は次のように話している。

 「GE281は大型トラックの世界では全く新しいものです。スカニアの第4世代ハイブリッドトラックにより、さまざまな架装と用途のハイブリッド化を可能にしました。比較していただければ、スカニアのハイブリッドが最善の選択肢になるでしょう」。

スカニアP250ハイブリッド

 実際にスカニアはこのセグメントにおけるパイオニアで、2014年に導入した第1世代の大型ハイブリッドトラックでは、電気のみでの走行距離は最大2kmだった。

 「この数字は、今日の”60km”という数字からすれば貧弱に見えるかもしれません。しかしこの産業にとっては重要な最初の一歩でした。排気ガスと騒音を出さない走行が確かに可能であり、もちろんハイブリッドソリューションにより燃料も節約できます。新たな水準をもたらす新型ハイブリッドでは、GE281の出力がICEを上回ることがしばしばあります。したがってICEの現在の重要な役割は、より長い区間を走行する時に航続距離を延伸することです」。(同氏)

 電動マシーンはパワフルなだけでなく、汎用性にも優れている。PTOは運転中も使えるし、電動走行中でも使える。馬力が足りない場合は、「パワーモード」を選択するとICEの回転数アップにより100hp(74kW)が追加されるなど、ドライバビリティも向上した。

 搭載するバッテリーは、PHEVが90kWh(3x30kWh)で、HEVは30kWh。PHEVの充電は95kWDC充電器で35分なので、休憩中や荷役中にもフル充電が可能だ。

燃費向上と積載量アップを訴求

 また、DC09型エンジンからDC07型のハイブリッドへダウンサイズすることで積載量は250kg増加する。エンジン重量の減少分を差し引いても、ハイブリッド化により車両重量は750kg増加する計算になるが、EUの規制は電動車両の積載量に最大1tのエクストラ・ウェイトを認めているためだ。
(注・日本では認められていません)

スカニアP250ハイブリッド

 ハイブリッドシステムによりどれだけ燃料を節約できるかは、もちろん、さまざまなファクターの影響を受ける。例えば運用方法、道路勾配、スタート&ストップを繰り返すなど……。

 高速道路を一定速で巡航しているときなど、電動モーターはあまり役に立たない。最も燃料削減効果が大きいのは交通量の多い都市部での走行で、最大で約40%の燃料を削減できるという。

 スカニアは将来的にトラックはBEV(バッテリー式EV)に置き換わって行くと考えている(実際にBEVトラックも発表している)が、航続距離が延び、あらゆる場所に充電インフラが整備されるまでは時間がかかるため、「少なくとも向こう10年は、ハイブリッドには確実に可能性がある」(同氏)という。

 柔軟性と使いやすさなど、スカニアが「今日、市場で購入できるトラックの中で最高の、成熟した本格的なハイブリッド」と語る新世代HEV/PHEVトラックは持続可能な輸送システムに向けた前進と言えそうだ。

 「電動化を進めるが、科学に基づいた二酸化炭素の削減によりパリ協定をサポートする」というスカニアらしい現実的なアプローチである。

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