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 開幕よりポルトガルでのダブルヘッダー戦となった2022年ERCヨーロッパ・ラリー選手権第2戦『アゾレス・ラリー』が3月26~27日にサンミゲル島を中心に開催され、地元の盟主リカルド・モーラ(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)を今季導入の最終パワーステージで撃破した、スペイン期待のエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)が大逆転勝利。劇的なかたちで自身とMRFタイヤにとってのシリーズ初優勝を決めている。

 開幕に引き続き、週末の雨予報で天候に翻弄されることが予測されたアゾレス諸島は、まだドライ路面のグラベル路で金曜から4.37kmのクオリファイステージを実施。ここで若手ドライバー対象のERCミシュラン・タレント・ファクトリー登録メンバーでもあるハビエル・パルド(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)が最速タイムをマークし、土曜からの出走順では「路面の掃除役」を嫌い、15番手スタートを選択した。

 しかし予報どおり本格ステージ開幕の土曜午前から、風光明媚な観光地に続くステージ上は容赦ない雨と霧に覆われると、出走順の有利不利は文字どおり霧散することに。この条件で強さを誇ったのが地元ポンタデルガダ出身のベテランで、2016年の同ラリー覇者でもあるモーラは、約半年ぶりのドライブにも関わらず勝手知ったる道を次々と制覇し、オープニングSSからラリーリーダーの座を維持してサービスへと帰還した。

「もちろん、路面上はかなりの雨量でどこも泥だらけさ」と、オーストラリア出身の2番手サイモン・ワグナー(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)に対し8.4秒のギャップを築いたモーラ。

「このコンディションの中でドライブするのはそれほど楽しいことではなく、とても困難な1日だった。午後のループでは良いリズムが見つからずに少しタイムを失ったと感じていた。でも残りのステージは問題なかったし、8秒差なんて無いのも同然。明日も仕事を続けるよ」

 ERC復帰組でもある2番手ワグナーの背後わずか0.6秒差に、今季はチームMRFタイヤから参戦のヤレーナが続き、4番手にはシュコダ以外で唯一トップ5に食い込んだケン・トーン(フォード・フィエスタ・ラリー2)、そして開幕戦2位のアルミンド・アラウージョ(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)が続くオーダーとなった。

 明けた日曜もステージ上でリードを維持し続けた首位モーラだったが、午後のループに入ると前日の発言を意識したか、後続からの追い上げを許す展開に。最後から2番目となるSS13“Sete Cidades”ではヤレーナが脅威のスパートを見せ、モーラとのギャップを7.7秒も削り取ることに成功する。

 迎えた最終パワーステージ“Feteiras”でもマキシマム・アタックを敢行したヤレーナは、1kmあたりのスプリットでモーラを1秒以上も上回る驚異のスピードを披露。地元スターのリードを劇的に覆し、フライングフィニッシュで2.7秒差の大逆転劇を演じてみせた。

■「獄のようにプッシュし、最後のパワーステージは200%だった」とヤレーナ 

地元の盟主リカルド・モーラ(シュコダ・ファビアRally2 EVO)が土曜オープニングSSから盤石のリードを築く
オーストラリア出身の国内選手権王者サイモン・ワグナー(シュコダ・ファビアRally2 EVO)はERC復帰で3位に
そのワグナーと表彰台を争ったケン・トーン(フォード・フィエスタRally2)は、最終日午前のトラブルで戦列を去る

「本当!? 僕らはモノ凄いことをやってのけたね! 午後は完全な“フルアタック”モードで行ったけど、最後の最後で逆転できるなんて……なんだか信じられないよ」と、喜びを爆発させた26歳のヤレーナ。「地獄のようにプッシュし、最後のパワーステージは200%だった。自分のチームとMRFタイヤを本当に誇りに思うよ」

 一方、わずかに届かず2016年の再現とはならなかったモーラも、ラリー後は勝者を称えるコメントを残した。

「それだけでは不十分だったかって? 結果的にはそのとおりだろうね」と語ったアゾレス通算10勝を誇るモーラ。

「もちろん少し悲しいが、最初のステージからラリーをリードしてきたのは紛れもない事実だ。それ以上にエフレン(・ヤレーナ)はとてもとても強く、とくに終盤のステージでは信じられないほど良かった。彼はこの勝利に値する」と続けた43歳のモーラ。

「私はおそらく、キャリアの終わりに近づいている単なる趣味のドライバーだ。私たちはできることをし、可能な限りプッシュして知識をうまく使えた。しかし2回目のループではリズムと改善能力が足りず、エフレンのペースに合わせることができなかった。最後の最後でこの結果は悲しいが、すべての群衆が私たちを応援しているのを見るのはとても幸せだった。本当に感謝しているし、その愛を返したい」

 その言葉を受け、次世代を担う勝者も勝負の厳しさと周囲への感謝を口にした。

「リカルド(・モーラ)はいつもこの地元で本当に良い仕事をし、とてつもなく速いドライバーだ。僕らは最終日午前に雨が降るとは予想していなかったからハードタイヤを装着したが、それが僕らにとって本当に困難だった」と続けたヤレーナ。

「でも最後のループでは真新しいハードタイヤが4本あり、リカルドはソフトタイヤが2本しかないことを知っていた。最終段階でより良いタイヤになることが分かっていたから、プッシュして勝利を手に入れようと考えたんだ」

「確かにERCでの初優勝は夢の実現で、何度か表彰台には上がったけれど、それに値する努力を重ねてきた。支えてくれる家族や友人にとっても素晴らしいことだし、裕福な家族ではないので今も200%で一生懸命に働いている」

「そしてMRFタイヤは本当に、本当に良い開発をしていて、つねに改善がある。素晴らしい雰囲気で戦えていることに心からの感謝を捧げたい」

 続くERC第3戦は、スペイン領カナリア諸島を中心に繰り広げられるスリッパリーなターマック戦『ラリー・イソラズ・カナリアス』が5月13~14日に開催される。

今季はTeam MRF Tyresから参戦のエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRally2 EVO)が最終日午後に猛然とスパート
「すべての群衆が私たちを応援しているのを見るのはとても幸せだった。本当に感謝している」と盟主リカルド・モーラ(シュコダ・ファビアRally2 EVO)
大規模な開発プログラムを敷いてERCへの挑戦を続けてきたTeam MRF Tyresにとっても、うれしい初優勝となった