横浜市は28日、2022年度当初予算案を発表した。一般会計は1兆9749億円。だが、山中竹春市長が選挙時に掲げた公約「3つのゼロ」についての予算が1円も計上されていなかったため、同日行われた市長記者会見では質問が相次いだ。
山中市長は選挙期間中、「『3つのゼロ』を目指します!」と宣言していた。具体的には、以下の3つを指す。
①敬老パス自己負担ゼロ(75歳以上)
②子どもの医療費ゼロ(0歳から中学生)
③出産費用ゼロ(基礎的費用)
敬老パスは、70歳以上の市民が申請できる特別乗車証で、市営地下鉄や市営バスなどが無料となる。従来は課税金額に応じて利用者が年額数千円〜最大2万500円まで負担する必要があったが、これをゼロにすると訴えていた。
また、横浜市の中学校は給食がないため、中学生たちは家庭の弁当や宅配弁当などを食べており、改善を求める声が根強かった。山中市長は選挙中、「子どもが中学生になったら生徒みんなで給食を食べられるようにします」と宣言していたが、これについても予算は盛り込まれなかった。3つのゼロとともに、「検討体制の整備」を行うという。
記者たちは公約の予算化見送りについて質問したが、「検討する」「進めていく」といった不明瞭な回答に終始した。主に以下のようなやり取りがあった。
記者に「具体化のスケジュールは?」と突っ込まれ…
【神奈川新聞】市民の皆さんとの約束である公約が計上されていない。特に3つのゼロや中学校給食の完全喫食(給食)という公約に向けての思いを教えてください。
【山中市長】市民の皆様からの声が大きい中学校給食、子育てしやすい環境、高齢者の外出支援。この3つのテーマについては、市会の皆様との議論を重ねながら着実に進めるために、庁内でしっかりと体制を整え、検討して参りたいと思います。
公約については選挙で投票していただいた市民の皆様とのお約束ですので、実現に向けてしっかりと取り組んでいきたいと考えております。
【読売新聞】中学校給食と3つのゼロについて、調査費も含めて予算計上されていない理由を教えて頂きたい。検討チームを作るとのことだが、具体化に向けてのスケジュールは?
【山中市長】公約で掲げた3つのゼロと中学校給食については、市がこれまで積み重ねてきた議論の経緯がございます。実現に財源も必要となる。持続可能な市政運営の第一歩を4年度から踏み出し、市会との議論が重ね、計画的に取り組んで行きたいという考えの表れです。
スケジュール感覚につきましては、今後、新年度に検討チームを作り着実に進めていきたい。任期4年間のなかで市会と議論、相談しながら進めていきたい。
【毎日新聞】公約の実現よりも、持続可能な財政運営を優先したということ?
【山中市長】財政ビジョンを先に策定しました。財政の持続性を確保していくという観点から基本方針や将来へのアクションを示している。施策の推進並びに財政の健全性を目指していく。その意識の表れでございます。財政ビジョンでは個別に事業の可否については含めてございません。今後の4年間の具体的な取り組みについて新年度以降、順次検討していくことになります。
【毎日新聞】4年間の任期中に公約を実現するという考えか、それとも実現に向けて進めていくという考えか?
【山中市長】中学校給食、3つのゼロをはじめ、約80の公約を掲げている。これらについては、任期4年のなかで着実にですね、進めていきたいと考えております。
【毎日新聞】実現するとは言い切れずに、進めていくと考えている?
【山中市長】公約につきまして実現する、あるいは実現に向けた道筋を付ける。そういった着実に進めていきたいと考え(がある)。さまざまな公約がございますので、いずれにつきましても実現する、または実現に向けた道筋を確実にお示しする。まあそういった取り組みを進めて参りたいと考えております。
【朝日新聞】3つのゼロと中学校給食に関して、自民党さんが反対の方向が強いようだが、そことの議論を進めるということ?
【山中市長】経緯も踏まえまして、これまで本市が積み重ねてきた議論の経緯がございます。実現に財源も必要となりますので、そういったことを踏まえて計画的に取り組んで参りたいと考えております。
【共同通信】3つのゼロは選択肢の一つなのか、それとも必ず達成させるという意気込みなのか?
【山中市長】3つのゼロや中学校給食を含め、公約については市民の皆様とのお約束でございますので、着実に進めていきたいというふうに考えております。公約全般に関して、市民の皆様とのお約束は、着実に進めていきたいと考えております。
話題の明石市長の批判には…
【朝日新聞】3つのゼロが予算に計上されていない。公約が予算に盛り込まれていないということについて、(※筆者注・兵庫県)明石市の泉市長がツイッターで公約違反ではないかとで呟いていたが、把握しているか?
市長にとって最も大切なのは『公約』(市民との約束)
市長の権限で可能なのは『予算編成』(予算案の作成)
議会が否決すれば、それも含めて『説明責任』(市民への経過説明)
約束した限りは、予算案提出までが責任というのが、私の考え。公約実現ゼロ…明石市長が一喝! https://t.co/rrNaTxVaP8
— 明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ) (@izumi_akashi) January 22, 2022
【山中市長】ツイッターの件は承知してございます。明石市長からは、いくつかツイートされたと承知してございますが、本質的には公約に向けて、市民との約束のために頑張れという応援のメッセージであるというふうに受け止めております。
私が公約に掲げたコロナ対策のほか、デジタル化、子育て支援、教育、脱炭素の取り組みなど、令和4年度予算案に計上してございます。また、精査はしてございませんが、私が掲げた公約の7割程度は令和4年度予算案に盛り込めたと考えております。その上で、中学校給食、3つのゼロにつきましては、市会の皆様とも議論を重ねながら、任期4年のなかで計画的に取り組んでいきたいというふうに考えております。
【朝日新聞】あくまでもエールだと?
【山中市長】エールだと思います。というような表現もあったというふうに理解しております。
フリーランス記者「不戦敗宣言か?」
【フランス10】選挙中は主に3つのゼロということをおっしゃっていた。1円も初年度の予算に盛り込まないのはなぜ?
【山中市長】先ほど申し上げた通り、横浜市がこれまで積み重ねた議論の経緯並びに、財源の実現のことを踏まえまして、今後任期4年のなかで計画的に取り組んでいく所存です。
【フランス10】もう一度聞きますよ。初年度に1円も盛り込まないのは、どういう意図なんでしょうか?
【山中市長】もう何度も申し上げておりますが、これまで積み重ねてきた議論の経緯がございますので、それを踏まえて、今後しっかりと検討体制を作り、市会の皆様と議論しながら進めていきたいと考えております。
【ジャーナリストの畠山理仁氏】3つのゼロについて、予算案としても提出しないということは、令和4年度の予算では不戦敗を宣言したということ?
【山中市長】そういうことではないというふうに何度か申し上げたつもりです。きちんと検討チームを作って、着実に前に進めていくということを申し上げております。
【畠山氏】給食と3つのゼロは市長選でのもっとも大きな訴えだった。これでは何のために選挙をしたのかと思ってしまうが、どうか?
【山中市長】まず任期は4年です。任期のなかでいかに市民とのお約束を果たすかという視点が重要だと思います。
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記者会見の後のツイッター上では厳しいコメントが目立った。
何も答えていないの等しい。
「市民の皆様との約束」を何度も何度も口にはするけれど、踏み込んだ具体案には至らないという生煮え回答。
この人、本当に大学で教えていたの?
横浜市長記者会見をフルで視聴しましたがキツイ 体に堪えるレベル,これを褒める人がいるというのは信じ難い,憧れの横浜が吹っ飛びます,当の山中竹春からは何にも感じられなかった,これを横浜共産がかばいだてする気持ちが理解出来ない,横浜共産はサッサと手を引くのが得策です,時間と労力の無駄です,
確かに、山中市長は回りくどい表現や空疎な言葉を延々と繰り返すばかりで、丁寧な説明とは程遠い内容だったのではないだろうか。「これまで積み重ねた議論の経緯」とは、どういう意味なのだろう。選挙中の公約が、絵に描いた餅にならないと良いのだが。