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共同通信が28日に配信した「マイナ保険証で初診21円増」という見出しの記事が波紋を広げている。記事によると、4月から病院などでマイナンバーカードと健康保険証の機能を併せ持つ「マイナ保険証」を使った場合、医療費3割負担の人は初診時に21円、再診時に12円上乗せされる。

「マイナ保険証」は政府肝いりの事業で、昨秋に本格導入したものの普及が遅れている。「マイナ保険証」に対応する病院への診療報酬を引き上げるために、診療費も値上げされるという。なお、「マイナ保険証」ではない既存の保険証で受診した人も2024年3月までは初診時に30円の診療報酬を加算する(保険料3割負担の人で窓口負担は9円増)。

マイナポータルより

「マイナ保険証」保有者も知らなかった

サキシルでは、今年結婚したことを機にマイナンバーカードを作成し、「CMで見て便利そうだと思った」という理由で、健康保険証の機能を付けた30代女性に話を聞いた。この女性は、「マイナ保険証」を使うと窓口での支払い負担が増えるという共同通信の報道を知らなかった。

「えっ!本当ですか⁉全く知りませんでした。(共同通信の記事を確認し)本当ですね。何か腹が立ちますね」

共同通信の報道によると、「マイナ保険証」を使うと3割負担の人で初診時に21円、再診時に12円上乗せされる。初診料は800円程度の病院が多い。例えば初診料が800円だとしたら、821円になる。ただ、この女性が腹立ちを覚える理由は、上乗せされる金額の多寡ではない。

「政府のやり方に腹が立ちます。まず、マイナンバーカードを作った時に市役所の方からは、窓口負担が増えるということは一切言われませんでした。ホームページにも記載されていませんよね⁉ 金額は確かに少ないかもしれませんが、これは詐欺ではないですか?民間企業だったら問題になっていますよ。健康保険証としての利用を取り消そうか考えてみます」

この女性の勤務先は、老舗料亭。料理やお酒の料金のほか、10%ほどのサービス料を設定しているという。そのことは予約の際、来店の際と2度に渡って客に確認するのだそうだ。そうしないと、トラブルになってしまうからだ。

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ホームページに記載なし

また、女性が憤ったように、マイナンバーカードに関するポータルサイト「マイナポータル」の健康保険証機能の申し込みページには、「マイナ保険証」を使うことによって窓口負担が増える可能性があることは一切記載されていない。

マイナポータルの当該ページに記載されていることは、「就職・転職・引越をしても健康保険証としてずっと使える!」「マイナポータルで特定健診情報や薬剤情報・医療費が見られます!」といった、「マイナ保険証」のメリットだけだ。これは、実際より良く見せかける表示を禁じている「景品表示法」の違反にはならないのだろうか。

ちぐはぐな政府の対応

なお、この女性は筆者に「健康保険証としての利用を取り消そうか考えてみます」と話していたが、マイナポータルの「よくあるご質問」ページを確認してみると、一度利用申し込みをしたら、取り消しはできないとのことだ。

当該ページには「従来の健康保険証も利用できる」とし、「利用申込はしたものの、マイナンバーカードを健康保険証として利用しないことで、不利益が生じることはございません」と記載されている。

政府は2022年度末までにマイナンバーカードほぼ全ての国民に行き渡らせることを目指している。そのために、巨額の税金を使ってカード所有者に最大2万円分のポイントを付与する「マイナポイント」事業を行っている。2021年度補正予算だけで事業費は1兆8134億円に上る。

その一方で、「マイナ保険証」を提示した人には、従来の保険証を使った人よりさらに診療費を上乗せするという。全くちぐはぐなことをやっていると言わざるを得ない。