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フルモデルチェンジが仇となった!? 先代の栄光を引き継げなかったクルマ6選

 世の中で販売される自動車は、一部の例外を除いてある程度のサイクルでモデルチェンジが行われる。しかし、モデルチェンジ=進化とも言い切れず、なかには先代の評価を維持できずに人気を落としてしまったモデルもある。今回はそうした“悲しき後継車”たち6モデルを紹介していこう。

文/長谷川 敦、写真/日産、トヨタ、ホンダ、ゼネラルモーターズ、FavCars.com

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ボディサイズを拡大したら魅力は縮小? 「日産 S14型シルビア」

フルモデルチェンジが仇となった!? 先代の栄光を引き継げなかったクルマ6選
衝突安全性や居住性、そしてハンドリングを重視して3ナンバー化された日産 S14型シルビア(写真は前期型)。しかし大胆な変更がアダになって販売台数は減少

 それまでのイメージを一新し、流れるようなボディフォルムで登場した日産 シルビアの5代目S13型は、発売がバブル景気真っ只中の1988年ということもあって、歴代シルビアでは最高となる30万台の販売台数を記録した。そしてその後継モデルとして1993年にデビューしたのが6代目S14型シルビアだった。

 S14型の注目ポイントはシリーズ初の3ナンバーサイズだったこと。プラットフォームこそ先代から受け継いだものの、ボディが拡大され、エンジンもパワーアップを実現している。ボディフォルムはS13型に比べてややファットなイメージになり、先代の持っていたシャープな印象が薄れてしまったことは否めない。

 この時期にはバブル景気も終焉を迎えていて、バブル期に開発されたS14型のゴージャス感が時代の空気にそぐわなかった不運もあって販売台数は低迷。1996年のマイナーチェンジでフェイスリフトを実施して巻き返しを図るが、結局販売は伸びないまま1999年登場の7代目S15型にバトンを渡すことになった。

 5ナンバーに回帰してデザインを大きく変えたS15型は一定の評価を得たものの、すでに世の中の志向はスポーツカーから離れつつあり、シルビアシリーズは2002年をもって37年の歴史に幕を下ろした。

 S14型シルビアは決して不出来なクルマではなかったが、時代に適合せず、さらには先代の成功が足かせになり、結果的にシリーズ終了のきっかけを作ってしまった。

まさかのFF一本化がイメージダウンに? 「トヨタ T230型セリカ」

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先代とはまったく異なるフォルムで登場したトヨタの7代目セリカ(1999年)。駆動方式もFFのみになり、エンジンも1.8リッターNAだけとなった

 1970年に登場したトヨタ セリカは、日本初のスペシャルティカーとして登場し、当時では先進的なボディフォルムとパワフルなエンジンが人気を集め、大ヒットモデルになった。その後もセリカはスポーティなGTカーの地位を確立して派生モデルのスープラを生み出し、4WDバージョンのGT-FOURが世界ラリー選手権で勝利するなど、活躍の場を広げていった。

 そんなセリカが1999年にフルモデルチェンジされ、シリーズ7代目が登場した。しかし7代目T230型セリカは、それまでにあった4WDバージョンを廃止して、FFのみのライトウェイトスポーツクーペに生まれ変わっていたのだ。

 FFへの一本化によって軽量化に成功し、エンジンもNA(自然吸気)タイプのみとしたことで、軽快なハンドリング特性と小気味よいスロットルレスポンスを実現した7代目セリカは、運動性能に関しては評価が高い。

 だが、パワフルな4WDターボモデルがなくなったことは販売に悪影響を与えてしまい、さらには大きく変更されたスタイルも、従来型セリカの進化版を求めていたユーザーの心には響かなかった。

 それによって7代目セリカの販売台数は先代の1/3以下にとどまり、この7代目がセリカシリーズ最後のモデルになってしまった。

太陽の光は走り屋に降り注がず? 「ホンダ CR-Xデルソル」

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ホンダ CR-Xデルソル。それまでのCR-Xとは大きく意匠を変える戦略が採用されたものの、この変更にユーザーがついていけず、シリーズも打ち切りとなった

 ホンダ CR-Xは、FFライトウェイトスポーツというカテゴリーを定着させたモデルとしても知られている。特に1983年発売の初代とそれに続く2代目CR-Xは、コンパクトなハッチバック(ファストバック)スタイルボディと、気持ち良く回るエンジンの組み合わせがもたらすキビキビとした走りで人気を博した。

 だが、1992年登場の3代目で状況は一変する。新たに「デルソル」の名称が与えられた新型CR-Xはそれまでのコンセプトを大きく変え、電動オープントップを装備し、ボディフォルムも先代の面影をほとんど残さないものへと変貌していた。

 電動オープントップの搭載などによって重量が増え、従来のCR-Xが武器としていた軽快感も薄れてしまったデルソルの販売台数は落ち込み、1999年に生産を終了。CR-Xシリーズもこのデルソルが最後のモデルになった。

 スペイン語で「太陽」を表すデルソルの名を持った3代目CR-Xだったが、その陽射しはユーザーの心を照らせなかった。

「クジラ」は史上最大の失敗作!? 「トヨタ S6/7系クラウン」

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スモールライトとウインカーの位置が個性的な4代目トヨタ クラウン。全体のフォルムも丸みを帯びた独特なもので、ボディと同色のカラードバンパーも採用

 現行の4ドアセダンはいったん終了し、SUVへの転向もウワサされるのがトヨタのクラウン。日本の高度経済成長を象徴する存在だったクラウンにも、実は失敗作と呼ばれるモデルがあるのをご存じだろうか?

 1955年に登場した富裕層向け純国産高級車がクラウン。その4代目モデルが発売されたのが1971年だが、この4代目S6/7系が“やらかして”しまったクラウンだ。

 先代の格調を重んじた重厚なスタイルから、スピンドルシェイプと呼ばれる丸みのあるフォルムに変更された4代目は、2.6リッターエンジンの搭載やシリーズ初の「スーパーサルーン」グレードの設定など、意欲的な試みが数多く盛り込まれていたものの、先進的すぎるフォルムが敬遠されて販売台数が低迷し、ライバルだった日産のグロリア&セドリックに逆転を許してしまった。

 このため「クラウン史上最大の失敗作」の烙印を押され、1974年には早くも後継の5代目が用意された。この5代目で売り上げが復活したことがさらに4代目の立場を悪くしてしまったが、「クジラクラウン」とも呼ばれた独創的なフォルムを評価する声が多かったのもまた事実だった。

薄れゆくスポーティさと迷走の始まり? 「トヨタ Z30型ソアラ」

フルモデルチェンジが仇となった!? 先代の栄光を引き継げなかったクルマ6選
代目トヨタ ソアラ。先代とは対照的にのっぺりとした顔つきになり、シャープな印象はなくなっている。パワフルな4リッターV8エンジンモデルも用意された

 2ドアハードトップタイプの車体に高出力エンジンを搭載するという高級志向のコンセプトが人気を呼んだトヨタ ソアラ。特に1981年発売の初代モデルは、高性能と美しいデザインが評価され、好調なリリースを記録すると同時に第2回日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、一躍時代を代表するクルマになった。

 1987年には2代目が登場するが、このモデルは先代の正当な継承車であり、けっして安価なクルマではないにもかかわらず、バブル景気も後押しとなって大ヒットしている。

 そんなソアラの3代目(Z30型)がリリースされたのが1991年。ユーザーは今回もまた前作の正常進化版を期待したのだが、彼らの目の前に現れたのは、直線を基調にした先代とは打って変わったラウンドシェイプのソアラだった。

 “ナマズ顔”とも揶揄された3代目ソアラのフロント回りは、先に紹介したCR-Xデルソルとも共通のイメージであり、この時代の流行と言えないこともなかったが、シャープ感が減ったこのスタイルは従来のソアラユーザーからの拒否反応も強く、販売成績も低迷した。

 この3代目ソアラは国外ではレクサス SCとして販売され、それは続く4代目でも同様だった。ただし2010年からは国内でもレクサス SCが発売されることになり、ソアラの歴史はこの時点で終了している。

未来型デザインが“マッチョ”なイメージを損ねた? 「シボレー 6代目カマロ」

フルモデルチェンジが仇となった!? 先代の栄光を引き継げなかったクルマ6選
2015年にリニューアルされたシボレー カマロ。前作とは大きくイメージが変更されているが、これがユーザー離れを招くことになってしまった

 ゼネラルモーターズ(GM)が販売するシボレー カマロが、アメリカンマッスルカーを代表するモデルであることに異論を唱える人はまずいないだろう。

 そんなカマロも年の登場以来モデルチェンジを重ね、2015年には第6世代にあたるモデルが登場した。このモデルチェンジでは思いきった変革が行われ、カマロのデザインはそれまでの伝統あるものからよりスッキリとした未来志向なものになった。

 だが、ユーザーがカマロに求めていたのはこうした上品な未来感ではなかった。その証拠にモデルチェンジ後の販売成績は大きく降下してしまい、それまでトップの座にあったアメリカンマッスルカー販売第1位の座をフォード マスタングに譲ることになった。

 この状況を重く見たGMでは、カマロのフェイスリフトを実施するなどの対応を進めているが、販売状況を大きく改善するまでには至っていないという。挙句の果てにはカマロという車種が近い将来に消滅してしまうというウワサまで出ている始末。

 1967年から販売されているカマロが存続の危機に立たされた事実や、今回紹介したいくつかの車種が失敗作の時点で販売を終了していることからも、クルマのモデルチェンジを成功させるのがいかに難しい仕事なのかを理解できる。

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