マツダにおけるグローバルの約1/3、もちろん国内でも販売の中核モデルとなるのがCX-5であることは多くの人が理解しているはずだ。
これまでも「新しい技術は積極的に導入する」というスタンスで年次改良を行ってきたCX-5だが、昨年11月に行われた年次改良モデルは発売開始からまもなく5年を迎えるのに手綱を締めるどころか「これでもか!」と思えるほどの進化を遂げている。
今回新たに追加された特別仕様車「フィールドジャーニー」から見えてくる、マツダ進化論を試乗から紐解いていく。
文/高山正寛、写真/萩原文博
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発売約5年で約6回も商品改良を行い進化を続ける
2017年に発売を開始したCX-5(発表自体は2016年)だが、これまでのマイナーチェンジ/フルモデルチェンジという概念より、毎年(確定ではないが)のように商品改良を行っている点は輸入車の感覚に近いとも言える。
実際、特別仕様車の追加などを除けば、パワートレーン系や足回り、昨今的にはADAS(先進運転支援システム)やインフォテインメントシステムなどもアップデートしており、もし中古車での購入を考えた場合、それらの進化をきちんと把握して選ぶ必要もある。
新規ユーザーにとっては嬉しい進化も現オーナーからすれば「ええ、そこ改良したの~」なんて声も聞こえてくるが、それでもマツダは「今ある技術を積極的に投入する」というスタンスだ。この部分はマツダ車の“美点”とも言えるし、多くのファンに支持されている理由のひとつでもある。
今回の大幅改良はかなりのレベル
CX-5も含めて、マツダ車の商品改良は「ここまでコストかけて大丈夫か?」と思えるほど開発陣が真摯にクルマの商品力を高めてきた結果だが、実際今回は従来以上のアップデートが行われている。
まずデザインだが、基本造形は変えないとしてもフロントグリルやヘッド&リアコンビネーションランプの造形を変更しているのが特徴だ。
CX-5のフロントグリルはシグネチャーウイング(フロントグリル下部からヘッドランプへ繋がる翼のような造形のこと)が特徴だが、パッと見ただけで太さ自体が変わっていることがわかる。フロントフェイスの面積に対して少し線が弱かった部分はこれによりタフな印象になっている点は後述する特別仕様車にもマッチする。
またヘッドランプも外形だけでなく、LEDを4灯にすることで全体として精悍さもプラスしている。
今回、改良前モデルと比較する機会にも恵まれたが、全体的にフェイス自体はキュッと締まった感じと同時に前面への押し出し感もプラスされている。
ダイナミクス性能の進化に関してはマツダの“十八番”と言えるものだが、ボディや足回りに関しては車体フレームに減衰構造の採用や、スプリング&ダンパー特性の見直しなど多岐に亘っている。
後述するが特に乗り心地に関しては確実に向上しており、これは誰が乗っても感じることができるほどだ。
パワートレインに関しては従来まで搭載されていた「ドライブセレクション」を進化させた「Mi-DRIVE」を採用。「NORMAL」「SPORT」のほか、フィールドジャーニーに関しては「OFF-ROAD」モードがプラスされる。
そして資料を読み込んでいて驚いたのが今回、2.5L直4ターボ(ガソリン)が廃止されたことだ。個人的には全域での太いトルクとキレの良い加速感は気に入っていたのだが、トルクの太さではクリーンディーゼルがあるし、何よりも販売上売れなかったことが影響しているとのこと。商品がいくら良くても市場とのマッチングが悪ければ売れないのも現実。
ただCX-5に関して言えばクリーンディーゼル車がほとんどの領域をカバーできるので、これも止むなし、なのかもしれない。
大幅改良を行ったCX-5の車両本体価格は267万8500円〜407万5500円。特別仕様車は、Exclusive Modeが352万5500円〜407万5500円。Sports Appearanceは325万6000円〜380万6000円。そして、Field Journeyは323万4000円〜355万3000円となっている。
まさに“特別”な新グレードの設定そして新色のボディカラーも斬新
前述した2.5Lガソリンターボ車の廃止以外は基本的なグレード構成に変化は少ない。と言うか、今回の“売り”は3種類の特別仕様車だろう。
これまでにマツダは魅力的な特別仕様車を数多くラインナップしてきた。最近のニュースとしては昨年発表した「Black Tone Edition」が人気、特に若年層から高い支持を受けているとのことだ。
それを受けて、今回のCX-5には
●従来から販売されているより「Exclusive Mode(エクスクルーシブ・モード)」の仕様向上。
●スポーティな雰囲気をさらに高め都市型SUVの新しい提案となる「Sports Appearance(スポーツアピアランス)」の設定。
●そして最も注目したいのが、オフロード性能を高めながらアウトドアライフにも対応できる仕様と性能を身につけた「Field Journey(フィールドジャーニー)」を新設定していたことだ。
特別仕様車とは銘打っているが、基本は期間&台数限定ではないので、焦ることなく注文は可能だ。但し、昨今の半導体不足の影響は含まれないが・・・
試乗に関しては2.5L直4ガソリンのスポーツアピアランス(FF)と、2.2L直4クリーンディーゼルのフィールドジャーニーの2台に試乗した。今回は目玉といえるフィールドジャーニーを中心にインプレッションを紹介する。
スポーツアピアランスにはFFのほか、4WD車も設定、さらにエンジンも2.2Lディーゼルが選べる。一方フィールドジャーニーは2.2Lディーゼルのほかに2L直4ガソリンが選択可能。但し、駆動方式はグレードの性格なのか4WDのみの設定。特別仕様車のトランスミッションはすべて6速ATとなる。
用意された試乗車は車両本体価格355万3000円のフィールドジャーニー。ボディカラーは新色の「ジルコンサンドメタリック」。ジルコンサンドは酸化ジルコニウムとシリカの化合物とのことだが、その特性上、高価な合金を鋳造される際に使われるとのこと。
他社のことをディスるつもりはないが、いわゆる「アウトドア系カラー」ではなく、これは新しいカラーデザインの提案。実際このボディカラーはフィールドジャーニーだけでなく、他のグレードでも選ぶことができる。
都市型だけではもったいないAWD性能はアウトドア仕様で本領発揮
これまでCX-5はどちらかと言えば「都市型(アーバン系)SUV」としての側面が強かった。もちろんAWD性能に関しても非常に優れていたが、イメージというものは一度付くと払拭するのも難しい。マツダの担当者によれば「昨今、盛り上がっているアウトドア人気にも対応できることをさらにアピールするためにも新グレード(特別仕様車)の設定は必要だった」と言っている。
フィールドジャーニーには専用外装やオールシーズンタイヤ&グレーメタリック塗装の17インチアルミホイールのほか、インテリアにもライムグリーンをシートステッチやエアコンルーバーに採用。またラゲッジルームにリバーシブルボードを使うことでアウトドアの利便性も高めている。
まず試乗して感じたのは乗り心地がすこぶる良くなっている点だ。余談だが日々腰痛で悩んでいる筆者にとってはシートの出来や路面からの振動には敏感になっている。
今回、CX-5のシートにはすでに新世代モデルであるMAZDA3やCX-30から採用しているシート構造を採用していると言う。具体的には骨盤を制御することで脊椎を自然なS字カーブにするとマツダ側は説明しているが、何よりも走行時の上下左右方向を含めた身体のブレや揺れが本当に少ない。まるでクルマに吸い付くようなフィット感は極めて快適で、これに関しては前モデルより大きく進化した点と言っていいだろう。
乗り心地に関してもオールシーズンタイヤを装着していても、路面からのノイズ侵入や微振動の侵入はうまく抑え込んでいる。これはノーマルタイヤを装着するスポーツアピアランスでも同様だったが、加速時&ブレーキ時の挙動の少なさに関しても良く仕上げられている。ひと言で言えば、路面を這うような滑らかなフィーリングである。
一方オフロード性能に関しても前述した「Mi-DRIVE」の制御が上手く効いている。元々マツダ車に採用されている「i-ACTIV AWD」はあらゆる路面での走りをドライバーが意識することなくサポートする万能型のAWDシステムだったが、今回はフィールドジャーニー専用装備として同社自慢のGVCにもオフロードモードを追加。
さらに登坂時のアイドルアップ制御、中高速AWD制御(150km/hまでAWD走行が可能)、ATのトルコン制御(ガソリン車のみ)などオフロードモードに新機能を追加している。ちなみにスタック時の脱出をサポートする「オフロードトラクションアシスト」は従来通り4WD車全てに標準装備される。
試乗会場に用意された特設コースでは1輪が浮いてしまうことでタイヤが空転してしまう状態を再現。この状態でもオフロードモードにすれば空転したタイヤにブレーキをかけることで駆動力を伝達する。これによりスムーズな脱出や走りをサポートしてくれる。また前述したようにガソリン車のみにはなるが、操舵角などを検知して登坂時にアイドルアップ制御を行うことで発進時などの後退を抑制する効果もあるそうだ。
このほかにも本当に細かい部分おいて変更が行われており、個々の性能向上だけではなく、トータルでCX-5という商品の魅力が向上していることがわかる。
これまでのCX-5を否定するつもりはさらさらないが、やはり「最新は最良」の部分が大きく、もはや熟成の域に達したと言ってもいいだろう。今後CX-5がどう進化するか予想はできないが(次期型はあるのか?など)、ここまで性能や商品力を高めているのであれば「買いの1台」としてオススメできる。
今回の大幅改良のメニューを考えると、バリューが相当高くなっていると感じる。個人的には将来のリセールバリューも含めるとCX-5に新たな魅力を生んだクリーンディーゼルのフィールドジャーニーがオススメしたい。
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