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立憲民主党の菅直人元首相が、日本維新の会の創設者で弁護士の橋下徹氏をヒトラーに例えたことをきっかけに、両党の小競り合いが続いている。日本維新の会の藤田文武幹事長が立憲民主党に抗議文を提出し、立憲民主党の逢坂誠二代表代行が「党としてどうこうということは特段の必要はない」と発言するなど、党を巻き込んだ騒ぎとなっている。

菅直人氏(写真:ZUMA Press/アフロ)

そんな中、さらなる物議を醸しそうな投稿を菅氏が再び行った。菅氏は、27日午前、次のようにツイートした(太字は筆者)。

維新が国政選挙で東京に大挙進出を図ることは必至。大阪維新が都構想が否決されたにもかかわらず、大阪で絶大な政治勢力を築いた原因がどこにあるのか、研究し始めた。自治体の役人が優遇されているという、維新の「役人天国」批判に低所得者層の人達が共鳴し、支持を広げたとの分析が有力。

「分析が有力」としたことで、自分の独自見解ではないということを暗に示しているものの、日本維新の会の支持者を「低所得者」と決めてかかったような物言いだけに、案の定、同党の反発を呼び込んだ。

同党代表で、大阪市の松井一郎市長は27日午後に行われた記者会見で「民意を所得とひも付けることは許されることなのか」と反発。同党副代表の大阪府の吉村洋文知事も「所得の高い、低いを支持に結びつける、発想そのものが理解できない」と述べている。

写真:つのだよしお/アフロ

また、自民党大阪府議団の原田亮幹事長も、ツイッターで苦言を呈している。

これはアカン。自民党も、立憲民主党も、大阪では支持されていない。でもそれを有権者のせいにしたら終わり。どうしたら支持を得れるか自らの襟を正し、捲土重来を期して頑張らないと、です。自戒を込めて。

「維新の支持者が低所得」は本当?

そもそも、菅氏がツイートするような、日本維新の会の支持者が低所得者であるという「分析が有力」というのは本当なのだろうか。

日本政治思想史が専門で、関西学院大学法学部教授の冨田宏治氏は『月刊住民と自治』 (2018年11月号)に「維新政治の本質―その支持層についての一考察―」というタイトルの論文を寄稿。その中で、日本維新の会の支持者を「勝ち組・中堅サラリーマン層」であると指摘。維新の支持者は低所得者層が多いというのは、「ある種の都市伝説」と看破している。

世界100か国以上が参加する国際的プロジェクト「世界価値観調査」による、World Values Survey(世界価値観調査)という調査がある。日本では、2019年9月に「明日国政選挙が行われるならどの党に投票するか」という調査が行われた。

年齢階層別と所得区分別に、支持政党の調査が行われている。調査によると、日本維新の会の全体の支持率は6.3%。低所得層で6.3%、中所得層で6.5%、高所得層で6.6%の支持率だった。日本維新の会の支持率に、所得による有意な差は認められなかった

少なくともこの調査結果を見る限りにおいては、菅氏がツイートするような傾向はない。菅氏は何を見て、あるいは誰に聞いて「日本維新の会の支持者は低所得」と思ったのだろうか。

菅氏は後に、「辻元さんは衆院選で維新に敗れ、捲土重来を期して参院全国区で挑戦する。大阪でどれだけ支持が得られるかを注目。大阪で維新を超える支持が得られれば完全勝利、頑張ってほしい」とツイートしている。立憲民主党が本当に大阪で支持を得たいのであれば、まずはイメージや思い込み、偏見に囚われない正しい現状認識が不可欠だと思うがどうか。