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今あえてプリウスを選ぶのはアリ!? プリウスはやっぱり唯一無二のハイブリッドカーだった

 ハイブリッドカーといえばトヨタ プリウスを思い浮かべる人が圧倒的なはず。だが、今やコンパクトカーからミニバン、さらにはSUVに至るまでハイブリッドをラインナップするモデルがほとんどである。そんな今、あえてプリウスを選ぶ理由はあるのか!?

筆者/渡辺陽一郎、写真/TOYOTA、ベストカーWEB編集部

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電動化遅れなんてのは違う! トヨタの電動化戦略は多様化がキモ

世界初の量産ハイブリッド乗用車として、1997年に発売された初代プリウス

 日本のメーカーは、電動化が遅れているといわれるが、そんなことはない。トヨタは1997年から、エンジンとモーター駆動を併用するハイブリッドを手掛け、日産やホンダなども複数のハイブリッドを用意する。

 そしてハイブリッドには、電気自動車の要素も含まれるから、技術は蓄積されて市場のニーズに応じて商品化することが可能だ。トヨタは2021年12月に電気自動車の試作車を一斉に披露して、2030年には350万台販売すると発表したが、これも当然の流れであった。

 それまでのトヨタが電動車の表現を控え目にしていたのは、170以上の国と地域でクルマを販売しているからだ。この中には電動化が困難な国と地域も含まれ、「すべてを電気自動車にします」といえば、その顧客を見捨てることになってしまう。ビジネスにおいても、人道的にも、地球上に充電インフラの整わない地域が残る限り、トヨタは内燃機関を搭載したクルマを造り続ける。トヨタとは、そして日本の企業とは、そういうものだと思う。

かつてはバカ売れしたプリウス! 現在はかつての2割程度の販売台数

1.8L2モーターハイブリッドを搭載して動力性能と燃費が両方ともに向上。205万円からという価格で大ヒットとなった3代目プリウス

 この多様化するトヨタの礎を築いたのが、ハイブリッドのプリウスだ。1997年に世界初の本格的なハイブリッド車として発売され、世界的に知名度を高めた。

 日本でとくに好調に売られたのは、2009年登場の3代目プリウスだ。2010年には約31万6000台(1か月平均で2万6300台)が登録された。2012年には、プリウスαの追加もあり、約31万8000台へ若干増えている。

 ちなみにホンダ N-BOXの2021年における届け出台数は、18万8940台(1か月平均で同1万5745台)であった。ヤリスシリーズ(ヤリス+ヤリスクロス+GRヤリス)でも21万2927台(1か月平均で1万7744台)だから、3代目プリウスの売れ行きは凄かった。

 この時に比べると、今のプリウスは大人しい。コロナ禍の影響があるものの、2021年の登録台数は4万9179台(1か月平均で4098台)だ。2010年の16%に留まる。

プリウスは今も堅調な売り上げも、販売台数下落のワケはライバル出現が最大の要因!

 プリウスの売れ行きが下がった背景には、近年になって、トヨタのハイブリッドモデルが増えた事情もある。2010年頃は今と異なり、アクア、カローラシリーズのハイブリッド、シエンタやヴォクシー&ノアのハイブリッドは用意されていなかった。その代わりSAIやエスティマハイブリッドを選べたが、「ハイブリッドといえばプリウス」という老舗の強い説得力が伴っていた。

 直近となる2022年2月(単月)におけるトヨタのハイブリッド車の登録台数を見ると、最も多いのはライズeスマートハイブリッドで5300台だ。次がカローラクロスハイブリッドの5000台、ヤリスクロスハイブリッドは3600台とSUVが続き、プリウスは3300台になる(その内の300台がPHV)。これに続くカローラツーリングハイブリッドは2000台だ。

 このようにプリウスの売れ行きは、以前に比べて大幅に下がった。同じトヨタに、コンパクトからミドルサイズのハイブリッドが増えた結果だが、それでもプリウスは1か月に3000~4000台は安定的に売られている。

プリウスの歴史は伊達じゃない! ブランド力はクラウン・ランクル以上か!?

 トヨタにさまざまなハイブリッドが用意される中で、プリウスはどのようなユーザーが購入しているのか。販売店に尋ねると以下のように返答された。

「プリウスのボディタイプは、正確には5ドアハッチバックだが、お客様はセダンと同様に認識されている。ミニバンやSUVに興味のないお客様、あるいは仕事に使う法人を含めてフォーマルな雰囲気を重視するお客様は、プリウスを選ぶことが多い。カローラクロスやカローラツーリングは、やはり遊びの要素が強まるからだ。またプリウスは歴史が長く、20年近くにわたり乗り継いでいるお客様も少なくない」。

 このようにプリウスは、ファミリー指向や遊び感覚を抑えて仕事にも使いやすいから、幅広いユーザーの間で人気を高めた。

 また別のトヨタの販売店からは、外観に関する話も聞けた。「2代目以降のプリウスは、外観に特徴がある。天井を後方に向けて下降させたデザインは、遠方から見ても、ハイブリッド専用車のプリウスと分かる。そのために環境対応に力を入れる企業は、社用車としてプリウスを使われることが多い」。

 確かに取引先の企業へ出かけた時に、「御社は社用車もハイブリッドのプリウスなんですね」と気付いてもらえれば、企業のイメージアップに繋がるだろう。その点で、プリウスとアクア以外では、ハイブリッドであることが分かりにくい。

 つまりハイブリッドであることを周囲にアピールしやすいことは、プリウスにとって大切なメリットになるわけだ。

プリウスの魅力はやっぱり燃費! 実用性の高さもピカイチ

 ボディサイズの割に、燃費性能が優れていることもプリウスの特徴だ。プリウスSは、全長がカローラツーリングハイブリッドSよりも80mm長いのに、WLTCモード燃費は30.8km/Lに達する。カローラツーリングハイブリッドSのWLTCモード燃費は29km/Lだから、プリウスは軽量化や空力特性によって燃料消費量を少なく抑えた。走行距離が伸びるなど、燃料代を節約したいユーザーにとって、大きなメリットを発揮する。

 実用性の高さにも注目したい。プリウスはカローラツーリングに比べて、後席の足元空間が広い。身長170cmの大人4名が乗車した時、カローラツーリングの後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシ1つ半に留まる。それがプリウスであれば、腰が少し落ち込む着座姿勢になるものの、膝先に握りコブシ2つ半の余裕がある。3~4名で乗車する時の快適性は、プリウスが勝る。  

 荷室については、プリウスはリヤゲートを大きく寝かせたから、背の高い荷物を積む時は不利だ。その代わりプリウスでは、リヤゲートのヒンジが前寄りに装着されるため、開閉時に後方へあまり張り出さない。縦列駐車をしているようなボディの後ろ側が狭い場所でも、荷物を出し入れできる。リヤゲートの開口部も広いから、プリウスならボディの側面に立って、荷物を出し入れすることも可能だ。

プリウスは不滅! トヨタのイメージリーダーに

 以上のようにプリウスは、ハイブリッド車に重要な燃費性能、後席の広さ、荷物の出し入れのしやすさ、さらにハイブリッド車としてのイメージなど、今でも複数のメリットを備えている。

 そのためにハイブリッドが数多くのトヨタ車に搭載される今でも、プリウスは廃止されない。アクアを存続させている背景にも、同様の理由がある。プリウスはこれからも、トヨタのハイブリッド車、そして環境性能の優れたクルマの代表として、最先端技術を取り入れながら進化していくだろう。クラウンと並び、トヨタのブランドイメージを支える大切な柱になっている。

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