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マイルドヤンキーに人気? モデル末期のアルファードは高額車なのに売れる秘密はどこにある?

 アルファードは2015年1月のデビューから7年以上が経過、それでも日本車の販売ランキングでは2021年には最高3位にランクインし、10月以降は落ち込んできたものの、直近の2022年2月にはいまだにトップ10に入っている。

 高額車のLサイズミニバンでありながら、ひと月に4500台以上売れているという、化け物級の人気を誇っている。

 なぜ、これほど売れているのか?

 そしてクルマとしての熟成の進んだモデルサイクルの終盤の、2022年3月の決算期末を控えた販売現場の状況がどのようになっているのか? さらにお買い得な買い方はあるのか、納期はいつなのかなど、実際に見積書をもらいながらレポートする。

文/柳川 洋
写真/トヨタ、柳川 洋

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■やっぱり大人気の2.5 S Cパッケージはこんな理由で選ばれる

2.5LガソリンのS Cパッケージ7人乗り、2WD。価格は468万1600円
パワートレイン、駆動方式、インテリアなど選択肢が多くて目移りするが、S Cパッケージを買っておけば間違いない

 トヨタディーラーで、アルファードのカタログを見せていただくと、その分厚さに驚かされる。そしてグレードごとの標準装備の比較を見ると、バリエーションの多さに再び驚かされる。

 ハイブリッド、V6の3.5L、直4の2.5Lの3種類のパワーユニット。E-Four、2WD、4WDの駆動方式。そしてナッパレザーシートが奢られたエグゼクティブラウンジから、機能的なファブリックシートまで幅広いインテリアのチョイス。

 エクステリアがよりアグレッシブな方がいい、という人にはベルファイアという選択肢まである。

 だがそのなかでも「鉄板」のグレードといわれているのが2.5LのS Cパッケージ。車体本体価格は468万1600円と、同等の装備を持つハイブリッドよりも約100万円、V6よりも約60万円安いのに、誰もがアルファードに期待する高級感あるインテリアや充実した装備を採用しているため、大人気となっている。

 営業マンいわく、「S Cパッケージの実走行ベースでの燃費は1Lあたり8〜9キロほどです。ハイブリッド車の実燃費は11〜12km/Lで、3キロ程度しか変わらないのに100万円高いと、どうしても割高に見えてしまうんです」とのこと。

 確かにその燃費だと、年間1万キロ走ってもガソリン代は6万円ほどしか変わらないため、ハイブリッドの元を取るのは難しい。

 また細かいことだが、ハイブリッド車は、エンジンをかけたままフルフラットにして仮眠しようとすると、およそ5分に1回の間隔でエンジンが始動するために、音と振動で起こされてしまうこともあるそうだ。

 「V6は301psを誇るものの、ハイオクガソリン指定となります。2.5LのS Cパッケージの直4エンジンは、182psと必要十分なパワーがあり、レギュラーガソリンでOK。ガソリン代の高い近ごろは、やはり値段の安いレギュラーガソリンの方がいい、とおっしゃられるお客様が多いです」とのこと。

 外観も、2パターンあるフロントバンパーでも押し出しの強く見える「エアロバンパー」を採用。内装パネルはブラックとメタリック調で迫力があり、ハンドルも本革とメタルウッドのコンビネーション。

 そして一番大きな売りは、ヘッドレストが大きくて頭をゆったりと支えてくれ、足をゆったりと伸ばした時に支えてくれる電動オットマン付きのエグゼクティブパワーシート。この装備と価格のバランスだと、売れない方がおかしいと言い切ってしまえるぐらいだ。

 現在販売中の特別仕様車、S TYPE GOLD IIのカタログを見せてもらって説明も受けたが、

 「S Cパッケージとほぼ同様の外観で、40万円ほど安くて手に入れやすいんですが、アルファードらしさを一番楽しんでいただけるシートがファブリックなので、アルファードが好きな自分としてはS Cパッケージをお勧めします」と営業マンが教えてくれた。

 見た目とコストパフォーマンスが一番大事、という人は、4月27日の登場が予定されているS TYPE GOLD IIIを待ってみてもいいかもしれない。ちなみにレギュラーモデルも一部改良が行われるが、安全装備や質感が向上。

 具体的には法規対応のほか、ブラインドスポットモニターやリアクロストラフィックアラート、シート表皮やメーターリングの加飾が主なもの。おそらくこのモデルが現行30系アルファードの最終モデルになるだろう。

■モデル末期、決算期末で値引きは40万円超え

セールスマンのアルファード愛の強さに感動しながら一緒に作った見積もり

 やけにアルファード愛が強い営業マンだなあ、と思って聞いてみると、やはり実は彼もS Cパッケージに乗っているそうで、「本当によくできたパッケージなんですよ」と熱く語ってくれた。

 その彼に、「カラーはホワイトパールクリスタルシャイン一択です、8割の方が選ばれる人気色なので、ここは外さないでください」「ムーンルーフはあるのとないのでリセールバリューが変わってきます」「せっかく内装が豪華なアルファードなので、一番毛足が長く、遮音性の高いフロアマットが絶対にいいです」などと力説されると、やっぱりそうだなあ、と納得させられてしまう。

 そうやって選んだオプション・付属品価格が541万200円となった。値引き総額は43万円超えで支払い総額は525万円となった。

 納期は今発注して早くても2022年6月末、7月以降の可能性もあります、とのことだった。

 最近発売になったばかりのヴォクシーが、商談中の席から見える。比較のため、最上級グレードのS-Zのガソリン車の見積もりも作ってもらった。

 パワースライドドア、パワーバックドア、などの快適利便パッケージやブラインドスポットモニターなどの安全装備、LEDライトなどアルファードの装備に近づけていくと、支払い総額が464万480円となった。ここで驚くのがアルファードと60万円しか違わないことだ。

ヴォクシーS-Zの見積もりもとってもらった

 かつての「マイルドヤンキー」という言葉を思い起こさせるヴォクシー。かつてのセールスマンマニュアルには「マイルドヤンキー」をターゲットとしてセールストークが書いてあったそうだ。

 アルファードもマイルドヤンキーに人気のクルマだ。ちなみに今は都心で新車のアルファードを買うのは「マイルドヤンキー」ではなく50代が中心だそうだ。

 やはりヴォクシーは見た目が若いうえ、サイズも小さく、シートはファブリックと合皮のコンビで、合皮部分のステッチも真っすぐでないなど、アルファードと質感で真っ向勝負するには分が悪い。アルファードが今でも売れる理由が改めて納得できた気がした。

■3年乗っても残価率85%!? アルファードのリセールバリューは驚くほど高い

 筆者を担当してくれた営業マンは、3年前の夏にアルファードのS Cパッケージを買って、これまで約4万キロ走ったそうだ。当時の車両本体価格は446.5万円。そのクルマを初回の車検が来る今年の夏に売ると、なんと380万円で下取りしてもらえるそうだ。

 なんと残価率は85%にもなる。もちろんオプションをつけると乗り出しでは580万円近かったそうだが、それでも残価率は65%を超える計算になる。

 「去年の夏に下取り価格を聞いてみたら、360万円と言われました」とも教えてもらった。去年2年落ちで360万円だったクルマが、今は3年落ちになって下取り価格が反対に20万円も上がっているという。

 3年で4万キロ走って200万円しか値段が下がらないなんて、とてつもないリセールバリューだ。

 心の汚れた筆者は、「営業マンが言うことだから、話半分に聞いた方がいいのかも」、とつい思ってしまい、家に帰って念のため、ウェブで中古車価格を調べてみた。だがやはり3年落ちのS Cパッケージで走行3万キロのものが乗り出しで480万円などとなっているので、本当に値落ちしていない。

 半導体不足やコロナによるサプライチェーンの混乱で、なかなか新車が手に入らないということもあるのだろうが、モデルサイクルの末期にあるにもかかわらず、アルファードの人気たるや恐るべし、と改めて思い知らされた。

 もちろん今後1年程度でフルモデルチェンジされれば、現行型のアルファードの値段は下がるかもしれない。だが、新型アルファードが仮に発売になってもすぐに納車される可能性は高くないことを考えると、今アルファードを買ったとしても数年後のリセールバリューが極端に下がることは考えにくいだろう。

■少し高額なクルマでも手が届く、残価設定クレジットの仕組み

 アルファードは高額車なのでなかなか手が出ない。そういう人が多いのもわかる。オプション込みで580万円のアルファードを買うというのは、そんなに簡単にできる決断ではない。

 だがその代わり、3年前にやや節約して450万円のクルマを買って、今の下取り価格が150万円だったとすると、値落ちは300万円。

 最初に背伸びして高い値段を払って、高級感のあるアルファードに3年間乗れて、そして買った時から200万円しか値段が下がらず下取りしてもらえた方が結果としては100万円の節約になった、ということもできる。

 最近はサブスクや残価設定型クレジットなど、高額なクルマを購入する際の月々の負担を減らすための選択肢が増えてきているが、ではアルファードはどんな買い方をするのが一番お買い得なのだろうか。

 新車を購入するときに最近よく使われる残価設定クレジット。クルマ代の100%を借りる通常のローンでの購入とは違い、ローン期間終了時にクルマの価値が一定程度残っている(=残価)ことを最初から織り込んで、クルマ代の(100%―残価率)を借りることによって月々の支払いを減らす、というものだ。

 詳しく説明していこう。アルファードの場合、ローン期間3年にすると残価率は55%、つまり借りる金額は100%ではなく45%となる。5年だと残価率は39%に設定され、借入額は61%となる。

 支払総額525万円のアルファードS Cパッケージを、頭金150万円で3年の残価設定型プランで購入するとしよう。

 現時点の条件だと、初回の支払いが4万7139円、その後毎月の支払いが4万6800円(34ヶ月)、そして最終回の3年後に車体本体価格468万1600円に残価率55%をかけた257万4880円を支払う契約になる。

 3年後にローン期間が終了したときには、次の3つのうちのどれかから選択できる。

 1つ目はクルマを引き渡して何も払わず契約終了。ただしクルマの状態が一定以上かつ無事故で、走行距離が5万4000キロ以内(月あたりの走行距離1500キロ)の場合。

 2つ目は契約時点で決められていた、当初の車両本体価格の55%相当の257万4880円を支払ってクルマを引き取る。

 3つ目は、当初の車両本体価格の55%相当よりも3年後のディーラー下取り価格の方が高くなっていた場合だけだが、差額をオーナーが受け取って次の車の購入代金として使うことができる。仮にディーラー下取り価格が360万円だったら、100万円以上を受け取って、次のクルマの購入費に使うことができてしまう。

 以上が、残価設定型クレジットの概要だ。

■クルマのサブスク、KINTOでの購入はアルファードに向いているか?

 では、最近よく聞く「クルマのサブスク」だとどうか。

 トヨタの新車のサブスクKINTOは、ローン同様に月々定額を支払うが、その額にはクルマの購入費、自動車税、自動車保険、車検代、メインテナンス、消耗品、故障修理費がすべてコミコミになって含まれている、というものだ。

 KINTOがすごいところは、まず初期費用ゼロでクルマを買えるところ。また、自動車保険に年齢や運転者の制限がないところ。たとえば、今は子供が免許持っていないけれど、来年18歳になるので免許を取ってクルマを運転する予定でも、契約時点で決められたコミコミの値段は変わらない。

 初期費用ゼロ、つまり頭金なしで先ほどの残価設定型ローンと同じクルマを3年間サブスクした場合、月々の支払額は9万2150円となる。

 額は大きく見えるが、月々4万7000円ほどの支払いの残価設定型ローンと比較すると、頭金150万円(36ヶ月で割ると1ヵ月分は4万2000円弱)がないこと、3年分の自動車保険代、自動車税(1年で4万5000円、1ヵ月分は4000円弱)などが含まれていることを考慮に入れれば、意外と高くないことがわかる。

全部コミコミで、事故など除けば不慮の出費がない、という安心感がある、クルマのサブスクKINTO。筆者撮影

 ちなみにトヨタのアルファードのホームページには、KINTOの「コミコミの月々定額3万8280円〜」と書かれたバナーが出ているが、「アルファード最安値グレードパッケージで追加オプションなし、7年契約、ボーナス月加算16万5000円の場合」と小さな文字で書かれている。

 KINTOと残価設定型クレジットとの一番大きな違いは、KINTOの契約期間終了時はただクルマを返却するだけなので、クルマの下取り価格がどんなに上がっていても、利用者には還元されないところだ。

 「リセールバリューが読みにくいクルマですと、KINTOを使った方がおトクな場合もあるかもしれませんが、アルファードのようなクルマですと、下取り価格が当初決められた残価率を大きく上回る可能性があるので、KINTOは正直あまりおすすめできません」と営業マンが教えてくれた。

 現在は中古車の相場は非常にしっかりしているものの、半導体不足や物流網の混乱の収束の可能性や、日本からロシアへの中古車輸出の急減などもあり、今のような中古車人気がいつまで続くのかはわからない。

 だがパッケージングに優れ、今でも高級感を感じさせるアルファードがモデルチェンジしても中古車市場でいきなり不人気になるようなことはやや考えにくいのではないか。

 モデル末期であることをうまく活用して賢く購入すれば、3〜5年後にはこれまで通り「アルファードを買っておいて間違いなかった」となるのではないかと筆者は予想する。

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