JAFが発表したところによると、2021年1月1日~1月31日の1カ月間でドライバーから「エンジンルームに猫が入り込んでしまった」とロードサービスを要請があった件数は全国で21件、そのうち11件はエンジン始動後に発覚したそうだ。
しかし、JAFが警鐘を鳴らすのは、冬だけではない。実は、エンジンルームに猫が入り込むのは、寒いからではなく、狭くて外敵から身を守れて安心できるという理由なので、トラブルの可能性は年中あるという。
「猫バンバン」をしましょうとは言われるものの、「そんなことする必要ある?」と考えている人もいると思うが、猫の多い地域では他人事では済まなくなる可能性がある。
今回は、猫を追い出す「猫バンバン」だけでなく、猫が入り込みにくくする方法はあるのか? 入り込んでしまった時はやっぱりJAFを呼ぶべきなのか? など対処法について考えていきたい。
文/高根英幸
写真/AdobeStock(トップ画像=mouse23@AdobeStock)
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■猫バンバン、してますか?
「猫バンバン」という言葉をご存知だろうか。これはエンジンルームに猫が入り込んでしまっている可能性を考えて、エンジンを始動する前にボンネットをバンバンと叩いて、猫を驚かせて追い出そうというもの。日産自動車が最初に提唱し、JAFや自治体なども利用することで全国に広まったらしい。
クルマのエンジンルームは、人間から見れば狭くて暗くて部品が入り組んでいて手も入らない空間に見えるが、下から覗く動物にとっては侵入する穴がいくつも空いていて、格好の穴蔵的空間なのである。
最近人気のSUVは地上高が高く、アンダーカバーの上にはドライブシャフトやサスペンション、操舵系が可動する空間も確保されているため、猫にとっては格好の寝床や隠れ家、遊び場と成り得るのかもしれない。
冬の寒い時期だけでなく、繁殖期や巣立ちの時期など、猫にはさまざまな環境の変化がある。そのためJAFには1年中、エンジンルームに猫が侵入してしまったと、救援依頼があるそうだ。動物は季節を問わず生きているのだから当然と言えば当然の話だが、1年を通じて猫バンバンをする必要があるのだ。
しかも猫だけでなく、ネズミや蛇なども侵入するケースがあるようだ。雨風凌げて暖かく、外敵から身を守りやすいと思われる場所として、クルマのエンジンルームに入り込む動物は他にも色々(例えばイタチやハクビシン)いるようだ。
ちなみに筆者は普段、自宅1階のガレージ兼書斎で執筆している(冬は冷蔵庫の中に居るよう!)のだが、2021年は少し開いたシャッターをかい潜って小猫が探検しにやってきた。
筆者と目が合うと、もと来たルートで逃げていったが、シャッターではなくガレージの外に停めているクルマのエンジンルームに潜り込まないとは限らない。
■クルマに潜り込むのは野良猫だけではない
猫に限った話にするとしても、エンジンルームに潜り込むのは野良猫とは限らない。市街地で見かける猫は、野良猫と地域猫、飼い猫と迷い猫の4種類に大別できるそうだ。しかも野良猫でも猫好きの地域住民によって餌付けされているケースも多く、地域猫との区別は難しい。
地域猫とは特定の飼い主ではなく、地域住民で面倒をみている猫のことで、エサやりをするだけでなく避妊や去勢手術などを受けさせてキチンと管理されているのだ。野良猫との区別は見た目ではつかないし、エンジンルームに入り込むリスクは変わらないが、野良猫とは存在価値(?)が異なる。
迷い猫とは、飼い猫が自宅を離れて放浪しているような猫のこと。犬ほどの帰巣本能がなく、好奇心旺盛な猫は自宅周辺から冒険する生き物だ。時々は長期間、自宅を離れてしまうこともあり、迷い猫として動物探偵(ペット探偵)のお世話になる猫もいるらしい。
そしてエンジンルームに猫が侵入しているだけで、即座にJAFを呼ぶ必要はない。ボンネットを開けて長い棒のようなもので猫のお尻をツンツンと押して、居心地を悪くしてやれば、そこから逃げ出す可能性が高い。
霧吹きを直線スプレーにして使って、猫に水をかけるのも嫌がるので効果的だ。猫好きの人にとっては気が引ける行為かもしれないが、エンジンルームを危険な場所だと理解してもらうのは不可能なので、居心地が悪い場所だと感じてもらうしかない。
猫が嫌がる臭いのスプレーなども売っているし、肥料として売っている木酢液や竹酢液を水で薄めてスプレーしても、猫は逃げ出すだろう。
しかし逃げ出さないからと、棒で強く叩いたり大量の水を浴びせるのは過度な刺激は虐待につながるので、注意しよう。猫と遊ぶグッズを使って、おびき出すのも使えるかもしれない。どうやっても逃げ出さないようなら、その状態でJAFを呼ぶのもアリだ。
またもし運悪く、エンジンを始動してから猫の侵入に気付き、ベルトやプーリーで巻き込んでしまったとしたら……、すぐにエンジンを停止してJAFのロードサービスを呼ぶことだ。
自分の飼い猫ではなくても、猫がケガをしたり亡くなってしまったりすれば、気分は滅入る。エンジンルームが動物の毛や血肉で汚れてしまうのも、クルマ好きとしては避けたいものだ。
■どうすればエンジンルームへの猫の侵入を防げるか
猫のエンジンルームへの侵入を防ぐには、猫の習性を知って効果的な対策をするのが重要だ。猫が嫌う臭いをエンジンルームの空間やホイールハウス内、クルマの周辺に施すのもいいが、臭いは時間経過と共に薄れてしまうし、猫も慣れてしまう可能性がある。
ともかくエンジンルームは快適な空間ではない、と猫に感じさせるしかない。人間には聞こえないが猫には嫌な音に感じる超音波を放つアイテムなど、猫撃退グッズも色々販売されているからそれを使うのも手だが、同じ方法を続けていると猫も慣れてしまうらしい。
もし周辺に野良猫や地域猫が多く、エンジンルームに侵入する可能性が高いのであれば、出掛ける時に余裕があるならボンネットを開けて、猫が侵入していないか確認することをお勧めする。それによって猫がいないか確実に確認できるだけでなく、猫の侵入自体を防ぐ効果も期待できる。
エンジンルームに猫が入れないように金網のようなものでカバーできればいいのだが、前述のとおりエンジンルームには可動部品もあるので、なかなか難しい。
もし猫侵入の被害が年間数十件ではなく数千件くらいに上昇すれば、エンジンルームをネットで覆えるような専用アイテムも登場するかもしれないが、現状はやはりドライバーが始動前に注意するしか絶対的な対策はなさそうだ。
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投稿 まさか!? の事態は冬だけじゃない! 出産時期到来で気を付けたい猫救援依頼の実情と対策 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。