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スズキの企業努力の賜物!! 常に「買い得」であり続けるアルト

 スズキ アルトといえばベーシックな軽自動車として定番だ。しかもそのコストパフォーマンスは高く、現行モデルでも一番低価格なモデルは100万円を切るという衝撃的な設定だ!

 そんなアルトが、どれだけお買い得なのかに迫る!

文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部、SUZUKI

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■アルトの魅力は安さだけではない!

2021年12月にフルモデルチェンジしたスズキ アルト

 2022年1~2月に国内で新車として販売されたクルマの内、39%を軽自動車が占めた。軽自動車の新車販売比率を振り返ると、1980年頃は約20%だったが、1990年頃には25%に増えて、2000年に30%に達した。今は約40%だ。

 軽自動車には複数のタイプがあるが、特に販売が好調なのは、全高が1700mmを超えるスライドドアを装着した車種だ。N-BOX、スペーシア、タント、ルークスなどのスーパーハイトワゴンで、これが軽乗用車全体の約50%に達する。

 軽自動車の開発者は「今の35歳以下のお客様は、子供の頃から自宅にミニバンがありました。そのためにほかのカテゴリーでも、背の高いスライドドアを備えたクルマを好みます。これが軽自動車選びにも影響を与えています」という。

 ただし軽自動車のラインナップは、スーパーハイトワゴンだけではない。ワゴンRやムーヴのように、全高を1600~1700mmに設定したスライドドアを装着しないタイプ、ジムニーのようなSUV、アルトやミライースといった低燃費と低価格を追求している車種もある。

■2021年12月にフルモデルチェンジ

車両重量の軽さによって加速も良好で、ターボを装着しなくても街中ではパワー不足を感じることはほとんどない

 そのアルトが2021年12月にフルモデルチェンジを行った。アルトは安さだけが強調されがちだが、ほかにもいろいろなメリットがある。

 まずアルトは、スペーシアやワゴンRに比べて天井が低い。全高は1525mmだから、スペーシアを260mm下まわる。そのために立体駐車場も使いやすい。

 またルーフが低くてスライドドアの電動機能なども装着されないから、車両重量が軽い。マイルドハイブリッドを搭載するハイブリッドXも710kg(2WD)に収まる。スペーシアのハイブリッドXに比べて160kg軽い。

 このボディの軽さによって加速も活発になり、ターボを装着しなくても、街中ではパワー不足を感じる機会がほとんどない。燃料消費量も抑えられ、アルトハイブリッドXのWLTCモード燃費は27.7km/L(2WD)だ。スペーシアの同グレードは21.2km/Lだから、アルトなら燃料代を23%節約できる。

 レギュラーガソリン価格が160円/Lとすれば、1年間に1万kmを走行すると、スペーシアハイブリッドXの燃料代は7万5500円だ。それがアルトハイブリッドXなら5万7800円だから、1万7700円を節約できる。

 コスト低減のためにスタビライザー(ボディの傾き方を制御する足まわりのパーツ)は装着されないが、ボディが軽いために走行安定性の不満はない。危険を避ける時などは、ボディが大きめに揺り返すが、不安は生じない。

 乗り心地は、足まわりのコスト低減と転がり抵抗を抑えたタイヤの影響もあって硬めだが、現行アルトはワゴンRスマイルと同じ14インチタイヤを装着する。現行型の指定空気圧は240kPaで、先代型の280kPaに比べると低いから、突き上げるような乗り心地の硬さは抑えられた。

 居住性も満足できる。身長170cmの大人4名が乗車した場合、後席に座る乗員の膝先には、握りコブシ2つ半の余裕ができる。このスペースはアウトランダーやCR-VといったミドルサイズSUVと同等で、前後方向の足元空間は意外に広い。

 アルトの後席は座り心地が硬く、座面の奥行寸法も短めだ。後席の快適性には改善の余地もあるが、大人4名が乗車しても窮屈に感じる心配はない。従って長距離を移動するのでなければ、ファミリーカーとしても使いやすい。ワゴンRやスペーシアを選ぶ必要はないともいえる。

後退時ブレーキサポートなど、安全装備も充実

 装備も充実する。安全面については、衝突被害軽減ブレーキを作動できる2個のカメラセンサーを備えたデュアルカメラブレーキサポート、前後両方向の誤発進抑制機能、車庫入れなどでゆっくり後退している時にも衝突被害軽減ブレーキを作動させる後退時ブレーキサポート、運転席/助手席/サイド/カーテンエアバッグなどが標準装着される。

 安全装備の充実度は全般的に高いが、後席のヘッドレストは、ハイブリッドX以外ではオプション設定になってしまう(価格は片側が9130円)。安全を確保する上で大切な装備だから、後席に同乗者を座らせるなら後席ヘッドレストは必ず装着したい。

 快適装備も充実しており、最上級のハイブリッドXは、LEDヘッドランプ、キーレスプッシュスタート、エアコンのフルオート機能、アルミホイールなどを標準装着して価格は125万9500円だ。

 スペーシアハイブリッドXは、スライドドアの電動機能などを装着する代わりに153万3400円だから、アルトハイブリッドXは約27万円安い。

 またアルトLは、マイルドハイブリッドシステム、キーレスプッシュスタート、アルミホイールなどは装着しないが、価格は99万8800円だ。アイドリングストップや電動格納式ドアミラーなど、最小限度の実用装備は採用して価格を100万円以下に抑えた。

 このグレードなら、スペーシアハイブリッドXに比べて約53万円、ワゴンR・FXの128万400円と比べても約28万円安く、アルトの低価格が一層際立つ。安全に配慮しながら「低燃費と低価格」を重視したアルトの代表グレードだ。

 そしてアルトで価格の最も安いAは94万3800円だ。ビジネス向けのグレードだが、ボディカラーはホワイトとシルバーに加えてイメージカラーのダスクブルーメタリックも設定する。この色彩を選ぶと、安っぽい印象が払拭される。

■ベースにあるのは衝撃の「47万円」

現行アルトのベーシックグレードであるAグレード。歴代アルトのベーシックグレードは1979年当時の47万円に匹敵する価格に設定されてきた

 以上のようにアルトは、実用的で買い得だ。幼い子供がいるためにベビーカーを抱えて乗車したり、自転車を積むならスーパーハイトワゴンのスペーシアなどが便利だが、買い物や通勤で街中を移動する使い方ならアルトで十分だ。

 ちなみに初代アルトは、1979年に47万円の低価格で発売された。この金額を大卒初任給ベースに現在の貨幣価値に置き換えると89万3000円になる。現行アルトAの94万3800円に近い。

 そしてアルトの歴代モデルの価格推移を振り返ると、いつの時代でも、ベーシックグレードは「1979年の47万円」に匹敵する価格で設定されてきた。

 しかし1979年に47万円で発売された初代アルトと、現行アルトでは、車両の中身は大幅に異なる。初代アルトには、安全装備はまったく採用されず、エアコン、時計、左側の鍵穴まで省いていた。

 それが現行アルトAには、前述の通り衝突被害軽減ブレーキ、4輪ABS、横滑り防止装置、各種のエアバッグなどの安全装備が標準装着され、アイドリングストップ、エアコン、フロントUVカットガラスなども備わる。

 これらの装備が加わったことを考えると、現行アルトAの価格は、1979年に47万円だった初代モデルと比較しても大幅に割安だ。

 現行アルトは9代目になるが、その進化の過程でも、歴代モデルは「1979年の47万円」という価値を踏襲しながら各種のメカニズムや装備を充実させてきた。この足跡を振り返ると、アルトはいつの時代でも、ベーシックカーの基準として進化してきたことが分かる。

 他社の軽自動車の商品企画担当者と話をしている時、アルトの話題になった。「アルトの商品力と価格は、スズキの長年にわたる軽自動車造りの成果です。ほかのメーカーで同じことができるのは、おそらくダイハツだけでしょう。アルトの真似は、簡単にはできません」。

 アルトはスズキだから開発できた商品で、その営みを40年以上にわたり続けてきた。海外では売られていないが、日本の誇れる代表車種だと思う。

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