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東京都が、来年度にも高校生への医療費補助を始めることになりました。準備経費として令和4年度予算案を計上、実現すれば大都市圏では初めての事例になります。都内では既に区市町村が高校生まで補助する地域もありますが、子育て世帯が子どもにかける医療費負担が大きく変わりそうです。

東京都庁(SimonSkafar /iStock)

都が高校生への医療費助成導入へ

現在、乳幼児から中学生までが対象となっている医療費の助成制度について、東京都は高校生(18歳年度末)にも新設を目指しています。制度の実施主体となる市区町村の準備費用として、令和4年度予算案では7億円を計上しました。

厚生労働省のまとめによると、現在、高校生の医療費を補助する都道府県は福島、茨城(入院のみ)、静岡、鳥取の4県のみ。入通院のいずれも補助するのは3県しかありません。東京都が入通院いずれも助成対象とするのか、詳細は今後詰めていくものとみられますが、いずれにしても大都市圏での高校生までの医療費助成は先進的です。

kuppa_rock /iStock

子どもの医療費負担は住む地域で違い

子どもの医療費は、国の制度では就学前の6歳まで自己負担2割、小学生以上は3割です。ここに都道府県や市町村の補助が入り、実際の負担は住んでいる地域によって変わってきます。東京都の場合は中学生まで、1/2を都が助成し、残りは市区町村の補助または自己負担になります。23区ではすべて中学生まで補助があるため、実質的には子どもの医療費は無料です。区が発行する子どもの医療証を提示すると、病院の窓口ではごく一部を除いて請求額がゼロになります。

加えて、一部の市区町村はすでに独自に高校生までの補助を行っており、千代田区、北区、品川区、武蔵野市(通院は4月以降)、狛江市などでは高校生まで医療費の自己負担がほぼゼロになっています。全国的に見ると、18歳年度末までの医療費補助を行っている自治体は1,741市区町村中733(通院の場合)と全体の4割を超えますが、都内ではまだ珍しいようです。東京都による補助が実現すれば、高校生のいる世帯の多くで家計負担が抑えられるはずです。

なお、前回記事で触れたとおり、医療費助成には一部地域で所得制限があります。東京都にも現況、年収960万円(扶養内の妻と子ども2人など、扶養親族3人の場合)という所得制限がありますが、市区町村側が所得制限対象者分の医療費を負担することで、都内では高所得でも子どもの医療費は補助されるところが大半です。

一方で子どもの医療費補助は地域格差もあります。特に通院の医療費は、県・市町村ともに就学前までしか補助がないなど、早いところでは小学生から3割負担になる地域もあります。発熱や病気をしやすい乳幼児期に比べれば、大きくなるにつれて病院に行く頻度は少なくなっていくかもしれませんが、昨今はわずかな喉の痛みや微熱にも過敏にならざるを得ません。子どものちょっとした体調の変化で、お金の心配なく早めに受診できるかどうかは、子育てのしやすさにも大きく関わるのではないでしょうか。

作・ゆるフォト/PhotoAC

地域外での受診は窓口負担発生も

注意したいのが引越しです。新年度には引越しをする家庭が少なくありませんが、地域が変わることで子どもの医療費負担が変わることがあります。前に住んでいたところでは医療費が無料だったのに、転居先では有料というケースもあります。小児科にひんぱんに行く家庭では、引越し先の地域の医療制度を確認しておくと安心です。

また、引越し時は荷造りや転居手続きで大人も慌ただしいものですが、子どもにも少なからぬ負担になるようで、転居後すぐに病院に行くことも考えられます。筆者も遠距離の引越しをした翌日に子どもが急に高熱を出し、慌てて近くの小児科に駆け込んだことがあります。そこで、転居前の地域ではなかった窓口負担を請求されて驚いたものです。

しかも、その日はまだ引越し先で転入届を出していませんでした。転居前に使っていた子どもの医療証が使えないばかりか、引越し先の地域でもまだ医療証が発行されていなかったため、窓口では大人と同じように3割の請求だったのです。地域外の病院でかかった医療費は、後日に手続きをすることで補助分を還付してもらうことができますが、それまでと同じようにてっきり請求がないものと思っていたので、想定外の出費でした。

東京都の場合は、都内の医療機関であれば区をまたいだ受診でも子どもの医療証が使え、窓口負担は補助後の金額のみです。ただし都外では医療証が使えず、窓口では請求が生じます。住んでいる地域の補助の対象であれば、後日に手続きをすると受診時に払った医療費が戻ってきます。

子育ての費用全体でみれば、医療費はそれほど大きなウェイトではないかもしれません。ただ、コロナ下以降、子どもの健康管理は親にとって重要度が増しています。冒頭のように、医療費の制度が変わることもあります。子どもの健康とお金について、意識を高めていくことが大切です。