旅立ちの季節がやってくる。引っ越しをして違う県や区に移住すると、自身の住所変更はもちろん、クルマを所有している場合には駐車場の契約に加え、使用の本拠地の変更手続きをする必要はある。
が、東京でも引っ越したまま変更手続きを行わず、地方ナンバーで走り続けるドライバーをよく見かける。しかし、たかが変更手続きと怠っていることが発覚すると、罰則(50万円以下の罰金が科される)もあるという。
ついつい忙しくて……となって、あとで罰則を受けては残念すぎるこの問題。知っておきたい、引っ越しをする時の変更手続きの注意点を解説していく。
文/高根英幸
写真/AdobeStock(トップ画像=beeboys@AdobeStock)
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■法律で細かく定められている登録のあれこれ
日本のクルマは法律で、かなり細かいことまで定められている。これは道路運送車両法という法律で、最初に定められたのは道路交通法(通称:道交法)の昭和35年(1960年)より古い昭和26年のことだ。
そのため中には今の時代にそぐわないものもあるが、車検制度などは時代に則して内容を見直している。保安基準などはWP29(国際調和フォーラム)で国際基準化が進められているが、それ以外の手続きに関するものは旧態依然とした規則も少なくない。
日本では車検(正式には車両検査)などの制度を定めた車両登録検査制度には、新車や中古車の登録制度、継続車検や新規車検(改造申請なども含まれる)などが含まれている。
クルマを購入すると、まずは保管場所を確保することが必要となる。保管場所を証明できなければ、自分の名義で登録してナンバープレートを発行してもらうことができないからだ。そのために必要なのが車庫証明証で、これを取得することは同時に管轄の警察署に自分のクルマの車庫を登録したことになる。
保管場所に関する法律は、「自動車の保管場所の確保等に関する法律」という名称で昭和37年に制定されている。これは欧州などと違い、道路を保管場所にしないように登録時にはキチンと車庫を確保していることを義務付けているからだ。
軽自動車の場合、過疎地では車庫証明は必要ないが、都市部では登録後に軽自動車検査協会に保管場所届出(車庫証明と同様の書類)を提出する必要がある。
■引っ越しをしたらクルマの住所変更も必要
クルマの持ち主が引っ越し(つまり移転)をした場合には、保管場所の登録の住所変更を15日以内に行なわなければならない、と法律上は定められている。
車庫証明の取得は、自分で手続きするのも難しくない。まずは自宅の管轄の警察署に行って、申請のための用紙をもらって記入して手数料と共に申請するだけだ。月極駐車場の場合は、管理者に書類を記入してもらう必要があり、ここでも手数料を取られることも多い。
車庫証明を取得したら、車検証(正式名称は車両検査証)などの登録書類と一緒に陸運支局または自動車検査登録事務所(いわゆる車検場)へ持ち込んで申請し、車検証の所有者(ディーラーなどの所有権がついているクルマは使用者)欄の住所を変更してもらうことになる。
この車検証の記載変更も引っ越しから15日以内に行なわなければならない、というのが従来の法律だった。ということは車庫証明の取得には3日前後かかるため、さらに前倒しで申請しなければならないことになるのだ。
厳密に言えば、引っ越し後15日を過ぎても車検証の住所変更をしなかった場合には、50万円以下の罰金が科せられる可能性があるが、そこまで厳格ではないので早めに行なうことだ。
またナンバープレートの管轄が変わる場合は、クルマを持ち込んでその場で封印を壊してナンバーを外して返却し、新しいナンバープレートの交付を受けることになる。軽自動車の場合は封印がないので、ナンバーだけを外して持参してもいい。
陸運支局などは平日の昼間しか営業していないので、仕事でなかなか行けないヒトも多いことだろう。こうした手続きは自分でやらなくてもディーラーや行政書士に代行を依頼することもできる。
ただしディーラーなどの自動車販売店ではクルマを購入時、登録代行手数料や車庫証明代行手数料の名目で結構な費用を要求していることからわかるように、人を介して手続きするには意外と費用がかかるものだ。
■駐車場だけを引っ越しした場合はどうなのか
自宅を引っ越しした場合は、車検証の記載内容と事実が異なるので、住所変更をする必要があるが、駐車場だけを引っ越しした場合はどうなるか。
厳密に言えば、住居はそのままで保管場所だけを変更した際にも車庫証明を取得して陸運支局に提出する必要がある。これは警察署に車庫の届出も行なう必要があるからだ。
しかし、実際の車検証の記載は何も変わらないから、取り締まりを受ける可能性はほぼない。保管場所を確保していることを証明するステッカー(正式には保管場所標章)もクルマでの表示が義務付けられているが、貼っていなくても罰則はないからだ。
交通違反や事故の際にもこれをチェックされることはほとんどないので、自宅住所がそのままであれば、わざわざ車庫証明を取得してステッカーを貼り替える必要性は薄い。
ただし法律上は、保管場所の変更があった際には登録が義務付けられており、違反していると発覚すると罰則(10万円以下の罰金)があることは覚えておこう。
■2022年1月から、法改正で住所変更の手続きが緩和!
前述のように従来、引っ越しをしたら15日以内に車検証の住所変更もする必要があったのだが、これは正直言って現代の感覚にはそぐわない。なぜなら、法律が制定されたのは昭和36年のことで、その当時に自分のクルマを所有できたのは富裕層、つまり生活にかなり余裕があった人たちであることは想像に難くない。
そもそもの理由が車庫飛ばしや路上保管を防止するための措置なのだから、駐車違反が厳格化された今では、青空駐車はほとんどいないし、ご当地ナンバーが増えた現在、車庫飛ばしをするメリットも薄い。
そんな状況を鑑みて、より実情に則した緩和策が採られている。2022年1月4日からは、ナンバープレートの変更を伴う住所変更は、次の車検までに行なえばOKというように法改正されたのだ。
これは政府が進めている引っ越し時の負担軽減という観点からOSS(ワンストップサービス)に付随して、クルマの引っ越しを簡素化しようというものらしい。
ただしこれは、それなりの手続きを経ることが必要だ。まずOSSのためにはマイナンバーカードが必要で、OSSから住所変更の手続きを申請することになる。
そして新しい車検証(この時点で新しいナンバーが発行される)を郵送されてくるので、旧車検証を返送し、次回車検までにナンバープレートを交換することになるのだ。
ちょっとややこしいが、引っ越し時の忙しさが緩和されることは間違いない。特例だけに法律を大きく変えずに現状に則した内容に進化させたものと言えそうだ。
ナンバープレートの変更を伴わない住所変更に関しては、今回の特例の対象外のようだが、そもそも15日以内に行なわなかったからと検挙されることはほとんどないので、時間ができた時に行なえばいいだろう。
なお、繰り返しになるが住所変更の手続きは車庫証明の取得を含めて、自分で行なうことは難しくない。自分のクルマへの理解を深めるためにも、ぜひトライしてみてほしい。
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