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ジムニー ランクル ハリアー……現行車なのに新車価格より高いプレミアム価格が付いた中古車たち

 最近よく耳にする「中古車価格相場の高騰」。

 かなり前に生産を終了しており、中古車でしか手に入らないモデルであれば、中古車価格が高騰するのも納得できる。

 しかしながら、現行モデルやつい最近まで現行だったモデルの中古車相場も高騰しているというのだ。勿論、現行車であれば販売店でオーダーをすれば購入することができるモデルである。

 しかも、スポーツカーやSUVといった趣味性の高いモデルのみならず、軽自動車やコンパクトカーといった、生活の足として利用される(販売台数の多い)車種もその対象となっているのである。 

 なぜこのようなモデルにまでプレミア価格がついているのか? 中古車価格高騰の理由を3つのタイプに分けて解説していく。

※本稿の中古車相場は12月のものを反映しています。
文/伊達軍曹、写真/トヨタ、ホンダ、日産、スバル、スズキ、メルセデス・ベンツ

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■なぜ現行車の中古相場が高騰しているのか?

 中古車相場が高騰している。だが、カーマニアの間で人気が高い絶版名車の相場が高騰するのは、ある意味当然の話であろう。

 アメリカの25年ルール解禁に関連して日産スカイラインGT-Rの第2世代が3000万円級の高みへと到達したり、惜しまれながら生産終了となった(とはいえ650台の追加生産は決まった)ホンダS660の中古車に500万円以上の値が付くという事態は、もちろん歓迎はしないが、想定の範囲内ではある。

 だが近頃は「想定すらしていなかったごくフツーの現行モデル」でも、その中古車価格が新車よりも高いプレミアム価格となるケースがめずらしくないのだ。

 今、中古車業界に何が起きているのか? 相場高騰の要因をケースごとに探っていこう。

 結論から申し上げると、現行モデルないしは現行モデルに近い年式の中古車相場高騰の要因は、以下の3タイプに大別される。

■タイプ1/絶版名車型

 ホンダS660やFK8型ホンダシビックタイプR(およびリミテッドエディション)、スバル WRX STI EJ20 Final Editionなどの相場は、「絶版名車型」と分類される要因によって高騰している。

 絶版名車型とは、要するに「絶版」となったことで新車の供給はストップしたが、「名車」であるがゆえに需要がまったく減らないため(またはよりいっそう需要が増加したため)小売価格が上がってしまうという、シンプルな市場原理に基づくものだ。

 ホンダS660というと「絶版名車」と呼ぶには新しすぎるような気はするし、実際650台の追加生産も行われるわけだが、相場高騰の根本的なメカニズムは、R34型スカイラインGT-Rなどとまったく同じである。

S660 α(新車価格:232万1000円)

 参考までに、先に挙げた4車種の直近の中古車相場を記しておこう。

■ホンダ S660
・新車時価格:198万~315万円
・モデル全体の中古車相場:140万~570万円
・2020年式以降の中古車相場:230万~500万円

■FK8型 ホンダシビックタイプR
・新車時価格:450万360円
・モデル全体の中古車相場:390万~1200万円
・うち2020年式以降の中古車相場:600万~1200万円

■FK8型 ホンダシビックタイプRリミテッドエディション
・新車時価格:550万円
・モデル全体の中古車相場:1300万円

■スバル WRX STI EJ20 Final Edition
・新車時価格:485万1000円
・モデル全体の中古車相場:650万~680万円

■タイプ2/納期激長型

 トヨタランドクルーザー200やトヨタハリアー、スズキジムニー、メルセデス・ベンツGLBなどの相場は、「納期激長型」と分類される要因によって高騰している。

 納期激長型とは、そのモデルの新車を買いたいのは山々だが、「新車の納期は現在〇年です」と聞かされて「そんなに待ってらんねえよ!」という気持ちになったユーザーが、とりあえず即納となる現行モデルの高年式中古車に向かうことで相場が上がってしまう――という現象だ。

 ご承知のとおり、ランドクルーザー300の納期は現在、4~5年待ちと言われている。そのため、とりあえず即納となる旧型(ランドクルーザー200)の高年式中古車にとりあえずの人気が集中し、その相場がとりあえず新車価格以上になってしまっているのだ。

ランドクルーザー200 ZX(新車価格:697万4000円)

 ランドクルーザーと同じ現象は「納期1年」と言われているスズキ ジムニーやメルセデス・ベンツGLBでも起きており、「ハイブリッド車の納期は6カ月」となっているトヨタハリアーでも、それに似た現象が地味に発生している。

 ここで挙げた4車種の、直近の中古車相場を記してみよう。

■トヨタ ランドクルーザー200ZX
・新車時価格:697万4000円
・グレード全体の中古車相場:390万~1080万円
・うち2020年式以降の中古車相場:830万~1080万円

■スズキ ジムニーXC(4速AT)
・新車価格:190万3000円
・グレード全体の中古車相場:180万~370万円
・うち走行0.5万km以下の中古車相場:180万~370万円

■メルセデス・ベンツ GLB 200d
・新車時価格:518万円
・グレード全体の中古車相場:570万~700万円
・うち走行0.5万km以下の中古車相場:620万~700万円

■トヨタ ハリアーハイブリッド Z“Leather Package” E-Four
・新車価格:504万円
・当該グレードの中古車相場:500万~560万円

■タイプ3/新車枯渇型

 「新車枯渇型」というのも「納期激長型」の一種というか、メカニズムはまったく同じである。すなわち「半導体不足などのせいで新車の納期が激長なので、待ってられないユーザーが中古車に流れ、その結果として中古車の相場が上がる」という現象だ。

 「納期激長型」との違いは、「それがわりとフツーな、“足”的な車種でも起きている」という点のみある。

 例えばホンダの軽スーパーハイトワゴン「N-BOX」だ。言ってみれば何の変哲もない庶民の足であるホンダ N-BOXだが、その中古車相場は今、新車の納期遅れの影響で大幅に上がってしまっている。具体的には下記のとおりだ。

■ホンダ N-BOX Custom L・ターボ(FF)
・新車価格:198万9000円
・グレード全体の中古車相場:110万~260万円
・うち登録済み未使用車の相場:170万~240万円

N-BOX Custom L・ターボ(新車価格:198万9000円)

 一番高いものは車両価格だけで約260万円なので、支払総額は270万円ぐらいになるだろうか。軽自動車の乗り出し価格が300万円近いというのも、よく考えてみれば凄い話である。

 また現行型N-BOX(の、特にカスタムのターボ)は「走行5万km超」や「走行10万km超」の物件ですら、けっこうな高値となっているのが最近の現実だ。

 そのほかでは現行型トヨタアクアの1.5Zと1.5Gの登録済み未使用車も、新車価格よりかなり高い値付けが目立ち、現行型日産 ノートの1.2Xの未使用車も、新車価格より高いプライスとなっている場合が多い。

 もっとも、ノートの場合はプロパイロットなどのオプション装備を付けた場合の総額は、新車本体価格よりずいぶん高くなるのは当たり前の話なので、「ノート1.2Xも新車価格より高い場合が多い」ということ自体に問題はない。

 問題なのは、プロパイロットを付けていない素の1.2Xにも、どさくさにまぎれて新車本体価格より60万~70万円ほど高いプレミアム価格が付けられているケースがあることだ。

 こういった「どさくさまぎれの便乗商法」を見るにつけ、コロナ禍ならびに半導体不足に端を発する「中古車バブル」は一刻も早くはじけてほしいと思うわけだが、新車の生産およびデリバリーの正常化には、まだまだ時間がかかりそう。

 それゆえ、中古車バブルというか「中古車相場狂想曲」は、もうしばらくは続くのだろう。つくづく残念である。

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